俺の名前は大森拓真。

バイトは今日で4回目。
慣れたとは言いがたいけど、段ボールの積み方や、家の床に毛布を敷く要領は少しずつ覚えてきた。
この仕事の何がいいって移動時間も給料に含まれることだ。
現場が遠ければ遠いほど“実質座ってるだけで時給が発生する”。
その分、作業はキツくても頑張れると思える程、俺はこの仕事に対して愛着が沸いていた。
今日の現場は住宅街の一軒家。
家の前には、すでに大小のダンボールが並んでいた。依頼主は中年の女性で、口調はややキツめ。
「おーい新人、押入れの中にもあるらしいから、品持ってってくれ」
トラックから荷台を降りた工藤さんが俺に指示する。
和室の押入れを開けると、中にはシンプルな無地の箱がずらりと並んでいた。