──いよいよ和田さんの卒業まで2カ月を切りました。とはいえ、しんみりした様子はあまりないですね。
竹内 そうですねえ。面白おかしくやっていますよ。基本、バカばかりやるグループなので。
和田 そう? たまに寂しがっていることもあるじゃん。泣きながら私に抱きついてきたりさ。
笠原 私は泣かないですけどね。
和田 いやいや、あなたも泣いていたじゃないですか(笑)。
笠原 えっ、えっ!? いつですか!?
和田 最近だと新メンバー(太田遥香・伊勢鈴蘭)が加入したとき!
笠原 まぁあれは……。でも、和田さんが卒業するから泣いたっていう話とは違うじゃないですか。
和田 どうだろう。私はそのことも関係していると思うけどね。
──知らない読者のために、現場の状況を説明していただけますか?
和田 新メンバー2人と対面した瞬間、一斉に泣き出したんですよ。泣いたのは、かみこ(上國料萌衣)以下の若いメンバーでしたけど。
竹内 そうそう。(佐々木)莉佳子も泣いていましたね。
和田 新メンバーは明らかに若くて、やる気と希望に満ち溢れている。もうそこにはアンジュルムの明るい未来が見えるわけです。当然そのことはうれしいんだけど、同時に言いようのない不安が襲ってきて……みたいなことだったと思うんです。私はそういう涙だと解釈しました。
竹内 また、前振りが何もない突然の発表でしたからね。
笠原 それに加えてグループの中で私が最年少だったのに、同学年の子が2人も入ってくるわけですから。
──最初に和田さんの卒業を聞いたとき、2人はどう思いました?
竹内 「最初に」か……。もうかれこれ1年以上前の話だから、記憶が若干あやふやなんですけど(笑)。でも、ショックは受けなかったです。アンジュルムは卒業と加入を繰り返す、メンバーの入れ替わりが前提のグループ。わだちょだっていつかはいなくなるかもしれないと覚悟はしていたので。その「いつか」がこのタイミングなのかっていう驚きは少しありましたけどね。
──「卒業することを1年前に報告するなんて、さすがに時期尚早ではないか?」ということですか?
竹内 違いますよ~。まぁそういう意見もあったかもですけど(笑)。単純にもう少しいるんじゃないかと個人的には思っていただけです。
笠原 私は竹内さんと違いショックを受けました。正直、信じられなかったです。だって私にとっては、メンバーの卒業コンサート自体が初めてのことなんですよ。
和田 そうかあ。言われてみたら、アンジュルムというグループにとっても久しぶりの卒業コンサートなんだよね。
笠原 このまま10人体制がずっと続いていくんじゃないか。素敵な雰囲気のまま、アンジュルムは進化していくんじゃないか……。自分でもそう信じたかったんでしょうね。
竹内 これは「メンバーが1人いなくなります」というだけの話ではないですからね。わだちょはアンジュルムのリーダーだし、唯一のオリジナルメンバーだし、ついでに言うとハロプロのリーダーでもある。やっぱり存在は大きいですよ。
──ちなみにアンジュルムの次期リーダーは内定しているんですか?
和田 いや、決まっていません。本当にまったく何もです。
──そうですか。
竹内 だから私、次のリーダーのことはあえて一切考えないようにしているんです。「もしかして私が……?」とか考え始めたら、本当に頭がおかしくなりそうですよ(笑)。だから今は全力でふざけています。というか、もし仮に私がリーダーになったら、アンジュルムはマジでヤバいと思うんですよ。破滅しちゃうかもしれない。
和田 「破滅」って(苦笑)。でも私も自分の卒業を実感するようになったのは、ここ最近の話かもだな。最後のハロコン、最後のレコーディング……何をやるんでも「最後の」って言葉がつくじゃないですか。アンジュルムは9月にメキシコ公演をやるんですけど、そのためのビデオ撮影に私は参加しなかったんですよ。9月の時点では、もういないわけですから。その撮影している様子を眺めて、「あぁ、こういう感じになるのか……」って感慨深かったです。
──卒業後もアイドルを続けると和田さんは公言しています。だったら何もアンジュルムを辞める必要はな いじゃないですか。
和田 この10人で叶えたい夢が私にはあったんです。だけどアンジュルムは私だけのものではもちろんないんですね。だから私の考え方をみんなに押しつけるのは違うと思うんです。だったら、アンジュルム以外のところで自分のやりたいことをやったほうがいいんじゃないかというのが一番根本にある考え。「アイドルをやる? 今までと一緒じゃん」っていうのは、たしかによく言われることなんです。でも、グループとソロでは全然違いますしね。
竹内 アンジュルムにいるからできることがあると同時に、アンジュルムにいるとできないことっていうのもあるはずなんです。
──ソロになったアイドル・和田彩花は何を目指すんですか?
和田 「女性のあり方」と「アイドルという文化」の接点を探っていきたいというのが1つ。言い換えると、「アイドルの解釈」を広げていかないといけないと思っています。それは歌やダンスといったパフォーマンスを通じてなんですけど。
──すごい話ですよね。自分もアイドルなのに、既存のアイドル観をブチ壊していくつもりなんですから。
和田 ブチ壊すだなんて、そんな……(笑)。まぁでも変えていきたいなとは考えています。
──しかし、和田さんはアンジュルムにとって絶対的存在でしたからね。巨人軍でいうところの長嶋茂雄、新日本プロレスでいうところのアントニオ猪木に匹敵するような。
和田 そう言っていただけるのは光栄ですけど、だからこそアンジュルムが生まれ変わるチャンスだと私は思うんです。自分がいなくなったアンジュルムのステージを観ることが今から楽しみですし。そのとき、一種の「答え合わせ」ができると思うんですよね。「私がアンジュルムに残したものはこれ。逆に私に足りなかったものはこれ」って。
──絶対的エースの卒業で人気面が低下するという心配は?
