「久しぶりに空気おいしい。薫先生のおかげかも」
「なにそれ、大げさ」

1月9日(木)放送の木曜劇場『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)第1話。
総合病院の腫瘍内科医・恩田心(松下奈緒)が、膵臓がん手術のスペシャリスト・梶山薫(木村佳乃)と出会う。

心と薫はバディとなりがん治療に挑む。その一方で、二人にはもう一つの接点がある。3ヶ月前に事故に遭って意識不明となっている心の夫・(中村俊介)だ。匠の手術に携わっていたのが、薫と薫の元上司・須藤進(田辺誠一)だった。心は、そのことをまだ知らない。
松下奈緒×木村佳乃「アライブ」がん治療の「3つの“あ”」焦らない、慌てない、諦めない
イラスト/まつもとりえこ

信頼をハラハラ感に変える「秘密」の存在


「2人に1人ががんになる」と言われている。腫瘍内科医はがん治療に携わり、すべての領域の悪性腫瘍を相手にし、患者さんに合った治療をコーディネートする役割をも担っている。がんの治療には大きく分けて「手術・放射線治療・薬物療法」の3つの方法があるが、彼らは薬物療法、つまり抗がん剤治療のスペシャリストだ。

腫瘍学のことを英語で「オンコロジー(oncology)」という。「恩田心」という名前から「オンコロ先生」と呼ばれている心。腫瘍内科の部長・阿久津(木下ほうか)には「オンコロジーのために生まれてきたような先生」と言われていた(「生まれてきた」と言うが、義父の名前が恩田であることを考えると、心の旧姓は別の名前だろう)。

松下奈緒が演じる心は、30代の設定なのだろうか。
若くして経験豊富で、それでいて患者が安心できるような落ち着きも兼ね備えている。時折画面に映る手の指がとてもきれいで、心は内科医だが、この指でおこなう外科手術も見てみたかったと思うほど。

心が外科手術を託すのは、木村佳乃が演じている消化器外科医の薫。薫は40代だろうか。年下であろう心の仕事にも敬意を払っている。面倒そうな年配の医師を上手くいなすなど、ひょうひょうとして気持ちの良いところがある人だ。

心と薫は、患者家族の集まり「やどりぎの会」で出会う。心は、3ヶ月前に看板の下敷きになるという事故に遭い意識不明となった夫・匠に、どう向き合うか悩んでいた。匠の父親で、心にとっての義父・京太郎(北大路欣也)は、匠の回復に関してどこか割り切った様子だ。

京太郎「一番大変なのは心ちゃんだけど、こんな生活を続けてたら漣がダメになるよ。匠の事故からもう3ヶ月経つ。お互いに、覚悟しないといけないね」

京太郎のように覚悟をすることができず回復を期待してしまう心は、複雑な心境を薫に打ち明けていた。


しかし実は、成功したはずだった匠の手術にトラブルを起こしたのは、薫だった。薫がいつ本当のことを打ち明けるのか、心はいつ真実を知るのか。心が薫に信頼を寄せれば寄せるほど、ハラハラ感が増していく展開になるはずだ。

内科医と外科医、心と薫の非対称な部分


第1話では、高坂民代(高畑淳子)と殿山(石田明(NON STYLE))、そして村井恵子(石野真子)という三人のがん患者が登場した。

民代は長年通院している全身がんの患者だ。心が一貫して担当しているため気心知れた様子で、薬の処方の相談や心情についても自由に話せている。

民代「私たちみたいながん患者はね、毎晩、明日の朝が迎えるのを願って眠るの。そして、朝になって恐る恐る目を開ける。真っ赤な太陽を見て思うのよ。今日も、明日の朝を迎えられるように精一杯生きようって。悪くないでしょ?」

民代の言葉から、心は恵子を屋上に連れ出して連れ合いの山本忠司(田口トモロヲ)とともに朝日を見ることを思いつく。民代は別の病院で「治らない」と言われ、ホスピスに行くことを検討していた患者だった。心の診察で手術可能であると判明し、薫が手術を担当した。


恵子の手術中、研修医の結城涼(清原翔)は、心にこう言う。

「医者なのに祈るしかできないって、しんどいですね」

治っているのか実感が湧きづらく、受けている間はつらい抗がん剤治療と違って、手術は成功したかどうかが目に見えてわかる。そのため、殿山や忠司は、治療方針を立てた心ではなく手術を担当した医師に泣いて感謝を伝える。心もそこは仕方ないものと感じつつも、同じ患者に携わった外科医と内科医が並んだとき、真っ先に外科医に感謝されるのは複雑な思いのようだった。それでも笑顔を崩さないようにしている様子がけなげだ。

バディとして非対称に描かれる部分もある心と薫。性格だけでなく、患者など周囲からの扱いにも差をつけている。それが今後の展開にどう活きてくるか。

1話の見どころのひとつは田口トモロヲの声


忠司が大げさと思えるほどに薫に感謝する一方で、恵子は病室で静かに心に感謝していた。

恵子「治らないって言われてたのに、なんで受け入れてくれたんですか」
「治る、治らないじゃないんです。患者さんの人生に寄り添うのが、私たち腫瘍内科医の仕事です」

現実と理想を割り切れない性格の心だからこそ、患者の人生に寄り添って治療方針を考えられているとも言える。

心は、恵子と忠司に「がん治療の『3つの“あ”』」について話していた。
若年性認知症を患う忠司は、忘れないようにその言葉をICレコーダーに録音する。恵子はその録音をよく聞いていたという。

忠司「3つの“あ”。焦らない、慌てない、諦めない」

普段はオロオロとして少し頼りない忠司。この録音された声だけは、落ち着いていて深く胸に響く朗読のようだった。『プロジェクトX?挑戦者たち?』(NHK)などナレーションの経験も豊富な田口トモロヲの力が発揮されている。もしかしたら、若年性認知症になる前の忠司はこんな落ち着いたところもある人だったのだろうか、と想像してしまう。

「先生、本当にありがとうございました」と心の手に触れながら涙ぐむ恵子を見て、涼は言う。

「4つ目の“あ”、ですね」
「え?」
「“ありがとう”」

今は外科医を志している涼だが、今後、心の姿を見て腫瘍内科を志望する展開もありそうだ。

第2話では、男性には少ない乳がんの患者として寺脇康文が登場する。各話で登場するがん患者への向き合い方という横軸と、心の夫・匠をめぐる薫の秘密という縦軸が、どこで交差していくのだろうか。

「やどりぎの会」で妊婦が倒れたときの心と薫の連携には、女同士の自然なやり取りと不思議な心地良さがあった。
本作のキャッチコピーは「ふたりの女、絆と秘密。」。心と薫が女同士だからという理由で引き裂かれることなく、秘密を乗り越えていくことを願っている。

(むらたえりか)

【配信情報】
FOD:https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4m57/
TVer:https://tver.jp/corner/f0044764

【作品情報】
木曜劇場『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)
2020年1月9日(木)22時〜放送スタート
出演:松下奈緒、木村佳乃、清原翔、岡崎紗絵、小川紗良、中村俊介、三浦翔平、田辺誠一、藤井隆、木下ほうか、高畑淳子、北大路欣也
脚本:倉光泰子
演出:高野舞
音楽:眞鍋昭大
オープニング:須田景凪『はるどなり』
プロデュース:太田大、有賀聡
製作:フジテレビ

番組公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/alive/
公式Twitter:https://twitter.com/Alive_cx
公式Instagram:https://www.instagram.com/Alive_cx/
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