【前編はこちら】元週刊プロレ番記者が語る、大仁田厚と緊迫の一騎打ち「リアル“言論地雷”爆破デスマッチが開催」
【写真】大仁田厚と元週刊プロレス記者の小島和宏の言論地雷爆破デスマッチ
ステージに立って腹を括った。いや、括らざるを得なかった。
そこに広がっていたのは悪天候にも関わらず満員になった客席の光景だった。台風の影響で遠方から来場予定だった方が何名かキャンセルされた、と聞いていたので、いささか不安に思っていたのだが、満員の景色には安堵と感謝で涙が出そうになった。
台本も打ち合わせもナシで、どうやら怒っている気配の大仁田と1対1でトーク。この日は司会者を立てていなかったので、文字通りの一騎打ちである(もし誰かに司会を頼んでいたら、その方がパニック状態に陥っていただろうから、逆にこれでよかった)。トークショーとして成立するかどうかわからないが、とにかくお客さまに満足していただけるような「なにか」を提示しなくてはいけない。
こういうときは経験則が役に立つ。僕はももいろクローバーZ公式記者として活動をはじめてから、今年でちょうど10年になるのだが、何度となくメンバーと一緒にステージに上がってのトークショーを体験してきた。
アイドルのトークショーというと、しっかりとした台本があって、それにがんじがらめにされてしまうような印象があるかもしれないが、ももクロに関しては台本があったことなど一度もなかった。それどころか事前の打ち合わせすらナシ。
それは納得できるのだが、会場となるのが横浜アリーナや幕張メッセといった1万人規模の大会場。しかもコンサート開始前の客入れの時間だったりするので、緊張感からメンバーが泣き出してしまう、などというアクシデントもあったりした。あの修羅場と比べたら、きっとなんとかなる!
ステージに上がった大仁田はしばらく僕とは目を合わせず、前夜、日本武道館で開催された全日本プロレス50周年記念興行の裏話をたっぷりと語り出した。まさにここでしか聴けないホットな話題。このあとのトークがグダっても、これである程度の満足度は担保できる。大仁田もいっぱいになった客席に感動していたので、いきなりボーナストラックをぶちこんでくれたようだ。
さて肝心の本編だが「ここからは台風の中、足を運んでくれたお客さんのためだけの大暴露大会じゃ!」(大仁田)。ゆえに詳細について書くことはできないのだが、けっして理不尽に怒っていたわけではなく、当時の関係者の証言との「意見の相違」を熱く、丁寧にひとつひとつ反論してくれた。なにせ30年も前の話なので、すべての関係者の証言が合致することは稀である。ましてや若手社員と組織の長では見え方も感じ方もまったく違うわけで……全員が当時、体験した「事実」を語ってくれたことは間違いないのだが、それがひとつの「真実」に結びつくわけではないのである。
結局、大仁田は「小島ちゃんじゃなかったら、このイベントには出なかった」と連呼し「すべてを認めるわけにはいかないけど、文章からFMWに対する熱が伝わってきたから」と、終演後、サイン会を開催することを“条件つき”で承諾してくれた(その条件というのはサインと一緒に反論も書きこむ、というもの。
首根っこをつかまれることも、ぶん殴られることもなく、無事にトークショーは終了。サイン会に参加したお客さまからは「緊張感が伝わってきて面白かった」「大変でしたね」というお声をかけていただき、とりあえずホッとしたが、ドッと疲れが出て、ここから2日間、寝こんでしまうことになる。もうこんな緊張感、二度と味わいたくない!
それ以上に驚いたのが、トークショーの中で飛び出したアーティスト・ファンキー加藤への挑発が本人のSNSを巻きこんで、想像以上の騒ぎに発展していたこと、である。
先日、東京スポーツのインタビューで大仁田信者であることをカミングアウトしたファンキー加藤。その記事には有刺鉄線バットを手にした加藤の写真が大々的に使われていたのだが、それを見た大仁田は「自前の有刺鉄線バットを持っているんだったら、それを手にしてリングに上がってこい! 電流爆破デスマッチで勝負じゃ!」といきなりブチあげ、取材に来ていたスポーツ紙の記者がそれを即座に報じたことで話題はイッキに拡散された。
じつはあの写真でファンキー加藤が手にしている有刺鉄線バットは東京スポーツに置いてあったもので、彼の所有物ではないのだが、東スポ一面を飾ってしまった以上、もはや大仁田のロックオンからは逃れられない。事前に打ち合わせがあったら、そんな無責任な発言は絶対にダメですよ、とストップをかけていたのだが、これがノー台本・オールアドリブの恐ろしさ、である。
こういうややこしい話にはなるべく関知したくないのだが、自分のイベントが発信源になってしまった以上、知らぬ存ぜずというわけにもいかないだろう。万が一、万万が一、大仁田厚vsファンキー加藤の電流爆破デスマッチが実現してしまったら、僕は20数年ぶりに電流爆破の試合レポートを書きたい、と思っている。