2016年、年初から毎月のように報じられてきた“不倫”。確かに、現実世界における不倫は家庭内のトラブルなど様々な問題を引き起こしかねない。
2016年9月28日、こうした不倫ブームに便乗(?)したコンピレーションCD『禁じられた愛の唄』が発売された。正面からこのテーマに取り組んだ邦楽コンピレーションは史上初と言えるだろう。
本作には、「シンデレラ・ハネムーン」(岩崎宏美)、「ブルースカイ ブルー」(西城秀樹)といった歌謡史に輝く人気曲から、「年下の女」(森進一)、「越冬つばめ」(森昌子)、「愛人」(テレサ・テン)、「天城越え」(石川さゆり)といった長くカラオケで愛唱されている演歌まで、ほぼ発売順に収録されているので、不倫ソングの歌謡史をたどる上でも貴重な資料となっている。
また、作家別にも、阿久悠(シンデレラ・ハネムーン、ブルースカイ ブルー、悦楽の園)、吉岡治(さざんかの宿、天城越え)、なかにし礼(ホテル)、荒木とよひさ(愛人)、有馬三恵子(他人の関係)、湯川れい子(あゝ無情)、秋元康(海雪)、松尾潔(Ti Amo)、谷村新司(ガラスの花)、高見沢俊彦(し・の・び・愛)などなど、錚々たる面子の日本を代表する作詞家やシンガーソングライターが“禁じられた愛”の歌詞を綴っている。
実際に歌詞を具体的に紐解いてみると、“禁じられた愛”にも様々な愛の形があることも分かる。
1.迷いながらも“禁じられた愛”に溺れていくタイプ
「ホテルで逢って ホテルで別れる 小さな恋の幸せ」
(「ホテル」立花淳一)
「日ぐれにはじまる/夜ふけに別れる シンデレラ・ハネムーン」
(「シンデレラ・ハネムーン」岩崎宏美)
「帰る場所がある あなたのこと 好きになってはいけない わかってた」
(「Ti Amo」湖月わたる(カバー))
2.迷いの境地を抜け、“禁じられた愛”を容認するタイプ
「あなたが好きだから それでいいのよ たとえ一緒に街を歩けなくても」
(「愛人」テレサ・テン)
「そうよ はじめての顔でおたがいに またも燃えるの」
(「他人の関係」金井克子)
3.自分が本命でないと知り“禁じられた愛”に戸惑うタイプ
「隠しきれない移り香が いつしかあなたに しみついた」
(「天城越え」石川さゆり)
「本音をいえば 結婚したい まさか愛してる」
(「あゝ無情」アン・ルイス)
4.既婚女性との“禁じられた愛”を想う(あるいは回想する)タイプ
「愛しても愛しても あゝ他人(ひと)の妻」
(「さざんかの宿」大川栄策)
「あのひとの 指にからんでいた ゴールドの指輪を ひきぬき」
(「ブルースカイ ブルー」西城秀樹)
このような楽曲からヒットが多い理由を、音楽市場アナリストの臼井孝(T2U音楽研究所)は、「禁じられているからこそ生じる切なさややるせなさ、許されないからこそ生じる燃えたぎる愛、またそれを傍で感じる立場にある人の狂おしさや嫉妬など、様々な感情がリアルに描かれています。また、逆境の中でも愛を貫こうとする点で、ある種“純愛の極み”とも言えるかもしれません。だからこそ、共感を憶える人が多いのではないでしょうか」と語っている。
2016年9月28日(水) 発売
『禁じられた愛の唄』 (オムニバス)
VICL-64646 CD 全18曲収録 定価¥1,800(+税)