羽衣の自宅であるラブホテルで、父(大堀こういち)も交えて母に失踪した理由を問いただすことに。かつて母も羽衣と同じ能力を持っていた、そのことで傷ついたのだという。「できるだけ話を盛って話します」という宣言の通り、突然徳川幕府の存亡と地球爆発まで巻き込む大きな話に。寺田農(!)演じる悪い奴からの「徳川幕府を15代くらいまで続けさせろ、さもないと地球を爆発させる」という要望に戸惑う母。ここにきてシンプルにくだらない!
このドラマでは毎回、羽衣が水をかけられると時間を遡る表現としてその数日に起こったできごとのシーンが流れてきた(明らかに関係なさそうな画像も入るという遊びも)。ここで母が無理やり過去へ遡らされた時は白黒写真から浮世絵へとどんどん変わっていくという、ここまでの11回をフリにしたお遊びも挟み込まれる始末。最終回、話をまとめるだけで終わるかと思いきや、隅々までばかばかしいじゃないか。

羽衣に水を用意し続けた母
失踪している5年の間にある人と出会い、夫婦のように暮らしていたという母。そこで登場した相手が1話で「ださすぎる服ばかり売っているアパレルメーカー」の男(梶原善)。ここにきて1話の伏線回収! ていうか伏線だったのかあれ? どうでもいい!
羽衣は分の能力を見た母が自分を見捨てたのだと一度は傷つく。しかし実は母は常に羽衣を見守り、あらゆる場所で羽衣が今に戻るための水を用意していたことを知る。

そして、家族は元に戻る。ラストはうどん(10話)、詐欺(11話)などの過去の話も反映しつつ、「水に流せ」「濡れてに粟」「水掛け論」など水にまつわる言葉も総出で無事終わる。最後に淳之介が「これならおかしくないだろ?」と羽衣にレインコートをあげるところ、やっぱりこの兄妹の関係、いいんだよなあ。母の「この街の何もかもを解決するには、まだあなたの力が必要みたいね。さ、帰りの水を用意しなくっちゃ」のナレーションにちょっとぐっときてしまった。

最初から見直したくなる最終回
Paravi版では、「実は羽衣もパチンコにハマっていた」というむちゃくちゃな事実が明かされる。過去のさまざまなシーンが流れ、そのたびにパチンコへ行く羽衣。これもずっと、全部撮影していたなんて!
たった1話で、これまでの11話に二つの裏があることが判明した。その内容自体はばかばかしいけれど、ドラマの世界がぐっと拡大したようで面白い。
家族全員揃ったホテルの屋上。「パチンコはもうやめる」という羽衣に、「よくやったわ羽衣。何もかも、ここまで何もかも解決させるなんてね」と母からの言葉が投げかけられる。やめる宣言で本当にやめられるかはおくとして、ずっとナレーションで聞き続けてきた母の言葉が直接聞けた。不覚にも、Paravi版でももう一度ぐっときてしまうなんて!
最終話では独白を聞いた父が、母に語りかけるシーンがある。「その程度の身勝手、その程度の脈絡のなさ、全部受け入れてやる! だから帰ってきてくれないか」。『びしょ濡れ探偵水野羽衣』は最近では珍しく、徹頭徹尾ナンセンスなドラマだった。しょうもない展開の連続だった。でもその程度の身勝手や脈絡のなさ、視聴者としては受け入れたい。むしろ歓迎したい。
「びしょ濡れ探偵 水野羽衣」
出演:大原櫻子、矢本悠馬、大堀こういち、ヤオアイニン
企画:ブルー&スカイ、加藤伸崇
脚本:ブルー&スカイ、村上大樹、テニスコート、金井純一
監督:草野翔吾、金井純一、長野晋也
チーフ・プロデューサー:山鹿達也
オープニング曲:マカロニえんぴつ「surpernova」
エンディング曲:大原櫻子「I am I」
(釣文恵)