ボクサー時代に“浪速のロッキー”として活躍し、俳優としてデビューしてからは31年間にわたって様々な話題作に出演してきた赤井英和。現在、妻の佳子さんのTwitterアカウント「赤井英和の嫁」にて、赤井の赤裸々な私生活やシュールなコメントが日々投稿され、SNS上で大きな話題となっている。


そんな赤井英和主演の最新映画『ねばぎば 新世界』が、7月10日(土)より新宿K’s cinema他にて順次全国公開される。若い頃にヤンチャをしていた主人公たちが、オッサンになってから再び立ち上がる物語だ。自身の人生とリンクするような今作、赤井のリアル実家でも撮影し、また地元の後輩たちも出演しているという。赤井に、今回の主演作について、また大阪への想いを聞いた。(前後編の前編)

【写真】俳優として活躍する“浪速のロッキー”赤井英和

──映画『ねばぎば 新世界』は痛快な娯楽作品ですが、随所に赤井さんの大阪に対する特別な思いが感じられました。

赤井 今は完全に東京を拠点に活動していますけど、やっぱり落ち着くんですよね、大阪に戻ると。なぜかと言うと、大阪の人っていうのは距離が近いから。商店街を歩いとったら、全然知らん人が「どこ行くねん?」「ちょっとそこまで」「気つけや~」みたいに話しかけてくるしね。いつもそんな感じだから気が楽!

──たしかに気さくな方が多いですよね。

赤井 新世界、あいりん地区、釜ヶ崎……このへんは自分が生まれ育った地元。そして勝吉(作品の中で赤井が演じる主人公)の実家は飛田新地にある。実を言うと、撮影に使ったあの家は私のリアルな実家なんです。


──遊郭をやられていたんですか?

赤井 いや、そういうわけじゃないんですけどね。たまたま場所が飛田新地にあるというだけで。もともとは釜ヶ崎の近くで普通に漬物屋をやっていたんですけど、地下鉄の立ち退きで引っ越さなくちゃいけなくなりまして。それで親父が何を考えたのか、いきなり遊郭の1軒を買って家族が住めるように改造したんです。だから映画に出てくる家で実際に僕はメシ食ったり寝たりしていたし、あの家の近所も毎日ブラついとった場所ですわ。

──そうしたディティールが作品のリアリティに繋がっているのかもしれません。

赤井 出演者には自分の知り合いも多いですしね。役者でもなんでもない単なる不動産屋の社長とか。そいつは私の大学時代の後輩なんですけど。人相が悪いからヤクザ役に向いているかなと思って(笑)。

──作品内で重要な役割を果たす串カツ屋さんも、赤井さんゆかりのお店だとか。

赤井 そうそう、「だるま」ね。
子供の頃から通っていました。新世界は串カツの街だから60軒くらいダーッと並んでいるんだけど、その中でもダントツで美味いのが「だるま」。当時は3畳くらいしかない本当に小さい店だったんですよ。ところがあるとき、大阪に戻って顔を出そうとしたら閉まっていたんです。

定休日でもないのにどうしたんだろうと思って大将に尋ねてみたら、目が悪くなったので店を畳むという話で。それが今から20年くらい前のこと。「娘も商売を継ぐ気はないし、なんなら赤井さんがやってくれないか?」みたいなことも言われたけど、こっちだって拠点が東京にありますから。

──それはそうでしょうね。

赤井 それで私が白羽の矢を立てたのが、高校のボクシング部で後輩だった上山勝也。彼は石油会社の取締役をやっていたので、「油繋がりでちょうどええやろ」って(笑)。そこからは精力的に事業拡大していき、東京にも店を出すわ、一時は海外進出するわで大活躍を続けておりますけどね。

──つまり『ねばぎば 新世界』は物語とはいえ、ノンフィクション的な要素もかなり強いということになりますか。


赤井 赤井英和の実人生が投影されているというかね。そのへんは上西雄大監督がよく描いてくれました。もちろん私だって仕事として勝吉という役を作っている部分はありますよ。思えば『どついたるねん』で役者デビューして31年、いろんな映画やドラマに出させていただきました。

そらNGや撮り直しは数知れずで、監督どころか共演者からダメ出しされたこともあります。ところが『ねばぎば 新世界』に関しては、すべてワンテイクでOKだったんです。それくらい自然に役をまっとうできたということでしょうね。

──ある意味、第2の『どついたるねん』と言えるかもしれません。

赤井 そうかもしれない。これが自分の代表作になればうれしいです。『ねばぎば 新世界』の勝吉はヤンチャだし暴力で物事を解決するようなところもあるけど、根本にあるのは正義の心なんですよ。あとは弱い者を守ろうとする精神。
相手が警察であろうが宗教団体であろうが、ダメなものは絶対に許せないという考え方で。単なるバイオレンス映画とは、そこが違う。観る方にそのメッセージが伝わればいいなと思いますね。

(後編に続く)

【後編はこちら】無頼派俳優・赤井英和が語る61歳の意外な私生活「嫁さんに酒を止められて、今はビール1日3本」

▽映画『ねばぎば 新世界』
主演:赤井英和
監督・脚本・プロデューサー:上西雄大
7月10日(土)より新宿K’s cinema他にて順次全国公開

大阪新世界を舞台に、かつての大映映画、勝新太郎田宮二郎の『悪名』シリーズを彷彿とさせる痛快アクションドラマ。新世界・西成に棲む人間味溢れる個性と、今も残る浪速の人情を織り交ぜ、社会の明と暗、善と悪、表と裏の世界観の中、展開する。主演は「どついたるねん」の赤井英和と、上西雄大のW主演。その他、小沢仁志西岡德馬有森也実菅田俊田中要次堀田眞三、徳竹未夏、古川藍、神戸浩、坂田聡など豪華キャストが集結した。
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