
元フジテレビアナウンサーの渡邊渚さんは2023年7月より休養し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の療養を行なっていた。2024年8月末にフジテレビを退社し、現在はフリーランスとして執筆、テレビ・配信番組のMC、モデルなど多岐にわたる活動を展開している。
独立後は野垂れ死ぬ不安もあった
――独立してから、いろいろなことがあったと思います。10ヶ月間を振り返ってみて率直に思うことは?
渡邊(以下同) 毎日違うことをしているなと感じますね。執筆や撮影、ロケの日もあれば、対談する相手の著書を拝読したり、すごく勉強しないといけない日もあります。でも活動範囲が広がったなと感じます。
発見もありました。フジテレビに入社した2020年はコロナ禍で、ロケに制限があったんです。パーテーションがないとこんなに声が聞き取りやすいんだと感じたり、スチールの撮影も含めて、最近改めてロケとは楽しいんだなということを知りました。
独立した当初は、仕事が来なくなり、1年後には収入がなくて野垂れ死ぬかもしれない。そんな怖さを感じていました。
独立直後くらいに来たのがフォトエッセイと写真集の仕事で、それ以外の仕事はもう来ないと思っていましたから。
――現在はMCを務められている番組もあったり、講演会や大学での講義など多くの仕事をされていますが、ご自身で仕事を引き受けるにあたって迷うことはありますか?
すごくありましたし、引き受けてからも、これでよかったのかなと葛藤することも多いです。
自分に仕事を頼んでいただける気持ちを大事にしたいし、もしその仕事に興味があるなら、そのチャンスをなかったことにするのはもったいないなと思って、できる限りお引き受けしてきました。
数ヶ月先のことさえ見通せない世界ですし、仕事があるのは今だけかもしれない、現在の生活をどのくらい維持できるだろうかと考えてしまいますね。
ただ、金銭的な不安はあるにしても、全体の幸福度は今のほうが高いかなって。体力的には半日活動するのが限界で、以前のように一日中寝ずに仕事をすることはもうできない。生活のバランスを自分でコントロールできるので、自分の体に合った働き方ができているのはよいことだと感じています。それにいろいろな仕事ができることは楽しいですし、日々、充実しています!
誹謗中傷は響きやすいものだけど
——仕事については、フォトエッセイやSNSなどで周囲の感謝への気持ちを多く表現しているのが印象的です。どのようなときに周囲の助けがあることを実感しますか?
毎日感じています。仕事を通じて友人のように仲良くさせていただいているかたも多いですし、周りに支えられて活動が成り立っています。
独立したとき、私のことなんて誰も見向きもしないだろうと本気で思っていたんです。
でも実際は、私に手を差し伸べてくれる人がいて、こんなに味方がいたんだなって。私のことを信じてくれる人たちが周りにいることに気づけたことは、独立してよかったことです。
——特に印象に残っている出来事はありますか?
オファーをしてくださるすべての仕事に真摯に向き合っています。
でもアナウンサー時代に仕事をしていたかたが「また仕事しようよ」と言ってくれて、実際に再び会って一緒に仕事ができたのは特にうれしかったですね。
自分のことが自分で信じられなくなってしまっていたので、アナウンサーとしての自分といまの自分と、変わっていないことを再認識できたのが嬉しかったです。
あとは、写真集のお渡し会の時に、女性のファンのかたから「誹謗中傷は響きやすいものだけど、ファンはみんな応援してるからね。負けないでね」と言われて、グッとくるものがありました。私は自信がない人間なので、応援してくれる人がいると思えると、頑張れる面があります。
今でも回収されるんじゃないかと怯えてる(笑)
——さまざまな意見が予想されるなか、2025年6月25日に発売した1st写真集『水平線』に挑戦しようと思った背景は?
いろんなことを言われることは覚悟していました。でも、今の自分を恥じてはいないし、ここ数年で一番自分らしくいられている。だから、そんな自分を残しておきたいと思ったんです。そして、信頼できるスタッフさんたちがいたので、全力でお任せしようと決めました。
——ロケはタイ・クッド島で4泊5日で実施されたとのことですが、印象に残っていることはありますか?
ハプニングが多かったです! フェリーの移動中に荷物がなくなることもありました。日本と違って、荷物にタグ付けする習慣がなくて、自分たちの荷物も自己申告しないと下ろしてもらえないんですよ。
しかも下ろした荷物が置かれる桟橋が木製でガタガタしていて、荷物が落ちて海に流れてしまうこともありました。
一日一回は何かしらハプニングが起きていましたね。でも、一日の終わりには必ずみんなで笑って終われるから、撮影を通してポジティブな気分になれました。
――写真集『水平線』は、ほぼレタッチ(修正・加工)がされていないと伺いました。
ほぼすっぴんみたいな感じで出ているページもあって、肌質もあまり隠していないから、自然な姿が見られるのはアピールポイントですね。素敵な衣装を用意していただき、キレイなメイクも施していただいたので、写真の加工はなくても十分だと感じています。
――とても素敵な写真集でした。
写真集を出版できなかったらどうしようと不安だったので、とにかくほっとしています。独立してからは自分の力が及ばないところで、決まっていた仕事が急になくなってしまうことも多かったので、写真集もそうならないか不安でした。
だから、店頭に並んでいるのを見たときは達成感がありました。けど、何が起こるかまだ怖いんです。今から回収されるんじゃないかって怯えています(笑)。
――それだけいろいろなことがあったと…。今後はどのような仕事をしていきたいですか?
写真集で一つの区切りがついたと思っていて、次の目標はこれから探していきます。いただいたお仕事はなるべく引き受けて、精一杯取り組みたいです。一度、終わったみたいな人生なんで、今はなんでもどんとこいです!
取材・文/福永太郎
写真/石田壮一
渡邊渚1st写真集 『水平線』
渡邊渚