
2019年12月30日、夕刻の東京国際フォーラム ホールAでは、ペンライトがあちらこちらで赤く染まり、月の出を待っていた。天月-あまつき-(以下、天月)は、2018年夏に武道館でワンマンライブを開催、その後スタートした全国ツアー「Loveletter from Moon~Winter Tour 2018-2019~」は大成功のうちに完走し、パシフィコ横浜 国立大ホール2daysや大阪城ホールといった会場も経験した。
そんな彼が「めちゃめちゃ緊張した」と話したのが、今回レポートする公演だ。駆け抜け続けた2019年、その最後のワンマンライブであったし、彼自身にとって国際フォーラムは憧れのステージでもあったという。そしてもうひとつ、この日は大きな発表を控えていた。
今日のステージは、背景に星空のような照明が散りばめられ、その上部には、巨大な植物がツタを伸ばしている。夏に行われたライブ「The StarLight Seeker」では、天月のこれまでを投影した少年と種の物語をムービーにし、演目の各所で上映した。続編となる今回のツアー「The StarLight Seeker Winter Tour」では、種から成長した植物と、少年の心の葛藤を自身の活動になぞらえて大きく成長する物語が展開される。

『スターライトキセキ』のイントロが始まると、ステージ上部のステップから青いナポレオンジャケットをまとった天月が登場。「天月10th Anniversary LIVE『The StarLight Seeker Winter Tour』東京公演だ! よろしく!」と、幕開けを元気よく告げた。右手を振り上げて5,000人とのコール&レスポンスを堪能すると、続けて代名詞的ナンバー『ホシアイ』も惜しみなく披露し、序盤からフルスロットルで会場の熱を上げていく。
続くロックパートの先陣を切ったのは、2019年発表の『儚きゴースティング』。
凄烈なナンバーが続くなか、ボカロ曲『恋愛勇者』をカバー。過去のライブにも組み込まれていた曲ではあるものの、リスナーは驚きを含んだ大歓声を上げる。
ムービーのストーリーも進む。種によって、悲しい感情から守られてきた少年。少年はたくさんの出会いを経て、そして支えてくれる人を得て、導かれる側から導く側になることを決意した。天月自身にも、そういう瞬間があったのかもしれない。彼のライブの魅力はたくさんあるが、そのひとつが心揺さぶるMCだ。

羽衣を思わせる白い衣装は、スポットライトを浴びて月光のように輝いている。天月はその裾を垂らしながら、ステージのステップに腰掛けた。儚く伸びる高音を響かせ、『Dear Moon -Piano ver.-』で聴衆を包み込むと、最後に深いお辞儀をした。
「今日はせっかくなので、あんまりライブでやってなかった曲もやらせて頂こうかなと思います」と話し、サビの掛け合いが印象的な『ハイドアンド・シーク』、これまた選曲に驚きの声が上がった『カタオモイ』、声出しが盛り上がる『おじゃま虫』……。先ほどのロックパートが嘘のように、曲調に合わせて声も表情も柔らかいものになっている。
バンド・ダンサー紹介を経て、チェックのインナーにベスト、首元にはリボンをあしらった天月が再登場。シーズンに合わせて発表した『クリスマス・ストーリー』のイントロが始まれば、着席していたリスナーたちも次々に立ち上がる。ライブの定番曲『月曜日の憂鬱』で、国際フォーラムを甘酸っぱい雰囲気に仕上げていく。ぴょんぴょんと可愛らしく跳ねる姿や、満面の笑顔での<超好き!>は、リスナーに効果抜群だ。

