「日本は感染拡大せず」のフェイクニュースも 新型コロナでロックダウン中のイタリア

「日本は感染拡大せず」のフェイクニュースも 新型コロナでロックダウン中のイタリア
普段は観光客で埋まるスペイン広場 (c) taku komaya

新型コロナウイルスの感染拡大が続くヨーロッパ諸国において、まず感染が拡大したのがイタリアだ。現在イタリアは全土で原則外出が禁止されており、各都市はロックダウン(都市封鎖)している状態。人々の移動や経済活動は大きく制限されている。

ロックダウンされたローマで暮らしている日本人映像プロデューサーの駒谷卓さんに現状を聞いた。

取材・文/Keiko Sumino-Leblanc 加藤亨延


ロックダウンが発表されると人々は大挙して他の地域に


「日本は感染拡大せず」のフェイクニュースも 新型コロナでロックダウン中のイタリア
ロックダウンで人がいない土曜夜のフェンディ本店前 (c) taku komaya

――イタリアで新型コロナウイルスはどのようにして広がりましたか? 感染拡大が深刻化したのはいつ頃でしょうか?

1月末に中国からの観光客の感染がローマで発覚しましたが、大きな感染拡大には至らず、その後2月末に北イタリアのロンバルディア州(ミラノが州都)、およびベネト州(ベネチアが州都)で感染源不明の感染爆発が発生しました。

感染爆発した時はすでに経路不明、症状のない感染者を媒介に、家族や地域の人たちに広がっていきました。新型ウイルス感染者を受け入れた病院は、当時は感染者が少なかったこともあり情報がなく、事態の深刻さを把握できずに院内感染も発生しました。

イタリアのコンテ首相は、3月8日に感染者数が多かったイタリア北部のロンバルディア州全域と14県を封鎖すると発表。対象地域にはミラノやベネチアなども含まれました。ところが封鎖が発表された夜に、地方出身の学生やサラリーマンは大挙して帰省。その結果、帰省先で高齢の親や祖父母に感染することになり、感染が全土に広がりました。

1月31日にイタリア政府はヨーロッパの他国に先駆けて非常事態を宣言していましたが、感染が大きく拡大した3月初旬までは国家レベルでの移動制限などは発表されていませんでした。

――新型コロナが深刻化した際から、どのような生活をしていましたか?

私は「ティータイムフィルム(http://www.teatimefilm.com/)」という映画の企画・制作を行う会社を経営しているのですが、北部イタリア数州で学校や美術館などの封鎖が始まった2月末からは、自分の会社を完全にテレワークに切り替えました。全社員は、ほぼ自宅で過ごしています。イタリア全土の移動宣言措置は3月10日に始まりましたが、その前から自主的に自宅にこもることにしていました。

――お住まいの国でのロックダウンの状況はどのような感じでしょうか?

イタリア全土でのロックダウン、つまり移動制限は3月10日早朝から始まりましたが、しばらくは公園を散歩したり、街中を連れ立って散歩する人が目立ちました。移動制限の発表から3週間が経過した今では、ローマ旧市街地はゴーストタウンのように閑散としています。パトロールする警察官やパトカー以外には、ほとんど人が出歩いていない状況です。
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普段は賑わうバブイーノ通りだがロックダウン後は閑散としている (c) taku komaya

――ロックダウンが始まる話はいつ頃から聞いていましたか?

ロックダウンが開始する前日の夜に、ニュースで初めて知らされました。

――実際にロックダウンが始まったあと、街の雰囲気はどのように変わりましたか?

特に混乱は起こらず、ローマでは秩序を保って淡々とロックダウンに入ったので、正直なところ少し驚きました。

――駒谷さんと周囲はロックダウンのなか、家でどう過ごしているんでしょうか。

私は、主に読書したり映画を見たりして過ごしています。家族も編み物などをしていますね。運動不足を解消するため、室内でできるエクササイズなどもします。

医療従事者への励ましや困窮者に対する市民同士の助け合いも


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週末でも静まり返るローマ旧市街の繁華街の様子 (c) taku komaya

――新型コロナに関してお国柄を感じるエピソードがあれば教えてください。

感染が深刻になり始めた頃から、病院近くの住人が医療従事者のために毎日ピザやミネラルウォーターなどを差し入れています。経済が停滞し、収入が途絶えて食べ物が買えない人たちが増えてくるなか、余裕のある市民が食糧の入った袋を道端に置いて、困っている人たちに寄付するようにもなっています。

一部の病院では病床が足らず、病院の屋外に軍の野営テントを設置して入院患者を収容しています。野営テントに入院している患者の誕生日には、防護服で完全装備した看護師と医師が複数名サプライズで『ハッピーバースデー・トゥー・ユー』を歌いながら、誕生日ケーキを届けてお祝いすることもあります。またSNSなどで拡散した「毎日バルコニーでコンサート」のフラッシュモブはイタリアが発祥です。

――ロックダウン後の買い出しはどのようにしていますか? 買い占め、足りなくなっている物資はありますか?

家の近所のスーパーは配達もしてくれますが、配送スタッフの手が足りてなさそうなので、数日に一度買い出しに行っています。買い占めはローマでは全く起こりませんでしたが、ミラノなど北イタリアの大都市では、ロックダウン開始から数日は食料品が買い占められたと聞きました。足りなくなっている物資は医療用の消毒液とマスクです。それ以外は食料・その他の日用品含め特に不足しているものはありません。

――ロックダウン後の食事は自炊で? もしくは宅配か外に買いに出たりしますか?

フードデリバリーは一切利用せず自炊しているため、料理が上達しました。

――ロックダウン後に許される外出の範囲は?

買い出しなら自宅から一番近いスーパーマーケットまたは食料品店まで。外出時には理由を明記した自己申請書が必要です。実際に警察官がかなり頻繁に巡回して申請書のチェックをしています。

――国からはどのようなサポートがあるのでしょうか?

私は経営者で、かつ政府規定の収入枠より年収が多いため、助成金の受給はできません。しかし経営している会社の社員には、全員に対して「月給の80%まで、上限1200ユーロ(約14万4000円)×2.25ヵ月(9週間)分」の助成金が下りる予定です。

「日本はアビガン普及で感染拡大せず」のフェイクニュース流れる


「日本は感染拡大せず」のフェイクニュースも 新型コロナでロックダウン中のイタリア
ショッピングで賑わうエリアも人はいない (c) taku komaya

――日本の様子はどのように報じられていますか?

特に大きな報道はされていません。3月22日に、東京在住のイタリア人薬剤師ユーチューバーが、池袋から実況で「日本では奇跡の薬アビガンがすでに普及しており、日本人はみんなアビガンを服用しているから感染拡大は起きていない」というフェイクニュースを発信し、これがイタリアの大手メディアで大きく報じられました。

――現地から見て、日本の動きはどのように感じていますか?

非常に危険な状況にあると思います。ロックダウンするべきかどうかは意見が分かれるところだと思います。各自が判断して行動できるように、海外各国での感染状況などの情報をメディアは正確かつ客観的に報道してもらいたい。政府広報もきちんと情報流布をしてほしいですね。

――もし、日本でロックダウンや緊急事態宣言が実施されることがあった場合に、気をつけるべきことや、アドバイスするとしたらどんなことがありますか?

普段からきちんと万が一の際に備えておけば、ロックダウンでスーパーマーケットなどの入場者制限が始まったとしても、買い出しのたびに長い時間並んで大変な思いをする機会は減るかもしれません。自分の性格や嗜好に合わせた自宅でもできるエクササイズを調べて、用具などが必要なら用意しておくと良いかもしれませんね。

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