海外ライブ情報サイトで公演登録数が多かった日本人アーティストは「MONO」

音楽を数字で見ていく本連載、今回は2週連続で「海外ライブ情報サイトで公演登録数が多かった日本人アーティストは誰か」をテーマに取り上げたい。

前回(※関連記事参照)はオンライン上での楽曲再生数が多いメジャーアーティストを対象に調査したが、楽曲リリースよりもライブを中心に活動しているアーティストや、国内よりも海外での活動に主軸を置いているアーティスト等について調査が不十分であったため、今回は改めて「海外ライブ情報サイトで公演登録数が多かった日本人アーティスト」を中心に調査したい。


今回は海外の中でも主に欧米諸国と一部中国で人気の、日本人と公表しているアーティストを対象とし、具体的には以下の計90組を調査した。

1.Spotify発表の「年間で海外で最も再生された日本の楽曲」にランクインしているアーティスト(2017-2019)

2.全米ビルボード・チャートにおいて、アルバムもしくはシングルでTOP200までにチャートインしたことがある日本人アーティスト(1963-2019)

3.全英ビルボード・チャートにおいて、アルバムもしくはシングルでTOP100までにチャートインしたことがある日本人アーティスト(1975-2019)

4.中国QQ Musicの海外アーティストフォロワーランキングにてTOP200に入っている日本人アーティスト(2019年時点)

5.その他、海外進出しているアーティストとして日本国内のメディアにて取り上げられることの多いアーティスト

なお、5については、ワールドツアーを複数回開催しているMIYAVIや、2019年に全米ビルボード「Hard Rock Albums Sales」25位にランクインしたBand-Maid、1997年にベルギーにて初デビューを飾ったBOOM BOOM SATELLITESなど、1〜4には属さないが、含めた方がよいと判断している。

併せて、ライブの本数はSetlist.fm(ユーザーがセットリストを自由に投稿できるアメリカのサイト)にて開催国が登録されているライブのデータのみを使用した。Setlist.fmは英語サービスのため、中国などの英語圏以外で積極的にライブを行っているアーティストの場合は、登録数がやや少ない傾向にある。そのため、主に英語圏でライブを積極的に行っているアーティストとして参考にしていただきたい。

海外でのライブ登録数が多いアーティストは?


では、まずはSetlist.fmにて最もライブの登録数が多かった日本のアーティストを見てみよう。Setlist.fmはWikipediaのようにライブに参加したファンが自由にセットリストを登録できる仕組みになっているため、基本的にはライブに参加している英語話者のファンが多いほど登録件数が多い傾向にある。

海外ライブ情報サイトで公演登録数が多かった日本人アーティストは「MONO」
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1位 MONO
2位 少年ナイフ
3位 LOUDNESS
4位 DJ KRUSH
5位 Dir En Grey
6位 ONE OK ROCK
7位 Crossfaith
8位 Cibo Matt
9位 BO NINGEN
10位 BABYMETAL

2位以下を引き離し、最もライブ登録数が多かったのはインストゥメンタル・ロック・バンドのMONO。海外進出しているアーティストとして名前が挙がることの多い彼らだが、海外で活動するために結成したというメンバーの言葉通り、国外でのライブ本数は全体の85%を超えている。活動歴20年とは思えないほどの多数のライブ数を誇っており、2位以下を大きく引き離してのトップとなった。


2位は1981年結成のガールズバンドである少年ナイフ。元祖「海外で人気のアーティスト」とも言え、国外で知られた結果、国内でも知られるようになったといういわゆる「逆輸入」アーティストとしてご存知の方も多いだろう。活動場所としては、アメリカ・イギリスなどを始めとした英語圏が多く、2019年には全21回のオーストラリア&ニュージーランドツアーなども実施している。



3位はヘヴィメタルバンドの大御所・LOUDNESS。L'Arc~en~Ciel、X JAPAN、ONE OK ROCKなどがパフォーマンスを行ったことで知られるニューヨーク最大級の施設「マディソン・スクエア・ガーデン」にて、日本人として初となるライブを行ったとされるベテランバンドである。ビルボードの全米総合チャートTOP200に、アルバムが計3回ランクインしたことでも知られる実力派だ。

地域別にみる、ライブ件数が多いアーティスト


次に世界の地域別でランキングを見てみよう。世界の国の分け方はいくつかあるが、今回はざっくりと世界の5地域別にライブが多いアーティストを見てみたい。
海外ライブ情報サイトで公演登録数が多かった日本人アーティストは「MONO」
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北アメリカ:MONO(次点:少年ナイフ)
ヨーロッパ:MONO(次点:Crossfaith)
アジア:MONO(次点:ONE OK ROCK)
南アメリカ:Crossfaith(次点:FLOW)
オセアニア:少年ナイフ(次点:MONO)

5地域のうち、3冠を制したのは先程総合ランキングでトップだったMONO。南アメリカを除くほぼすべての地域で上位にランクインしており、ライブの本数だけでなく移動などもかなりストイックに行っていることが伺える。


また、5地域それぞれを見ると先程のランキングと重なるアーティストが多く、海外でのライブ本数が特に多いアーティストは、地域を選ばずに精力的に活動しているケースが多いと言えそうである。

どの国でライブを開催することが多いのか?


最後に、今回調査した範囲でどの国でのライブが多かったのかを見ておきたい。
海外ライブ情報サイトで公演登録数が多かった日本人アーティストは「MONO」
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1位 アメリカ
2位 イギリス
3位 ドイツ
4位 フランス
5位 オーストラリア
6位 カナダ
7位 オランダ
8位 中国
9位 イタリア
10位 ロシア

最も多かったのは世界最大の音楽市場でもあるアメリカ。カナダやメキシコなどの北米地域すべてを合わせると、今回の調査対象となるライブの47%を占めており、ほぼ半数が北米で行われているという結果となった。

次いで本数が多かったのがイギリス。こちらも、イギリスに限らずヨーロッパでのライブは非常に多く、北米に次いで全体の40%の割合を占めていた。


上記の国は、日本人によるライブが一定数開催されている国と言えるので「海外でライブをしてみたいがどの国が良いか迷っている」というアーティストの方々にとっては比較的ハードルが低い国と言えそうだ。もし、今後海外進出を考えている方は参考にしてもらえれば幸いである。

アニメやゲームの海外進出に比べると、音楽業界の海外進出は注目されているとは言い難いが、海外で精力的にライブを行っているアーティストは少ないわけではない。本記事が海外進出を考えている、迷っているアーティストの参考になれば幸いである。

■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。


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