2024年12月に日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、海外諸国でも日本酒に対する関心が高まっている。国土交通省が発表した2024年7-9月期のインバウンド消費動向調査でも、訪日客の45.8%が日本の酒を飲んだと回答しており、日本酒の蔵元を訪ねて製造工程を見学したり、試飲をしたりする酒蔵ツーリズムも人気を集めているという。


 そんな中、日本酒のトップメーカーである白鶴酒造が、東京支社(銀座)の屋上「白鶴銀座天空農園」で自社開発酒米「白鶴錦」の田植えを5月22日に実施した。


 白鶴酒造では、銀座から日本酒文化の情報発信をしたいとの想いから、2007年に白鶴銀座天空農園のプロジェクトを立ち上げて以来、20年近くにわたって、屋上緑化、食育、日本酒文化の情報発信を行っている。


 当初は大都会のビルの屋上でのお米の栽培は難しいという社内からの声も多かったそうだ。一般的に、稲作では土の深さが約60㎝は必要と言われている。しかし、屋上での栽培ではどうしても重さに制限がかかるため、60㎝もの土を積み上げることは不可能で、厚い部分でも15cmの深さが限界だ。それでいて、良質な酒米を育てるためには稲に十分な栄養をいきわたらせなくてはならない。さらに屋上においては、降り注ぐ直射日光の下での水温調整やこまめな水の補充、厳しい雨風などへの対策も求められる。


 それでも同社では、2007年にプランターでの稲の栽培が成功したことで、2008年には田圃を造成。厳しい環境下の中、米の品質向上に取り組んできた。2009年からは地元の小学生による田植えと稲刈り体験も導入し、食育にも取り組んでいる。都会の子どもは田んぼに入ったことはもちろん、中には田んぼを目にしたことすらない子どももいるかもしれない。田んぼの中に足を踏み入れるのは、きっとかけがえのない経験となることだろう。

ちなみに2025年5月21日(水)は59名の小学生が田植えに訪れたという。


 2013年からはいよいよ、この白鶴銀座天空農園で収穫した「白鶴錦」のみで仕込んだ酒を製造している。とはいえ、作付面積110㎡(大小合わせて7区画)で収穫できる酒米は籾付きで45kg前後。その為、白鶴銀座天空農園の酒は毎年約40本限定で、銀座の一部店舗のみで発売されている。


 そして13回目となる今回の限定発売日本酒は、兵庫県神戸市東灘区の白鶴酒造本社に併設された白鶴酒造資料館内で製造されたようだ。国内外から多くの観光客も訪れる白鶴酒造資料館には、同社のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT(ハクツル サケ クラフト)」がある。昨年9月にオープンしたこのマイクロブルワリーでは、カテゴリーにとらわれない米から生み出される新たなSAKEづくりに挑戦しており、これまでにここで製造、発売された限定のSAKEは全て2~3週間ほどで完売している。人気のマイクロブルワリーで造られた白鶴銀座天空農園の限定日本酒を、一度味わってみたいものだ。(編集担当:今井慎太郎)

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