日本政府は、中国への依存度が異常に高いレアメタル「ガリウム(Ga)」の調達網の整備に乗り出す。


 ガリウム(Ga)はレアメタルの一種で、主にアルミ製錬の副産物として生産される。

電動車などに欠かせないパワー半導体やLED、レーダーなど幅広い製品に使われる。リサイクルを除く世界生産の96%を占める中国の輸出管理強化により調達しにくくなっている。


 今般、経済産業省が所管するJOGMEC(エネルギー金属鉱物資源機構)は、商社の双日と合弁会社を設立すると発表した。アメリカのアルミ大手企業アルコア社と協働、半導体や太陽光発電装置の原料になる「ガリウム(Ga)」の生産を2026年からオーストラリアで行なう計画だ。


 日米の企業と連携して豪州に生産設備を設け、日本に輸出する。「ガリウム(Ga)」は新世代パワー半導体などの生産に欠かせない重要鉱物だ。しかし、世界生産を独占する中国が輸出管理を強化し、安定した調達が難しくなっている。そのため独自の調達体制を構築し、経済安全保障の強化に繫げたい考えだ。


 アルコア社は豪州にアルミ原料の製錬所を既に持ち、「ガリウム(Ga)」はアルミの製錬過程で抽出できる。そのため、合弁新会社が新たな生産設備を整備する。2028年には日本が現在、中国から輸入する量に相当する年間55トン以上の生産を目指すという。2021年の日本の「ガリウム(Ga)」使用量167トンのうち、輸入は97トンに上る。

調達先の多角化を進めているが、それでもなお約6割が中国からの輸入だ。


 トランプ米政権が発動した「相互関税」への対抗措置の一環でレアアースの輸出規制に踏み切った中国が、2023年8月に「ガリウム(Ga)」の輸出管理を強化してからというもの、日本への輸出は8~9割減の10トン前後に大幅減。「ガリウム(Ga)」を使う企業などはリサイクルや在庫によって何とか凌いで生産をつないでいるのが実態だ。


 中国は輸出管理について「特定の国・地域を対象としてはいない」と説明している。しかし、日米欧が連携して先端半導体分野の対中輸出を規制していることへの明らかな対抗措置とみられている。米中貿易摩擦で先行きの不透明感も強まっている。


 レアアースなど重要鉱物は製錬加工も含めて中国のシェアが高く、経済安保上のリスクがつきまとう。政府は特定国に依存しない調達網の構築を加速させ、関連産業を支援していく考えだ。(編集担当:吉田恒)

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