今、電子工作が密かなブームを呼んでいる。電子工作といえば、男の子なら誰しも一度は夏休みの自由研究などで、少年の頃にチャレンジした思い出があるのではないだろうか。
その理由は、電子部品を取り巻く世界が昔よりも格段にオープンになったからだ。
昔は、素人が電子部品を手に入れようとすれば、アキバのような電気街か専門店に行かなければ難しかった。でも、今はインターネットで検索すれば、最新の電子部品がすぐに見つかる。しかも、部品のレビューや組み立てのノウハウなども、専門書を買わなくても、スマホをタップするだけで詳しく調べることができる。興味さえ持てば、初心者でもハードルは低い。さらに近年ではRaspberry Pi(ラズベリー パイ)などのシングルボードコンピュータや各種センサデバイス、3Dプリンタなどの登場によって、個人でも自宅で商品レベルのプロトタイプを開発し、ビジネスに発展させることも夢ではなくなってきた。
そして、そのメイカーズムーブメントを盛り上げてるのが、京都の半導体・電子部品メーカーのローム〈6963〉が主催する「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」だ。
ROHM OPEN HACK CHALLENGEは、ローム製のセンサやマイコンボードを使用するモノづくりコンテストだ。人々のくらしを快適・便利に、そして楽しくする可能性をもったアイデアがプロトタイプ作品として制作される。毎年、様々な地域から、幅広い年齢層や、職業の人々が入り乱れて、アイデアと情熱を武器に熱い戦いが繰り広げられている。
最優秀賞に選ばれると、賞金以上に嬉しいご褒美がある。それは、何とあの、毎年10月に幕張メッセで開催される、CPS(サイバーフィジカルシステム)/IoT(Internet of Things)をメインテーマとしたアジア最大級規模の国際展示会「CEATEC」のロームブースで作品を展示してもらえるのだ。しかも日本最大級の開発コンテスト「ヒーローズ・リーグ(元:MashupAwards)」や、日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN」でのシード権まで獲得できる。たとえアマチュアや学生でも、一気に開発者の仲間入りが果たせるとともに、上手くいけば大きなビジネスチャンスも見えてくるかもしれない。
ちなみに今年の「ROHM OPEN HACK CHALLENGE 2019」は9月21日に最終審査会が催され、一次審査を見事通過した15チームが、プレゼンテーションと展示を行った。
カラーセンサでマシュマロの焼き具合をみる装置や、ヘルスケアロボット、電池不要の無線モジュールを組み込んだピアノ、本の開閉時間がわかるデジタルしおりなど、集まった作品はどれも個性的で多様性に富んだものばかり。その中で、見事に最優秀賞を勝ち取ったのは、 チーム・未来ゴミ箱による「未来ゴミ箱」と、 チーム・XMAKERSの「musime」だった。
「未来ゴミ箱」は、「公共の場にゴミ箱が少ないのは維持費が高いから」という課題を解決するべく考案されたもので、ゴミを捨てたい人のところへ自走し、LINEpayで決済すると蓋が開いてゴミを捨てられるという、維持費を自分で出稼いでくれるゴミ箱だ。ローム製Sensor Shieldの近接センサによって、ゴミ箱の満タン度合いを検知し、自ら捨てに行くという機能も備わっている。プロトタイプとしての完成度はもとより、コンセプトの斬新さと面白さ、そしてゴミ箱以外にも活用できる、その拡張性の高さも審査会では評価されていた。
一方、「musime」は、なんと「虫になりきれる」おもちゃだ。操縦者の足に加速度センサをつけると、その動きが無線(Sub-GHz)で虫型ロボットに送られ、動く。
他にも優秀賞には、はんこをIoT化し、押印エビデンスを残せる「IoTはんこ(チーム・若狭企画)」や、おもちゃにセンサをつけ、照度や気圧の数値から、子供がどのおもちゃでどのように遊んでいるかを可視化する「おもちゃのキモチ (チーム・おもちゃのキモチ)」、スマート帽子とバルーン型ドローンによる新感覚ゲーム「Magical Hat & Balloon(チーム・Skilled Workers)」などが選ばれた。残念ながら受賞には至らなかった作品も含め、どれもこれも既成の枠にとらわれないユニークで夢がありながら、実用的なものばかりだった。
これらの受賞作品は、10/15(火)?10/18(金)幕張メッセにて開催されるCEATEC 2019のロームブースで展示されるというので、ぜひ体験したいところだ。
こうしたイベントはモノづくりを実際にやっている企業が企画するからこそ面白い。もしも、夏休みの自由研究以来、電子工作の楽しみから離れていたとしても、アイデアと情熱さえあれば、企業のエンジニアですら思いつかなかったような作品をつくることができるかもしれない。子どもの頃のワクワク感を思い出して、チャレンジしてみてはいかがだろうか。(編集担当:藤原伊織)