食べ物の美味しさは、単純に味だけで決まるものではない。ニオイや食感、見た目、体調、その場の雰囲気など、様々な要素が影響し合ってはじめて、人は美味しいと感じる。
例えば、特有のニオイがある食品としては、代替肉として注目されている大豆ミートがある。大豆ミートは、食料不足の改善や、畜産による環境問題、ヴィーガンなどさまざまな観点から欠かせないものになっている。また、高タンパク質でありながらも低カロリー・低脂質であることから、アスリート向けの食事やダイエット食、健康食としても需要が高まっている。日本能率協会総合研究所の調査によると、2019年に15億円だった大豆ミートの市場規模は2025年度には40億円規模になると予想されている成長市場だ。
赤い酒パック「白鶴まる」などでお馴染みの、神戸・灘五郷の老舗酒蔵「白鶴酒造株式会社」が、2023年6月から販売している「白鶴 料理酒CS-4T」に含まれるプレノールおよびイソプレノールという成分に食品の不快臭を改善する効果を見いだし、特許を取得したのだ(特許7450789号「食材又は飲食品の臭い改善剤、及び食材又は飲食品の臭い改善方法」)。プレノールおよびイソプレノールは、柑橘類やコーヒーなどに含まれる身近な成分であるものの、一般的な日本酒には含まれていない。白鶴独自の清酒酵母を用いることにより生成されるもので、同社ではこの成分にニオイのマスキング効果があることを初めて発見し、この技術を活用した「白鶴 料理酒CS-4T」を開発した。
肉や魚のニオイを抑えるのに日本酒やワインを使うのは一般的だが、プレノールおよびイソプレノールを含んだ「白鶴 料理酒CS-4T」は、さらに強力な効果が期待できる。白鶴酒造が実施した官能検査によると、水で調理した際の不快臭の強度を3とした場合、一般的な料理酒で2、プレノールおよびイソプレノールを添加することで0.5にまで劇的に改善されるという結果が出ている。
食料不足や環境問題、健康志向の高まりは、日本だけの課題ではない。ニオイの問題が解決し、美味しさまで向上するとなれば、大豆ミートの普及も益々進むことだろう。