昭和の時代の「電池」のイメージは、使い切りの乾電池だった。しかし、令和の時代はどうだろう。
スマートフォンやノートパソコンのバッテリーとしてもお馴染みのリチウムイオン電池など、充電すれば繰り返し使える「二次電池」を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
モバイル機器やスマートデバイスの普及、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の需要拡大、再生可能エネルギー分野での採用が増えていることなどで、二次電池の市場は急成長を続けている。株式会社グローバルインフォメーションが9月に発売した市場調査レポート「リチウムイオン電池の世界市場」でも、リチウムイオン電池の市場規模は、2030年には1,166億米ドルに達すると予測されている。これは2021年の411億米ドルと比較すると、わずか10年ほどで3倍近くの成長が見込まれているのだ。
また、近年は機器類が小型、薄型化していることからも、より安全で高密度な二次電池が求められる傾向にある。例えば、ワイヤレスイヤホンなどのウェアラブル機器や電子ペン、電子タバコなどである。そこで、メーカーでは電解部に新たな材料を用いた全固体電池や半固体電池、電極材料を変えた電池など、新型二次電池の開発が盛んになりつつあるようだ。
ところがここで一つ問題が出てきた。それは新型二次電池が、これまでのモバイル機器で主に使用されていた定格電圧よりもさらに小さい2Vから3Vクラスの低電圧充電を必要とする小型・薄型形状のものが多いということだ。電池から機器に充電するためには、それをコントロールする充電制御ICが必要になるが、低電圧に対応できるICが少なく、課題になっていた。
こうした中、日本の電子部品メーカー大手のロームが画期的な充電制御ICを開発し、注目されている。一般的な充電制御ICは充電電圧が固定されているが、同社が9月28日に発表した充電制御ICの新製品「BD71631QWZ」は、2.0Vから4.7Vまでの幅広い充電電圧範囲を実現した。
業者や専門家でもない限り、機器の内部に納められた二次電池の、しかもそれを制御するための電子部品など、見ることも、気にすることもないだろう。でも、そんな目に見えない部分での進化が、二次電池をより便利で安全なものとし、市場を急成長させている原動力となっているのは間違いない。ロームの新しい充電制御ICのサイズは、わずか1.8㎜×2.4㎜。厚さにいたっては0.4mmしかない。そんな極小の電子部品が世界の人々の生活を大きく変えていくのだと思うと、胸が熱くなってくる。(編集担当:藤原伊織)











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