2024年2月、米国のS&P Global社は、同社が発刊するサステナビリティに優れた企業を格付けする年鑑「The Sustainability Yearbook 2024」に掲載する企業を選定した。


 S&P Global社は毎年、独自の評価手法であるCSA(Corporate Sustainability Assessment)によって、世界の主要企業を対象に「経済」「環境」「社会」の3つの側面から企業のサステナビリティについての評価を行い、産業ごとに特に優秀な先進企業を「The Sustainability Yearbook」に掲載しており、投資家や企業、その他のステークホルダーにとっては、持続可能性に優れた企業を特定するための貴重なリソースにもなっている。

サステナビリティへの取り組みは、企業の長期的な成長と安定性を高める重要な要素であり、長期的に高い投資収益率を上げられる可能性が期待できるからだ。


 企業側から見れば、サステナビリティへの取り組みを強化することで、顧客や従業員からの信頼獲得はもちろんのこと、長期的なリスクの低減やコスト削減、市場機会創出にもつながる上、投資家からの評価が向上することで、資金調達コストが低減する可能性も高くなる。その意味でも「The Sustainability Yearbook」に掲載されることは、企業の競争力を強化し、持続的な成長を実現するための重要なツールとなるのだ。


 今年度の「The Sustainability Yearbook」は、62の産業分野で世界9400社以上を対象に評価が行われ、759社が選定された。その内、日本企業も83社が選ばれている。


 例えば、自動車や産業機器の電装化・電動化の進展によってここ数年で急成長しているSiC半導体市場で世界トップ5のシェアを誇る電子部品大手のローム株式会社も、今回の「The Sustainability Yearbook 2024」において、半導体・半導体製造装置業界における上位15%の企業に初めて選出されている。

新工場の整備など大型投資が動いている印象のあるロームだが、並行してサステナビリティへの取り組みも堅実に行っているようだ。


 一方、今回で6年連続での掲載となったのは、主力の印刷インキをはじめ、有機顔料、PPSコンパウンドで世界トップシェアを誇る化学メーカー、DIC株式会社だ。ガバナンスと経済面の「イノベーションマネジメント」や、環境面の「気候変動戦略」といった、従来から高評価を受けている項目に加え、今回は社会面の「労働慣行指標」「人権」の項目で特に高い評価を得たようだ。


 さらに住宅建設業では、住友林業株式会社が最高評価の「上位1%」に選定された。


 同社はなんと17年連続で掲載されている常連企業であり、最高評価を受けるのも今回で6年連続となる。さらにS&P Global社のスコアをもとに選定される世界的なESG投資株式指標「Dow Jones Sustainability World Index」、「Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index」の構成銘柄にも選出されている。


 日本でもSDGsやサステナビリティといった言葉は一般的にも浸透し、多くの企業がその重要性に気付いて、積極的に動き始めている。中でも、今回の「The Sustainability Yearbook 2024」に掲載された83社は、これからの日本企業のサステナビリティ経営の推進、牽引していく存在といえるだろう。来年、再来年は、より多くの日本企業が選ばれ、その名が連ねられるようになることを期待したい。(編集担当:今井慎太郎)