MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

「ただいま」という言葉をフロントマン 逹瑯が夢烏(注・古くからMUCCファンを総称する言葉として使われている)たちに向けて発したのは、この夜の本編ラストで琴羽しらす氏と後藤泰観氏、そしてストリングスチーム・killers orchestra を迎えての豪華なる演奏で披露された「スピカ」を歌い終えたときのことである。  

始動23周年を迎えての堂々たる15thアルバム『惡』を本来であれば今年5月に発売する予定だったMUCCは、春に緊急事態宣言が発出されたことにより6月になってようやくそのリリースが叶ったのだが、世の中そのものが激動と波乱に満ちることとなってしまった2020年は、結果としてMUCCというバンド自体にもまた大きな変化と変革をもたらすことになったと言えるだろう。

まず、5月4日の結成記念日には完全リモート体制での演奏動画[Remote Super Live ~Fight against COVID-19~]を無料配信するところから始まり、翌6月21日にはぴあアリーナMMで行うはずだった[蘇生]の代替公演として無観客有料配信ライヴ[~Fight against COVID-19 #2~『惡-THE BROKEN RESUSCITATION』]を大胆な演出アプローチと細部にまで凝ったサウンドメイクにて敢行。なお、12月27日に日本武道館にてワンマンを行うとの告知があったのはこの時だ。  

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

そして、ここからのMUCCは9月から11月にかけても計3本の無観客配信ライヴを決行しており、それらがいずれも異なるコンセプトにて実施されてきたことも実に興味深い流れであったと言える。中でも、レコーディングスタジオを舞台とした11月の[FROM THE MOTHERSHIP]は、配信ライヴにおける音質を徹底的に追求したものとなっていて、近年サウンドエンジニアリングも手掛けているリーダー・ミヤの手腕がいかんなく発揮された内容であった。  

また、11月にいわゆる小箱タイプのライヴハウスで繰り広げられた[FROM THE UNDERGROUND]でのド直球な熱量たっぷりのパフォーマンスは、そのまま12月27日への期待をより増すことに。

それだけに、ここから1週間と経たない12月2日に我々へと突如もたらされたインフォメーションは衝撃的だったと表現するほかない。 公式サイトからの「2021年の春をもってドラマー・SATOちがMUCCを脱退し、ドラマーとしても引退する」というこの不意な“大切なお知らせ”には、きっと動揺した夢烏も多かったのではないかと思う。  

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

しかしながら、いざフタを開けてみれば。MUCCがこのたび開催した3年半ぶりの日本武道館公演[惡-The brightness world]は、徹頭徹尾ひたすらにMUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れたものになったと断言できる。

アルバム『惡』の冒頭を飾る、MUCC史上最も低いローGチューニングを用いたヘヴィなサウンドが炸裂する「惡 -JUSTICE-」と「CRACK」で威勢よく幕を開け、SATOちが作詞と作曲を手掛けたタイトル通りのドライヴチューン「神風Over Drive」まで一気にたたみかけると、逹瑯はこぼれるような笑顔で「…ヤっっバい!楽しいよ、これ!!落ちつけ、俺www」とまごうことなき本音を吐露。見やれば、SATOちやYUKKEだけでなくミヤも含めた全員がやたらと破顔しているではないか。  

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

ひとつには、今回のライヴ開催に向け“鳴り物”が導入されたことも吉と出たようで、公式グッズの鈴付きリストバンドや光るタンバリンのみならず、打楽器類の持込みが許可されていたために会場では拍手に限らずさまざま音が入り乱れ、発声が禁忌となっている今日の状況下でも明確な“盛り上がり”というものを生み出すことに成功していた模様。  

なお、今回の公演については政府ガイドラインを遵守しソーシャルディスタンシングを確保したうえでの有観客ライヴと、アーカイヴ配信も込みのネット配信、さらにはWOWOWでのTV生中継の計3ルートからアクセスすることができるようになっていたため、たとえ現場に来ることがNGな場合でも夢烏たちはそれぞれに[惡-The brightness world]を堪能できたに違いない(e+ストリーミングは1月3日まで視聴可能) 。

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

何かとクリック至上主義の昨今にあって、オールドスクールなロックンロールをMUCCならではのフリーテンポで堪能することができた「Friday the 13th」。サポートキーボーティストの吉田トオル氏や、バイオリニスト・後藤泰観氏による叙情的なプレイが華を添えていただけでなく、ランタンを用いた演出の面で配信ライヴでの経験が活かされていた「積想」。繊細な旋律とともに、武道館の中に淡雪が舞い降った「COBALT」。9月の配信ライヴに引き続いて、アルバムのレコーディングにも参加しているlynch.の葉月がゲストヴォーカルとして登場し場を湧かせた「目眩feat.葉月」などなど。

