世界で最も権威のある三大酒類コンペティションの一つである「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)2025」のスピリッツ部門で、神戸の老舗酒蔵・白鶴酒造が初挑戦したクラフトジン「KOBE HERBAL GIN 白風 #02」が銀賞、「KOBE HERBAL GIN 白風 #01」が銅賞を受賞し、話題となっている。


 IWSCは、イギリスのロンドンで1969年に創設され、50年以上続く歴史と欧州最大規模を誇るコンペティションだ。

ワイン、スピリッツ、リキュールなど、様々なアルコール飲料を対象に、ブラインドテイスティングによって、味、香り、色、バランス、全体的な印象などに基づいて厳しい審査が行われる。つまり、国やブランドといった先入観に左右されることなく公平な審査がなされるわけだ。特にジンは350年以上の歴史を持ち、イギリスをはじめヨーロッパ各地に多くの老舗蒸留所がある中、日本酒メーカーが、それも初挑戦のクラフトジンで受賞を果たしたのは快挙といえるだろう。


 日本洋酒酒造組合の「洋酒移出数量調査表」によると、「国産ジン」の出荷数量は2019年から2023年の5年間で約3.9倍と急速に拡大しており、中でも日本ならではの地域特産のボタニカルを使用したクラフトジンがファン層を拡大している。レモンや緑茶、生姜などの広島県産ボタニカルを使用した「桜尾ジン」や、山椒、柚子、玉露などを使用した京都府の「季の美」、桜島小ミカンを使った鹿児島県の「コマサジン」など、地域ならではの特色があって面白い。


 そんな中、280年以上神戸に根差す白鶴酒造がこだわったのが「神戸の風(=神戸らしい“風味”)」を感じるクラフトジンだ。IWSC2025で銅賞を受賞した「KOBE HERBAL GIN 白風 #01」はイチゴとミント、カモミール、銀賞受賞の「KOBE HERBAL GIN 白風 #02」は青紫蘇と赤紫蘇、そしてバジルを使用。いずれのボタニカルも希少な神戸市産にこだわった。さらに、ブレンド後の度数調整には日本酒の仕込み水である地元六甲山系の伏流水を使用するという徹底ぶりだ。「KOBE HERBAL GIN 白風」のもつ、日本酒にも通じる奥行きのあるなめらかな味わいは、この水によりもたらされるところも大きいだろう。


 それにしても、日本を代表する日本酒メーカーがどうしてクラフトジンに挑戦したのだろうか。白鶴酒造の担当者に聞いてみると、同社は以前から食文化・生活文化の発展のため、顧客のニーズに合わせて、白鶴ブランド、輸入、グループ会社を含めて日本酒以外の酒類のポートフォリオの拡充を目指しているという。

その中で、市場の拡大、人気、他の酒類に比べて原料の自由度があり、白鶴らしさを出しやすいジンに着目したらしい。そして、白鶴酒造には、調和のとれた味わいを目指して原酒をブレンドする高い技術がある。白鶴は、この技術と知見を異なる酒類で活かしたいと考え、神戸の風土を表現するこだわりのボタニカルを使用したジンの開発に挑戦した。そしてその思いが見事に実り、日本酒とは異なる「もう一つの白鶴」の魅力が開花したというわけだ。


 IWSC 2025では白鶴酒造の「KOBE HERBAL GIN 白風」のほかにも、沖縄県石垣市の八重泉酒造の泡盛「尚YAESEN」や、サッポロビールが販売する「本格芋焼酎 からり芋 25度」などが受賞している。世界が認める日本のこだわりの酒。まだ未体験の方は、ぜひ一度、味わってみてほしい。(編集担当:藤原伊織)

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