日本、ドイツ、イラン、イラク、ロシアと、5カ国にルーツを持ち、雑誌『ViVi』の専属モデルとして活躍する莉菜の映画初出演・初主演作『マイスモールランド』が、5月6日に劇場公開する。嵐が演じるのは、埼玉に住むクルド人の高校生・サーリャ。
幼い頃に生活していた地を逃れて来日し、日本の同級生らと共に“日本人らしく”暮らしてきたサーリャだったが、ある日、家族とともに難民申請が不認定となったことで、苦しい境遇へと立たされていく。自身の経験にも重なることがあったという同作への思いや、今後の展望などを嵐に聞いた(前後編の前編)。

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──今回、映画初出演にして初主演ということですが、お芝居自体がほぼ初ですか?

嵐 再現ドラマなどに出たことはあるんですが、本格的な作品に出るのは初めてです。事務所の方からこの作品のオーディションがあることを教えてもらったのですが、もともと演技には興味はあって「いつかできたらいいな」と思っていました。でも、こんなに早く大きな役をいただけるとは思っていなかったのですごく緊張しました。

「自分を日本人と言いたいけど、日本人と言っていいのかわからない」感情や、普通に生活していても外見から「外国人」と判断されてしまうことへの葛藤は、状況は違いますが私も幼少期から感じていたので、サーリャとの共通点にすごく惹かれました。「演技をしたい」という以上に、この作品に惹かれて、この作品に携わってみたいという気持ちが大きくて、「絶対にこの役をやりたい」という気持ちでオーディションを受けました。

──共感出来る部分もあるということでしたが、境遇とは別にサーリャという人物そのものについてはどのように感じましたか?

嵐 サーリャはつらいことがあっても希望を捨てないので、すごいと思いました。私も希望を持って仕事したいといつも思っているので、その点にも共感しました。完成した映像には収録されなかったのですが、妹とケンカをするシーンがあって、サーリャはそれでも妹に優しく接しているんです。どんなにつらい状況でも周りの人のことをいつも考えて動いているサーリャは本当にかっこいいし、すごく強い女性だなと。私もこうありたいと思いましたね。


──エンドロールを見て思ったのですが、妹さん含めサーリャの家族を演じたのは、もしかして嵐さんの本当の家族ではないですか?

嵐 実はそうなんです。家族も事務所に所属していて、オーディションで決まったんです。私が先にオーディションに参加したのですが、同じ作品のオーディションで一緒に出演することになりました(笑)。

──そうだったんですね!作品上の家族構成もそれに合わせて変わったんですか?

嵐 そうですね。もともとは妹の年齢ももう少し下の設定だったり、本来いなかった弟も追加することになったりと、私たちの家族に設定を合わせてくださいました。妹が演じた役は、妹の性格とほとんど一緒だったんですよ。本当にサバサバした子だし、父も監視カメラで見られていたんじゃないかなというくらいそのままだったからすごくびっくりしました。

──ご家族は演技経験があったんですか?

嵐 父も妹も弟も再現ドラマくらいなので、本格的に演技をするのは初めてです。

──サーリャの家族は、違う方が演じる可能性もあったんですよね?

嵐 もちろんそうです。お父さん役が決まる前も、他に2人くらい候補の方がいて一緒に演技をしたりもしました。妹役も弟役も別の方もいたので、最初は本当の家族で演じることになるなんて信じられなかったです。先ほど「エンドロールを見て気付いた」と言ってくれたように、それを知らないで見て、エンドロールで気付いて「もう一回見たい」と思ってもらえたらいいなとも思います。
だから家族で出演していることは、隠してはいないのですが、あまり広く公表してもいないんです。

──なるほど...。この話は掲載しても大丈夫なんでしょうか?

嵐 気付いてくれた方には話しているので、それは大丈夫です!

──この作品への思いは先ほど語ってもらいましたが、映画初挑戦ということそのものについてはいかがですか?

嵐 主演という大きな役割でしたし、周りには演技の大先輩もいたので、私が足を引っ張ってしまうんじゃないか、迷惑をかけてしまうんじゃないかとすごく思っていました。けど撮影前のワークショップの時からスタッフの方や共演の奥平大兼さんが本当に優しく接してくださって、わからないことも聞くことができたので、その後は自分のできることをちゃんとやって、精一杯全部出し切ろうという前向きな気持ちになることができました。

──本作品で共演された俳優の奥平大兼さんとは、撮影前に行われたというワークショップなどで、どんな話をされていたんですか?

嵐 奥平さんは年齢がひとつ上なのですが、趣味が合ったこともあって仲良くなれました。撮影中、私が業界用語を全然知らなかったので「次何するの?」とか、スタッフの方に聞きにくいようなことを教わったりしていました。撮影前に「落ち着きたい時にはどうやって心を整えているの?」と聞いたら「耳をふさいで目をつぶって無になる」と教えてくれたので、実践したりもしていました。映画の現場の基礎を色々と奥平さんが教えてくれましたね。私が緊張していると、話し相手になってくれたりして、それで私も緊張がやわらいで、本当に頼れるお兄ちゃんのような存在でとても感謝しています。

──実は先日、奥平さんにもお話を伺ったのですが「サーリャにはつらいシーンが多いけど、(奥平演じる)聡太といる時のサーリャは楽しい時間を過ごしていたから、撮影以外でも嵐さんと一緒にいるときはできるだけ楽しく過ごすことを心掛けていた」とおっしゃっていました。

嵐 そうだったんですね!サーリャにとっては聡太が居場所にもなっていたので、一緒にいる時は幸せそうな顔をしているんです。ワークショップの時には川和田監督がみんなでお花見をする機会を作ってくれて、仲を深めたんですよね。
仲良くさせていただいたことがサーリャの演技にも反映できたのかなと思います。

──ワークショップでは他にどんなことをしたんですか?

嵐 私は実際にクルド人の家族にお会いして話を聞いたり、ご飯をいただいたりしました。楽器を弾いてもらったりもして、クルドの文化などを知ることができましたね。(後編へ続く)

【後編はこちら】5カ国にルーツ『ViVi』モデル嵐莉菜「日本生まれで日本育ち、でも自分は日本人と言っていいのかな」
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