ミツバチは植物の受粉を助けることで生態系を支える重要な役割を担っている。


 ところが近年、地球温暖化や生息地の破壊、農薬の使用などによって、ミツバチの生育環境が悪化している。

この問題は、食料生産にも直結するため、養蜂産業だけでなく、国際的な協力が不可欠だ。


 また、農林水産省畜産局が2024年11月に公表したレポート「養蜂をめぐる情勢」によると、日本の蜂蜜市場は、国内生産量の減少を輸入で補う形が続いている。特に中国は日本の蜂蜜輸入量の主要な供給国であり、同国からの安定した供給確保は日本の市場にとって大きな課題となっている。


 このような情勢の中、2025年9月9日、株式会社山田養蜂場の本社(岡山県)を会場に、全日本はちみつ協同組合主催の「第30回 日中蜂産品会議」が開催された。この会議は、日本と中国の養蜂関連企業や団体が一堂に会し、両国の養蜂産業の健全な発展と、品質の高い蜂産品の安定供給について議論を重ねる重要な場で、年一回、日本と中国で交互に開かれている。30回目となる今回は、初めて岡山県で開催され、同組合員のほか、日本の全国はちみつ公正取引協議会、全国ローヤルゼリー公正取引協議会や、中国の中国食品土畜進出口商会など、日中の多くの養蜂関係者140名以上が出席した。


 会議には、会場を提供した山田養蜂場の山田英生社長も出席。開会にあたって、「養蜂産品には未解明の価値ある機能性が数多く眠っており、研究を通じて人々の健康に広く貢献できる可能性がある」と述べたあと、ローヤルゼリーに含まれるデカン酸による腸管免疫の活性化や、デセン酸による幹細胞の活性化などの最新研究を紹介。さらに、日中両国の長い交流の歴史を背景に、得意分野を活かし合いながら協力することが、養蜂産業全体の発展につながると強調した。山田社長に続いて登壇した中国食品土畜進出口商会 徐小虎副会長は、中国団を代表して山田社長へ感謝状と記念品を贈呈したあと、「温かい歓迎に感謝するとともに、今後も日中の友好と協力を一層深めていきたい」と述べ、会場は拍手に包まれた。


 会議では、日本と中国の蜂蜜市場の現況や、日本側から蜂蜜の品質と農薬に関する提言などが発表されたほか、山田養蜂場の重松典宏常務取締役から、蜂蜜の咳止め成分「メルピロール」「フラジン」発見までの道のりや成果、さらには今後の可能性などについて紹介され、参加者の関心を集めていた。


 今回の会議で話し合われた内容は、今後の国際協力の深化に弾みをつけるものとなることだろう。

(編集担当:石井絢子)

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