
アカデミー賞映画『グリーンブック』オンラインに降臨
2018年、第91回アカデミー賞作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞した名作『グリーンブック』が、Amazonプライムビデオほか、動画配信サービスに降臨。ということで、あぁ〜この映画ね! 何か面白いらしいし、アカデミー賞とってるし、今週末にでも観ようかなと思ってる方に声を大にして言いたい。「ケンタッキー買ってから観て!」
グリーンブックとは何ぞや
とまぁ、いきなり太文字で叫んでみましたが、この映画、何も知らずに観るのと、ちょっとだけ背景を知ってから観るのではだいぶ味わいが違ってくる。まず、そもそもタイトルになっている「グリーンブック」とは何ぞや?という話だが、一言で説明すると「黒人が入れる店や宿のガイドブック」である。
映画の舞台である1960年代のアメリカの南部は、まだ苛烈な人種差別下にあり、黒人の日没後の外出を禁止する地域があったり、黒人が利用できる店や宿が限られていた。なので、うっかりグリーンブックに載っていない店に入ろうものならボコボコにされ下手すりゃ逮捕。なので、黒人でも平和に車移動ができるようにと、郵便配達員のヴィクター・ヒューゴ・グリーンが作った冊子。
実話をもとにしたストーリー
時は1962年、ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしていたトニー・リップ。ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで、周囲から頼りにされていた。金に困っていた彼はある日、黒人ピアニストのドクター・シャーリーに、演奏旅行の運転手としてスカウトされる。ツアーで巡るのは、黒人差別が色濃く残る南部である。全く対照的な2人は、果たして無事にツアーを終えることができるのか……。

リップの人となりは、映画冒頭でしっかりと尺を割いて描かれるが、ドクター・シャーリーに関しては少ないので、これだけ覚えといていただきたい。彼は、幼い頃からロシアで英才教育を受けて育ったため、

いわゆるアメリカの黒人文化をほぼ知らない。
フライドチキンのルーツ
そして、この映画を観る上で忘れてちゃならないのが、このフライドチキン。今ではコンビニでも買える日本でもお馴染みの食べ物だが、そのルーツは黒人奴隷にある。
南部で白人の料理を作るのは、奴隷である黒人の仕事だった。白人は骨が多い手羽などナイフとフォークで食べられない部位は捨てていた。そんな、白人が捨ててしまう胸肉以外の骨付部位を、黒人奴隷がラードで揚げたことが由来のソウルフードがフライドチキン。肉体労働でヘトヘトの黒人奴隷が、高カロリーを得られる黒人奴隷時代を象徴する食べ物でもある。


↑その時の写真
というわけで、この映画を鑑賞される際はあらかじめKFCを用意してから再生ボタンを押されることを強く推奨する。
問題のある映画でもある
ただ、この映画。良い映画なのだが、多くの批判を受けた問題のある映画でもある。公開時指摘された問題は大きく3つ、・ホワイトスプレイニング映画である
ホワイトスプレイニング映画…白人が有色人種に上から目線で説教する映画。
・白人救世主映画である
白人救世主映画…ハリウッド映画でありがちな白人が非白人の文化圏で、その人々を窮地から救う系の映画。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『ラストサムライ』『アバター』などがその典型。
・ドクター・シャーリーはマジカル・ニグロ的なキャラクターである
マジカル・二グロ…神秘的な力や知恵で白人を助けるためだけに登場する都合のいい黒人キャラクターを指す言葉。
また、ドクター・シャーリーの遺族は、トニーリップの息子が手がけた脚本に、「事前の打診や相談もなく白人側の視点で描かれ、事実と異なる箇所がある」と訴えており、製作者サイドのスタッフが白人だらけで、黒人と白人の交流を描いた映画でありながら、授賞式のステージに上がったのは白人だらけということも批判の対象となった。
こういう話をすると、映画を観るのに知識や予習などいらない、純粋に楽しめばいい、水を差すな、野暮、めんどくさいという声が飛んでくるが、作品の背景を知ることで作品への理解と楽しみが深まることもまた映画の一側面である。『グリーンブック』をご覧になる際は、ぜひケンタッキーを頬張りながら、南部の黒人奴隷時代に思いを馳せていただきたい。
(ウラケン・ボルボックス)
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ウラケン・ボルボックス
東京から福岡に移住した映画好きのイラストレーター。主な著書『なんてこった!ざんねんなオリンピック物語』JTBパブリッシング、『侵略!外来いきもの図鑑もてあそばれた者たちの逆襲』PARCO出版。
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