2019年6月30日、公益財団法人パブリックリソース財団が、生前葬と寄付を組み合わせた「謝縁会」を東京・目黒区の東工大大蔵前会館で開催しました。
これまで生前葬というと、生きている間に行うお葬式という、本人のためのイベントが一般的でしたが、この謝縁会は葬儀の前倒しではなく、次世代に自身の意志(遺志)を受け継いでいく「共助の終活」ともいえる生前葬です。

日本でも初となる寄付とコラボした新しいかたちの生前葬、会場にはおよそ150名の方々が集まりました。


本人がおもてなし。生前葬としての謝縁会

今回、謝縁会の主役は、パブリックリソース財団の理事でもある角方正幸さん。株式会社リクルートでは定年まで勤め上げた第一号の社員で、現在もコンサルタントして、大学生のキャリア教育などに携わっています。

謝縁会の会場となったのは、角方さんの母校でもある、東京工業大学にある蔵前会館くらまえホールです。企業人、地域人、家庭人の「三位一体の人生」をモットーに生きてきたという角方さんの人生に合わせて、企業を赤、地域を緑、そして家庭を青と3色のカラーをテーマに、花やテーブルクロスなどで会場全体が飾り付けられました。

正面のステージには大きなスクリーンが掛けられ、左手には角方さんが奥様を描いたという油絵も展示。また、会場中央付近には大きなシンボルツリーが豊かな緑を生い茂らせていました。さらに、会場に流れるBGMは、角方さんが小学生のころから、大好きだった曲を時代ごとにセレクトしています。

来賓の挨拶の後、乾杯の掛け声は「ハッピーライフ!」。集まった人々がおいしい料理と会話を楽しむ中、角方さんご夫妻がテーブルをひとつひとつ回って記念撮影をしたり、「角方さんといえばコレ!」をテーマに来場者にインタビューがあったり。お客様に喜んでいただきたいとこだわりぬいた料理の後には、スペシャルデザートには角方さんが厳選したお取り寄せのお菓子、空也もなか、ケンズカフェ東京ガトーショコラ、そして広島県因島のはっさく大福が振る舞われました。

さらに、会に集まった方々に贈られた記念品は、角方さんが奥様を描いた油絵をモチーフに、障がい者の芸術作品で仕事づくりを進めている「エイブルアート・カンパニー」が制作したアートタンブラー。謝縁会のプログラムの表紙にも、エイブルアート・カンパニーのアーティストの作品を用いています。また、記念品を入れるペーパーバックは「たんぽぽの家」Good Job! Centerの障がい者たちがひとつずつ、作ったものです。

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「三位一体の人生」 をテーマに赤、緑、青の3色で会場を彩る

遺贈の新しいかたちとしての生前葬

恩送り基金の設立と謝縁会の開催について、角方さんは60歳を過ぎたころから、がんなどいくつもの大病を乗り越える中で、「自分の意識がなくなる前に、今までお世話になった方々にいろんなかたちでお礼を申し上げたい」「小さい子どもたちが大人になった時に元気な社会、元気な地域を創ってもらいたい」という思いを感じるようになったといいます。


恩送り基金 に込められた思い

若者の教育支援を目的としたこの基金の設立について、角方さんは「私たちが生きてきた時代、子どもが生きてきた時代、これから孫が生る時代、ますます厳しい世の中になっているような気がします。そういう世の中で子どもたちがさらに元気になれるように。私ができることを、できる限りのことをやっていきたい」とその思いを語っています。

古希を迎えるにあたってこれまで仕事、地域、家庭と3つの縁で結ばれた方々に感謝を伝えると共にその感謝の気持ちを次世代につなげたいと、ご自身が理事も務める公益財団法人パブリックリソース財団に相談し、1千万円を寄付してオリジナルの基金「恩送り基金」を設立しました。

「私と社会とのかかわりで言えば、小さな子どもの教育であったり、大学生の就職問題であったり。そういうことに関わってきたので、そういうことに一生懸命取り組んでいる団体、NPOを支援したい。私のできることは限られているけれども、そういう団体をファンドレイジングして、そういう人たちが結果として次の若い人たちを育ててくれる。そういうように循環というか、つながっていくといいなと思いました」


オリジナル基金をお披露目する場としての謝縁会

謝縁会は、そんな角方さんがこれまでの縁を感謝すると同時に、新しい寄付の文化をお披露目する宴となりました。

これまでも、遺贈というかたちで、財産を故人の遺志に沿うように活用することはありました。しかし、寄付と生前葬を組み合わせることで、生きている間に、本人の意志 (遺志) をよりダイレクトにかたちにすることが可能になります。さらに、実際にどのようにその思いが実現されていくのかを、本人が見守ることができるという点も、魅力です。

会に参加した方々からは、「これから歩む人生で、こういうお金の使い方もあるのだと、参考にさせていただこうと思います」といった声もありました。


角方正幸さん「謝縁会」の流れ

ウェルカム・ドリンク

セレモニーの部

オープニングビデオ上映

開会のご挨拶

人生の軌跡のビデオ上映

“恩送り基金”創設のご披露と趣旨説明

ゆったりと宴の部

ご来賓スピーチ

乾杯

ご歓談

皆様からのメッセージ「角方さんといえばコレ!」

お礼のご挨拶

エンドロール上映

お見送り

日本初開催!生前葬と寄付をコラボした謝縁会
ご縁をいただいた皆様と旧交を温める機会

展示

秘蔵の写真アルバム

歴代の手作り年賀状

放送大学「多様なキャリアを考える」での講義(VTR)

著作など

日本初開催!生前葬と寄付をコラボした謝縁会
角方さん秘蔵の写真アルバム

結婚式にこだわった世代に、生前葬がおすすめな理由

今回、謝縁会のコーディネートを担当した河田淳鼓さん( パーティコーディネーター、TIPA CREA代表)は、生前葬である謝縁会について、「 結婚式はこれまで育ててくれた方、応援してくださった方に感謝を伝える会です。謝縁会はこれまでご縁のあった方に感謝を伝え、自分の想いを次世代に残していくもので、感謝を伝える面ではウェディングに通じます」と言います。

今回の謝縁会では、角方さんご自身も、お招きした方々に感謝を伝えるにはどのように伝えればいいのか、一緒になって考えたそうですが、こういうことは亡くなってからではできないこと。今後、結婚式をオリジナルで行った世代が自分の最期を考えるようになると、こうした生前葬も増えていくかもしれません。


まとめ。新しいかたちの生前葬とは?

寄付や基金というと日本ではまだ、あまりなじみのない言葉ですが、公益財団法人パブリックリソース財団の理事長久住剛さんは、メモリアル基金と合わせて誰もが手軽に生前葬を行うことができるといいます。

これまでの葬儀やお別れ会、生前葬では本人のイベントとして終わってしまいますが、今回の謝縁会のように、基金を残すことで、本人の命は絶えても、その思いは世代を超えて続いていきます。もう一つ終活のかたちとして、生前葬と寄付を考えてみてはいかがでしょうか?

日本初開催!生前葬と寄付をコラボした謝縁会
みずみずしい緑の葉を広げたシンボルツリー

(取材・文:小林憲行)

日本初開催!生前葬と寄付をコラボした謝縁会