【写真】麻雀を打っている時のような鋭い眼差しでインタビューに答える佐々木寿人
――まずはMリーグの個人タイトルと、所属チーム・麻雀格闘倶楽部のレギュラーシーズン突破、おめでとうございます。今期は開幕前から「プラス500ポイント稼いでMVPを獲る」と公言していました。まさに有言実行のシーズンでしたね。
佐々木 ありがとうございます。ただそう言っていたのも、単にMVPを獲りたいからというわけじゃなくて、「それだけ自分が稼げれば、チームがある程度の数字を持ってセミファイナルに進出できるだろう」という算段があったからなんですけど、ちょっと認識が甘かったですね。実際には700ポイントは必要だったかなと(苦笑)。
――そうですね、佐々木さん以外のメンバーの調子が上がらず、最終的にチーム成績はマイナスでした。今季の好成績は「俺がやってやる」という気持ちが原動力になったからですか?
佐々木 個人的に振り返れば、過去2年がとにかく出だしが悪かったんでそのあたりを意識しつつ、今年は出遅れることなく数字も順調に伸ばすことができた、という感じでしたね。あと、親番(※あがったときにもらえる点数と、あがられた時に支払う点数が高くなる)の時に連荘(※親番を続けること)でけっこう得点を稼げることが多かったのと、序盤に失点してもちゃんと取り返せる精度を高くキープできたのが良かった。Mリーグのルールでは4着を獲ったときのマイナスが大きいので、4着率がかなり低く抑えられたのも大きかったですね。牌がよく付いてきてくれたと思っています。チーム状況が上がらないなか、どうしても僕が「もっと頑張らないと」という思いで打つことも、たしかに多かったです。
――チームの不振は、佐々木さんに頼りきりの状況が続いて、残るメンバーの方も逆に気負ってしまう部分はあったかもしれませんね。
佐々木「悪いなあ」みたいな言葉を駆けられたことはよくあって、どこかで奮起してくれると思ってたけど、今季はそれがかなわなかった感じですね。
――やはりチーム戦の難しさ、というのは感じますか。
佐々木 こんなに長い期間をチームで闘うのはみんなMリーグが初めてですからね。成績によって精神状態も違って、例えばチームメイトの高宮まりは初年度にけっこう大きく負けちゃってて、精神的にダメージ負っちゃってるな、って時期があって。そういうところのフォローやカバーが難しいな、と思いましたね。自分の成績が悪い時もありましたけど、僕はメンタル強い方なんで何とかなるところもあるので(笑)。やっぱり結論としては、チームに複数人、ポイントを稼ぐ人間がいないと厳しい。
――たしかに今季終盤の各チームの闘い方を見ても、レギュラー突破のボーダーを争うチームは、佐々木さんを含め調子のいい選手の孤軍奮闘が目立ちました。
佐々木 理想は1位通過した渋谷アベマズみたいに全員が成績プラスしてることで。みんな調子よければチームの雰囲気もいいだろうし、いろいろ悩むこともないでしょうしね。セミファイナル以降は、レギュレーションで現状よりもポイント差が縮まるとはいえ、トップを獲りに行く積極的な麻雀に変えなきゃいけない。
――佐々木さんはこれまでタイトルをいくつも獲得されていますが、それでも「負け慣れている」と言い切れるのもすごいです。
佐々木 まあ、タイトル戦で優勝したことはあっても、そこに出た数、負けてる数の方が圧倒的に多いですから。そういう意味ではMリーグは、選手が企業と契約して、プロとしてお金が発生する場で、今まで僕らがやってきた麻雀とは違う責任が生まれている以上、「優勝以外は意味がない」とも思っています。今期の残り試合もファンの方を喜ばせるような麻雀を打っていきつつ、最後には優勝したい。
――トッププレーヤーとして、Mリーグをもっと盛り上げる、あるいは今まで以上に面白くするためにはどうすればいいと思いますか。
佐々木 チーム数や選手数はあんまり増えないほうがいいかな、と僕は思っています。もし増やすなら2リーグ制にするとか。週4回、1日2試合と言うのは、見てくださる方にとってもちょうどいいような気がします。
――その点では、Mリーグが連続して成績下位だったチームの選手入れ替えを義務付けたり、今シーズン4位通過のEX風林火山も、成績次第での選手入れ替えを示唆したりもしています。
佐々木 ファンの方がどう感じるか、という問題があるのでなかなか難しいですけど、でも画期的だと思いますね。トレードなんかも、少しずつ出てくると面白いかもしれない。麻雀好きな方の裾野は少しずつ広がっていると思うんです。麻雀教室をやっているようなプロも多いし、Abemaの生放送を、ゴールデンタイムのお茶の間で家族で見ているファンの方だっていると思うし。僕らが父親の見てる野球中継を見て選手の名前を覚えた、ということもあったじゃないですか。
――徐々にではあっても、麻雀の持つ良くないイメージも変わってきたんじゃないか、と。
佐々木 僕個人は、そういう教室で誰かに教えたりするのは苦手なので、プレーで訴え続けるしかないのかな、と思います。魅力があると感じてもらえるような麻雀を打ち続けるだけですね。
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