おかげで全体的にダイジェスト感のある、ムリヤリな構成になってしまっているこのドラマ。
今回もかなりすっ飛ばしていた。
先輩芸人の「ねずみ花火」回、「デジタルきんぎょ」回と続いてきて、いいかげん上妻圭右(間宮祥太郎)&辻本潤(渡辺大知)メインの回がやってくるのかと思いきや、ふたりの同級生でもある子安蒼太(矢本悠馬)回。
ラジオの天才・ハガキ職人だった子安が、圭右たちに誘われて芸人に挑戦し、挫折するまでが描かれたが、1話で収めるのはやはり無理があった。

どうして突然、トリオを結成してしまったのか……
子安がハガキ職人「はにかみ工場長」だということを知った圭右は、漫才のネタを書いてくるように言っていたようだが、子安は、なぜかネタだけでなく、ふたりの新コンビ名「べしゃり暮らし」まで考えてきていた。
「面白いか分からないけど、一応……」くらいの控えめな感じでネタを持ってきたわりに、コンビ名という、ものすごく重要なものを勝手に考えてきてしまう子安のハートの強さに驚愕。
さらに子安が、YCAという養成所の作家コースに入りたいが学費がないということを聞いた圭右は、一緒にトリオを組んで「漫才新人グランプリ」に出場し、その賞金で学費を賄うことを提案する。
ラジオの投稿からネタが作れるというのは分かっているにしても、芸人としての能力は未知数な子安と、いきなりトリオを結成してしまうとは。本気で芸人を目指そうと決心していたのに、説得力がなさ過ぎる!
しかも「学費がない」という問題を解決するためにトリオで「漫才新人グランプリ」に出場するという話だったのに、子安はプロゴルファーの父親から学費を貸してもらえることになり、学費問題はあっさり解決。
だったら素直に作家コースに行けばいいものの、なぜか子安も芸人コースに行くことに。子安が「やっぱり芸人に……」と考えを変えるようなエピソードもなく、色々ととっちらかっている。
「やっぱり僕は作家を目指すよ」じゃないよ!
実際にネタ見せがはじまると子安は、作ったネタ通りにやる分にはなんとかなっているが、圭右たちお得意のアドリブが入ってくると、たちまちついていけなくなってしまう。
「わかってる。やっぱりふたりの本当の武器はアドリブだよ。僕にはそれができない。
決断が早い!
なぜ子安が芸人を目指すことになったのか、まったく飲み込めていないうちに、再び作家を目指す宣言。視聴者はついていけない! さらに言うと、まえだまえだの前田航基演じる梅垣望が、唐突にYCAの作家コースに入学したのも意味が分からない……。
そんなこんなで「べしゃり暮らし」はトリオからコンビに戻ることになったのだが、新人ライブの出演者がばっくれたことで、急遽トリオでの出演をオファーされる。
「(最後に)ふたりの本気の漫才を近くで見てみたい」と考えた子安は「ふたりとも全力できてね」と頼んで舞台に臨むが、アドリブの応酬についていけなくなり、舞台上で笑うことしかできなかった。
このドラマでは、ここまで頑なにナレーションやモノローグを入れない方針を貫いていたものの、さすがにこの場面は子安のモノローグを入れないと意味が通じないという判断なのか、唐突にモノローグ解禁。
「ほらね。やっぱり、あの時から僕はずっと分かっていた。僕が最初に分かってたんだ。このふたりしかないって。このふたりが最高なんだって」
ふたりの漫才を見ながら、涙を流しながら笑う子安。感動のシーンではあるんだけど、芸人挑戦から挫折までのスパンが短すぎて「いや、分かってたなら最初から芸人やろうなんて思うなよ」という感想しか抱けなかった。
何だったんだ、子安の芸人チャレンジ……。
なんともう最終回!?
コンビ関係で悩む先輩芸人たちや、辻本のかつての相方。さらに今回、唐突に誕生したトリオへの子安の参加&脱退を通して「相方とは何か」を描いてきた本作。
その結果、圭右と辻本のコンビはどうなのかという話がいい加減出てきてもらいたいところだが、なんと次回が最終回。ええーっ!
全10話でも話が収まらないと思っていたのに、全8話だったとは。
どうやら「漫才新人グランプリ」をクライマックスに持ってくるようだが、ライバルとなりそうなのが、小学生ウケするネタでテレビにも出ている「るのあーる」、辻本の元・相方である静代(小芝風花)が結成した「ニップレス」。あと今回、圭右とチョロッともめていた「げんこつロデオ」くらいか。
色恋の因縁バリバリな「ニップレス」はともかく、ほかの2組はライバルにしては因縁もエピソードも薄すぎて盛り上がりに欠けそうな……。
明らかにペース配分を間違えているこのドラマ。最終回はこれまで以上のダイジェスト状態になってしまうのか!? ……もしかしたら映画版(もしくはhulu)へ続くパターンじゃないかとも予想しているが。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
「べしゃり暮らし」(テレビ朝日)
原作:森田まさのり「べしゃり暮らし」(集英社)
脚本:徳永富彦
演出:劇団ひとり
音楽:高見優、信澤宣明
撮影:小林元
オープニングテーマ:Creepy Nuts「板の上の魔物」
主題歌:B'z「きみとなら」
漫才監修:ヤマザキモータース、小林知之(火災報知器)
漫才協力:太田プロダクション
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、土田真通(東映)、高木敬太(東映)