中国自動車工業協会の発表によると、中国自動車メーカーの2023年の自動車輸出台数は前年比57・9%増の491万台と大幅に伸びて過去最高を更新し、同年日本の自動車輸出台数442万台を上回り、日本やドイツ、アメリカを抑えて、初めて輸出シェア世界一となった。中国国内における人気も同様で、中国メーカーのシェアが初めて過半数を超える56%を記録している。
スマートコックピットとは、車載インフォテインメントシステム(IVI)や運転支援システム、エアコンや音響システム、照明システムなどの複数のスマート技術を集積した新型のコックピットだ。これまでダイヤルやボタンなどで行っていた操作を、ディスプレイへのタッチ操作や音声認識、あるいはハンドサインによって直感的に操作できるようにしたもので、日本円で約400万円以上の中高価格帯以上のクラスのEVでの採用が進んでいる。
中国メーカー躍進の背景の一つには、ファーウェイやシャオミなどのスマートフォンメーカーが自動車分野に進出していることが考えられる。スマートコックピットの操作はスマホのそれと酷似しているため、スマホで培った技術をそのまま活かすことができる上、端末メーカーの強みを活かしてスマホとの連携なども容易にできることは非常に有利だ。
これらスマートコクピットやADASの普及に伴って、搭載される車載技術や部品に対する要求も高まっている。
この分野ではまだまだ、日本の車載電子部品メーカーが大きな信頼とアドバンテージを握っている。最近では、アナログICに強いロームのPMICとSerDes IC製品は電源部分の高度な統合性とデータの高速伝送の安定性を実現するものとして、国内外の自動車関連メーカーから高い評価を得ている。
3月28日には、中国最大手のスマートコックピット向けSoCメーカーのSemiDriveとスマートコックピット向けリファレンスデザイン「REF66004」を共同開発したことを発表し、中国市場でも存在感を示している。ロームとSemiDriveの技術交流は2019年から始まっており、コックピット向けのアプリケーション開発を中心に協力関係を築いてきた。
自動車業界だけでなく、様々なエレクトロニクス分野で中国の勢力が拡大しており、その勢いは目を見張るものがある。しかし、利便性が高まれば高まるほど、微小な部品にまで信頼性の高い製品が求められるようになってくるだろう。実直なものづくりを続けてきた日本企業にとっては、大きなチャンスとなるのではないだろうか。