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東野圭吾「さまよう刃」奇しくも改正少年法が成立したタイミングで観る、現代の「罪と罰」

東野圭吾「さまよう刃」奇しくも改正少年法が成立したタイミングで観る、現代の「罪と罰」
(C)WOWOW

まだ間に合う! 竹野内豊主演 連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」WOWOWで放送中

もしも大切な人の命を誰かに奪われたら。それも人の尊厳まで踏みにじり、酸鼻を極めるやり方で奪われたとしたら。それでもあなたは罪を憎んで人を憎まずと言うことができますか──。

そんな重い、けれども真摯に受け止めねばならないテーマに、正面から挑んだのがWOWOWで現在オンエア中の連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」だ。


現代版の「罪と罰」とも言えるこのドラマの根底にあるテーマは、少年犯罪と法の矛盾。それが一人娘を惨殺された父親の復讐劇として説得力を持って描かれている。

これまでも凶悪な少年犯罪が起きるたび、その犯罪が罪深ければ罪深いほど、被害者側にとっては認めがたい少年法の矛盾が指摘されてきた。

どんなに非道な罪を犯しても少年であるというだけで死刑にはならず、実名は報道されず、それどころか被害者側は犯罪の詳細すら教えてもらえない。

青少年の更生という名の下に守られているとしか思えない加害者たち。そうした問題が、今作では生々しく描かれていく。

悲劇の始まり

物語のあらすじはこうだ。主人公の長峰(竹野内豊)は妻を病気で亡くしたあと、高校1年生の一人娘・絵摩(河合優実)と暮らす会社員。男手ひとつで育て上げた娘の成長を唯一の楽しみにしていた長峰だが、その幸せな生活は絵摩が遺体となって発見されたことにより脆くも崩れ去る。

死因はレイプの末の薬物過剰投与による急性心不全。犯人逮捕につながる物的証拠も少なく捜査が難航するなか、長峰のもとに犯人の名前と居場所を告げる密告電話がかかってくる。

教えられた犯人のアパートに行き留守宅を物色すると、絵摩が犯人2人に陵辱され殺されていくさまを記録したDVDが残されていた。

慟哭する長峰と、そこに帰宅した犯人の1人である敦也(名村辰)が鉢合わせしたことから次なる悲劇が始まる。

我を忘れて怒りと悲しみに任せて敦也を惨殺してしまった長峰は、少年法を逆手にとって悪事を働く主犯の快児(市川理矩)への復讐を固く心に決める……。

それにしても快児と敦也のしでかすことが、とにかく非道。医者の息子でパシリの誠(井上瑞稀:HiHi Jets/ジャニーズJr.)に持ってこさせた車を使って、好みの少女を拉致。

アパートに連れ込んでレイプし、口止めと闇ルートでの販売を目的に、レイプする様子を撮影してDVDに録画する。少女たちをまるで物のように扱い、反抗すれば暴力でねじ伏せ、ふざけ倒し笑いながら行為に及ぶ。

そのやり方はどんどんエスカレートし、ついには覚醒剤を使用するまでになっていた。被害者のなかには、レイプされたことを悲観して自殺した少女もいた。

まさに唾棄すべき2人であり、見ているうちに心情的には長峰と完全に同化。復讐して当然、ただ死なせるだけでは物足りない、どうにかして少女たちの無念を思い知らせてやりたいとまで思ってしまう。

また、敦也を殺害した罪で指名手配された長峰の逃亡も、どうかうまく逃げ切ってほしいと願ってしまう。

そういう気持ちに呼応するのが、長峰の正体を知りつつ手を差し伸べる木島和佳子(石田ゆり子)であり、長峰に共感に似た思いを抱く若手刑事の織部(三浦貴大)の存在だったりする。

東野圭吾「さまよう刃」奇しくも改正少年法が成立したタイミングで観る、現代の「罪と罰」
(C)WOWOW

2009年には寺尾聰主演で映画化

しかし長峰を演じる竹野内豊が、とてもいい。その昔は失礼ながら二枚俳優の1人としか思っていなかったのだが、何年か前にたまたま録画していた映画『at Home アットホーム』を観て考えが変わった。

ちょっと『万引き家族』にも通じる、血の繋がらないワケアリ家族の物語なのだが、飄々としていながら時に鈍臭く、時に冷静に、そのくせ胸の内はいつでも愛情にあふれている、そんな父親役を好演していた。

その後も『彼女がその名を知らない鳥たち』の精悍でズルい男、『孤狼の血』の暴力団の組員、『カツベン』の活動写真好きの刑事など、タイプもさまざまな役柄を印象的に演じていた。

その竹野内豊、実は2009年に映画化された『さまよう刃』では若手刑事の織部を演じている。ちなみにこの時、主人公の長峰を演じたのは寺尾聰

つまり職務として追いつつも主人公に共感してしまう刑事と、許されないことだと知りつつ復讐を果たさずにはいられない主人公、ほぼ10年の時を経て追われる人間と追う人間の両方を演じているわけである。

ならば、やはり映画版も観ずにはいられない。というわけで観てみたのだが、若々しい竹野内豊の刑事も捨てがたい。年長の刑事にたしなめられるほど、犯罪を憎み被害者を思いやる一本気な感じにとても好感が持てた。

長峰に共感する視聴者代表のように犯人をなじるスタンスにも、気持ちがスッとする。

だが映画版の長峰の描かれ方は、全体に抑制が効きすぎているように感じた。日本男児としては怒りも悲しみも内に秘めて表には滲ませる程度に、ということなのかもしれないが、個人的にはやや物足りなかった。

何もかも捨てて、趣味の狩猟に使っていた猟銃を手に少年を追う。そこまで追い詰められた人間からはもっと怒りが匂い立つものではないか、と。

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