2026年2月8日の衆院選投開票を目前に控え、各党の論戦は最終局面を迎えている。今回の選挙における最大の焦点は、長期化する物価高と「実質賃金マイナス」という構造的課題に対し、政治がいかなる解を示すかにある。

厚生労働省の統計によれば、名目賃金の伸びを物価上昇が上回る状態が続いており、家計の購買力低下は深刻だ。これに対し、高市政権を支える自民・維新の連立与党と、対抗する野党各勢力は、日本経済のエンジンを「供給サイド」から回すのか、それとも「需要サイド」を直接温めるのかという手法を巡って、真っ向から対立している。


 自民党および閣外から政権運営を支える日本維新の会は、高市首相が掲げる「成長によるパイの拡大」を経済政策の基軸に据えている。自民党は、半導体やAIなど戦略分野への巨額投資を通じて「高付加価値雇用」を創出することを強調し、賃上げ税制の拡充や所得税の定額減税延長によって、企業の自発的な賃上げと個人の手取り増加を狙う。与党パートナーである維新もまた、連立合意に基づいた規制緩和と中小企業の生産性向上を支援することで「構造的な賃上げ」を目指す方針だ。これら与党勢力は、成長の果実を再分配へと繋げる循環を重視しており、積極財政の継続を前提としている。


 これに対し、独自路線で注目を集めるのが国民民主党、参政党、そして日本保守党だ。国民民主党は、先行して実現に道筋をつけたガソリン減税に続き、次なる本丸として所得税の基礎控除等を103万円から178万円へと大幅に引き上げる「年収の壁」の撤廃を最優先に掲げる。インフレ局面において現役世代の負担を直接軽減し、消費を活性化させる戦略だ。参政党は「日本人を豊かにする」として、消費税廃止とインボイス制度の撤廃、さらに国民負担率を35パーセントまで引き下げる大胆な減税策を提唱している。そして日本保守党は、酒類を含む食料品の消費税率を恒久的に0パーセントにすることに加え、電気料金を押し上げている「再生可能エネルギー賦課金」の廃止を明記した。同党は、省庁や海外拠出金などの大胆な歳出整理を減税財源に充てる実務的な保守路線を強調している。


 最大野党の中道改革連合もまた、2026年秋からの「食料品消費税ゼロ」の恒久化を提唱している。しかし、その財源として政府系ファンド「ジャパン・ファンド」の運用益などを充てる構想には、厳しい指摘も絶えない。食料品を非課税にするための減収分は年間約5兆円と試算されるが、これを年利3.0パーセントの運用益で賄うには約167兆円もの巨額の運用原資が必要となる。1,000兆円を超える公的債務を抱える中での原資調達は、さらなる国債発行を意味し、金利上昇局面における「逆ざや」のリスクを孕む。安定財源を変動の激しい運用益に委ねる手法には、持続可能性の観点から「机上の空論」との懸念も根強い。


 一方、独自路線を歩むチームみらいは、減税に依存しない「人への投資」を軸とし、教育・子育ての完全無償化によって将来不安を解消するアプローチをとる。また、共産党、れいわ新選組、社民党などの左派勢力は、消費税の5パーセント減税や廃止に加え、最低賃金の全国一律1,500円以上への引き上げを法律で強制し、大企業の内部留保や法人税の累進強化を財源とする「抜本的な分配構造の変革」を求めている。


 明日の投開票は、単なる政党の選択を超え、日本がどのような「経済のあり方」を次世代へ引き継ぐのかという、静かな決意を固める場となるだろう。永田町で語られるマクロ経済の理論や、一見すると鮮やかな財源構想と、私たちがスーパーの店頭で感じる物価高という日々の切実な感覚。この二つの距離を埋めるのは、決して魔法のような解決策ではなく、地に足の着いた着実な対話の積み重ねに他ならない。


 激動の時代において、どの未来へ確かな一歩を刻むのか。日本が歩むべき道を決定する審判は今、有権者一人ひとりの手の内にある。

(編集担当:エコノミックニュース)

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