最高潮の盛り上がりを見せるなか、満を持して披露された新曲『カラフルタッグチーム』。まさしく今回のムービーコンセプトにもリンクする、これからを生きる人の背中を押す道しるべの歌だ。
ツアーのキービジュアルと同じジャケット姿に着替えた天月は、『アイビー』を歌いながらステージセンターに再び現れた。メインモニターに加え6枚のサブモニターでMVを展開し、曲の世界観を贅沢に表現する。同時にクライマックスの気配も漂い、切なさも増していく。休まず『コスモノート』に続くが、疾走感のある曲を歌っていても、天月は決して誰一人置いていかない。丸ごと包み、会場の全員を連れていく。そういう優しさがある。『君が僕の心に魔法をかけた』で、本編を締めくくった。
程なくして沸き起こるアンコールに応え戻ってきた天月は、ステージを所狭しと駆けながら『小さな恋のうた』を披露。一息つくとアンコールのお礼を述べ、そして心の内を言葉にした。
「正直東京公演、めちゃめちゃ緊張した。(年内)最後だし、国際フォーラムは憧れのステージでもあったんです。別のライブでここに立たせて頂いたことはありますが、ワンマンライブでは初めて。お客さんとして来たことも何度もある、思い出深い会場です。そんな僕がこうしてステージに立って、しかもみんな僕の歌を聴きに来てくれたんでしょう? めっちゃ嬉しいことじゃん、ありがとう!みんなには毎公演ドキドキしてもらいたいし、みんなが求めるエンターテイメントに対して、僕が出したい・伝えたいエンターテイメントは常にその上を行きたい。それでいて、同じ速度で歩めたらいいと思う」
そして「この曲には、2019年たくさん救われてきました」、そんな紹介で放たれたのは『きっと愛って』。天月の歌唱で会場中に笑顔が満ちていき、リスナーはシンガロングとダンスで応える。その光景はまさしく、音楽を通したコミュニケーションだ。
これにて大団円かと思いきや、サプライズで幕張メッセ イベントホール2Days公演(4月28日、29日)の開催が発表された。「ははは、騙されたでしょ? めちゃめちゃ終わると思ってたでしょ?」と得意げに笑った天月は、「何度も言うけど、自分の気持ちを改めて話そうかなと思います」と続けた。
「嫌なものから逃げた先で、全てが光とは思わないけれど、僕はたまたま好きなものを見つけることができました。昔に比べて僕らの世代は、自分の道を選びやすくなったと思う。

テキストには書ききれないほどの言葉が、湧き続けていた。息が切れるほどの勢いで話した天月は、一人ひとりに心からの言葉をしっかりと手渡した。
最後に披露された『Hello,My story』は、1人と5,000人で作り上げられた曲だったと言うほかない。天月は安定しながらも力のこもった声で歌い、間奏に入った途端、リスナーは天月が合図をする前に息ぴったりの合唱を展開。その一体感は、天月本人も驚いた表情をするほど。合唱に対する嬉しさからか、あるいは今日1日の充実感からか、彼は「嬉しくて仕方がない」という表情で足踏みをし、こみ上げる感情を体現した。
終演後 本人コメント
ずっと僕は僕を評価できず、
悔しい思いもいっぱいしてきた
でも、この道を振り返って見れば
僕が僕でいられたのはいつだって君がいたから。
君が救いを望むなら僕は救いの歌を
君が悲しみを共有してほしいなら僕は悲しみの歌を
君が楽しい時間を望むなら僕はいつだって笑顔で歌おう
そう思えたステージでした。
また明日へ向かって歩こうと思えた。
明後日も明々後日も、この未来の行く末まで歌い続けるから共に君と歩んでいけたら。
取材・文/ヒガキユウカ 撮影/SARU(SARUYA AYUMI)
■セットリスト
01. スターライトキセキ
02. ホシアイ
03. 儚きゴースティング
04. Mr.Fake
05. ヒロイックシンドローム
06. 恋愛勇者
07. Dear Moon -Piano ver.-
08. Flight Light〜星くずとBoeing〜
09. ガラクタモンスター
10. ハイドアンド・シーク
11. カタオモイ
12. おじゃま虫
13. クリスマス・ストーリー
14. 月曜日の憂鬱
15. かいしんのいちげき!
16. カラフルタッグチーム
17. アイビー
18. コスモノート
19. 君が僕の心に魔法をかけた
En-1. 小さな恋のうた
En-2. きっと愛って
En-3. Hello,My story