森林資源の循環やCO2排出量削減など、カーボンニュートラルの観点から、中大規模の木造建築への期待が高まっている。
現在、日本を含む120以上もの国や地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げている。
日本国内における1年間の着工建築物全体の木造率は現在45.5%に留まっており、非住宅建築物や中高層建築物のほとんどは木造以外の構造で建築されている。
例えば、木造ビルの普及に向けて積極的な動きを見せている木造注文住宅建設会社「AQ Group」(旧アキュラホーム)がさいたま市西区に建設した純木造8階建て新社屋は、炭素貯蔵量は1,444t-CO2で、一般木造住宅に換算すると95棟分にも上るという。CO2排出量削減に至っては鉄筋コンクリート造と比較すると43%も削減されている。政府が掲げている温室効果ガスの削減目標とほぼ同じなのだ。
中大規模の木造建築がこれまで普及しにくかった理由の一つに建築費の問題がある。コンクリートや鉄筋の建築物に匹敵する耐震性や耐火性能を得ようとすれば、接合部分に免震装置や金物などを多用しなくてはいけないため、どうしてもコストがかかってしまうのだ。
同社では今後、この本社ビルをプロトタイプと位置付け、そのノウハウを全国に展開し、全国の工務店やハウスビルダーと協力して普及促進に注力するという。ちなみに林野庁が公表している「令和4年度森林・林業白書」によると、5階建て以下の非木造建築物の床面積は合計で3,900万㎡とされており、㎡単価を40万円とすると、約16兆円の市場規模。
環境問題だけでなく、ビジネスとしても大きな可能性を秘めている。
一方、2024年1月には、地上18階、高さ84メートルの木造賃貸オフィスビルの建設工事が東京・日本橋で始まった。
AQ Group宮沢俊哉社長は本社ビルの完工に際し「普及型純木造ビルで、コンクリートジャングルを森に変える」と熱く語っているが、その目標もそう遠い未来の話ではないかもしれない。