挙げればキリはないが、今宵のMUCCが全27曲・3時間超にわたって呈示してくれたこのライヴは、コロナ禍に突入して以来の“できるだけライヴはコンパクトにまとめよう”的な風潮の逆をいく、換気などの安全性は保ちつつもできるだけ本来的なワンマンライヴとしてのボリューム感を重視した、なんとも矜持と気概のあるものになっていたように思えてならない。  

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

つまり、その意味でも、冒頭においてふれた「スピカ」の際の「ただいま」という言葉には、ことさらの想いが託されていたのではないだろうか。観客を前にしたステージという場に、紆余曲折を経ながらも還って来られたことに対する感慨。彼らは今宵、それを幾度となく噛みしめていたものと推測する。もちろん、その場で夢烏たちが「おかえり!」という言葉を彼らに対してかけることはできなかったが、声は発せずとも演奏後の盛大なる拍手や打楽器音にてその気持ちは存分に伝わったはず。  

ゆえに、このあとのアンコールも実に充実した時間として成立することとなり、まずは昨年SATOちの誕生日を記念して会場限定販売されたシングル曲「My WORLD」や、ミヤが「みんなの笑顔でSATOちを成仏させてやろうぜ!」と煽った「名も無き夢」、再び葉月が加勢してくれた「蘭鋳」の3曲では、改装完了早々の武道館が観客たちの跳んだりハネたりによってリアルに揺れるほどのブチ上がり状態に。  

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

次いでのダブルアンコールでは、あたたかなノスタルジーの漂う「家路」、普段であれば途中で観客側がシンガロングする部分をメンバー全員が持ち回りで個々に歌ってみせた「優しい歌」、大きな意味での讃歌である力強く美しい「ハイデ」でと来て…。

この夜、最後の最後に演奏されたのはSATOちの脱退が決定してからミヤが作曲をし、メンバー全員で作詞をして作り上げたという新曲「明星」だった。 すでにYouTubeの公式チャンネルにショートバージョンのMVがアップされているほか、来年発売されるベストアルバム『明星』(発売日未定)にも収録されるとのことなので、詳しい歌詞内容についてはそれらを参考にしていただきたいが、とにかくこの曲に関しては涙なくしては聴けなかったのが本当のところ。べつに、彼らがお涙頂戴的なパフォーマンスをしていたわけでは断じてないし、この楽曲自体は前向きな意味合いのものでしかない。ただ、それでも彼らの過ごしてきた23年間を思うと、その日々に対しての尊さと愛しさに自然と泣けて来て仕方なかった。  

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

MUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れた、脱退するSATOち最後の日本武道館公演
撮影/田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)、Susie

とはいえ、我々はまだ、ここで感涙にむせんでばかりもいられないのも事実。来年2月には彼らの地元にあるザ・ヒロサワ・シティ会館・大ホール(茨城県立県民文化センター)を終着点とするホールツアー[MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world]が控えているわけで、SATOちが在籍するライヴバンド・MUCCの雄姿を拝める機会はまだ幾つもある。  

すなわち、「ただいま」と「おかえり」の気持ちを、私たちはまたそこでも通い合わせることができるだろう。せっかくならば、そんな貴重な日々をMUCCの4人とともに楽しく過ごしていこうではないか。MUCCとSATOちのこれからの大切な日々に、宵の明星の如き確かな光あれ!
(文/杉江由紀)

セットリスト

1. 惡 -JUSTICE-
2. CRACK
3. 神風 Over Drive
4. ENDER ENDER
5. G.G.
6. 海月
7. アイリス
8. サイコ
9. Friday the 13th
10. SANDMAN
11. 積想
12. COBALT
13. アルファ
14. スーパーヒーロー
15. DEAD or ALIVE
16. 目眩 feat.葉月
17. ニルヴァーナ
18. カウントダウン
19. TONIGHT
20. スピカ
<ENCORE 1>
1. My WORLD
2. 名も無き夢
3. 蘭鋳 feat.葉月
<ENCORE 2>
1. 家路
2. 優しい歌
3. ハイデ
4. 明星 

■MUCC オフィシャルサイト

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2020年12月29日の音楽記事

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