和田 人気!? そういうデリケートな言葉を軽々しく口にしないでくださいよ~(笑)。残ったメンバーの負担になるじゃないですか!
──失礼いたしました(笑)。
竹内 でも真面目な話をすると、そこはすでに一度乗り越えてきたグループなんですよ。というのは、前田(憂佳)さんが卒業したときにガクッと人気が落ちたんですね。明確に集客が落ちて、そのせいでツアーもできなくなって……。そこから立て直すのに時間はかかりましたけど、潰れなかったからこそ、今こうやって活動できているわけですし。だから強がりでもなんでもなく、本当に心配はしていないんです。
──ゆうかりんショックを経験したら、怖いものなどないと。
竹内 前田さんを知らない若いメンバーは私と違って心配しているかもだけど、人気が下がったら下がったでそこから這い上がればいいだけであって。そこで強くなれるっていう部分もあると思うんです。
笠原 和田さんがいなくなることで不安がまったくないと言ったら嘘になるけど……。でも、気にしたってしょうがないとも思うんです。これからどうなるのか先のことは何もわからないけど、いろんなことが変わっていくのはたしかじゃないですか。だったら今すぐにでも出発したいんです。ウジウジ気にしているような時間がもったいないんですよ。希望を持って力強く前に進む。それだけですよ、今の私にできるのは。
和田 カッコいいなぁ。めっちゃ考えてくれているんだね。
──絶対的リーダーの和田さんですけど、「アンジュルムはこうあるべきだ!」みたいな考えを後輩に伝えたりはしないでんすか?
和田 絶対にしません! 人間が1人ひとり違う以上、そこには個人の考えというものがあるし、1つの考えで突っ走るというのは危険な気がするんですよ。だから思うことがあっても、あえて口を挟まないことも多いです。強いて言えば、「そんなの自分で考えろ!」スタイルのリーダーでしたね(笑)。
笠原 それは、めちゃくちゃ感じます。自主性を重んじるというか、個性を伸ばすというか……。たとえば私たちみたいな大人数グループの場合、「髪型やメイクが他のメンバーと被らないようにする」っていうのは結構大きなテーマなんですよ。だけど私なんかはメイクの知識もないし、考えすぎちゃう傾向があるので、「あ~、もう! どうしよう!? どうしよう!?」ってパニックになっちゃんです。そういうとき、和田さんは軽い調子で言うんですよ。「そんなの自分の好きにすればいいじゃん」って。そういった和田さんの言葉に私はどれだけ救われたか……。
和田 言っちゃえば個人主義ってことなのかもしれないけど、その思想を全員に押しつけるのも違うと思うんですよね。メンバーの中には「好き勝手やりたい」じゃなくて「みんなと揃えたい」という考え方もあるかもしれないですから。
──今はダイバーシティという概念が重視される時代ですしね。
和田 そもそもアンジュルムに「路線」なんてないですから。私がいなくなってからも、どんどん変えていってほしい。むしろ全面的に変えてもらったほうが私としてはうれしいです。実際、守ってほしいものなんて何ひとつないですよ。
竹内 うん、わかる。結局、過去は過去じゃないですか。もう戻ってこないわけですよ。それを懐かしがってどうするんだっていう話で。だったら未来を見たほうがいいです。
和田 去年、20周年を迎えた歴史あるハロー!プロジェクトですけど、だからこそ逆に変えていかないとダメだって感じたんですよね。ハロプロ全体については、話が大きくなりすぎるから私が簡単に口を挟めることじゃないかもですけど(苦笑)。でも、アンジュルムは変わっていく集団であってほしいなと思います。
(『OVERTURE』018号掲載)
▽和田彩花(わだ・あやか)
1994年8月1日生まれ、群馬県出身。A型。2009年のスマイレージ結成時からのオリジナルメンバー。約10年グループのリーダーを務めている。6月18日に行われる武道館公演にて卒業する。
▽竹内朱莉(たけうち・あかり)
1997年11月23日生まれ、埼玉県出身。O型。2011年にスマイレージ2期メンバーとして加入。「ここにきて趣味の書道をお仕事にさせていただく機会が増えているんですけど、これは完全にわだちょのおかげなんですよ。実は私、普段の字が汚いこともあって、書道アピールはしたくなかったんですよ。でもわだちょは『芸術性が高い!』ってベタ褒めしてくれて、世に出すきっかけを与えてくれた。本当に感謝しています」
▽笠原桃奈(かさはら・ももな)
2003年10月22日生まれ、神奈川県出身。A型。2016年にアンジュルム5期メンバーとして単独加入。「どういうわけか、私は『ポケモン』って和田さんから呼ばれていました。ポケモンGOが流行っていた頃の話です。私の姿を見つけては『ポケモンだ! ゲットしなきゃ!』とか言って追いかけまわしてくるんですよ。私も笑いながら逃げていましたけど、ふと我に返って『何やっているんだろう?』って落ち込みましたね(笑)。」
▽ニューアルバム『輪廻転生~ANGERME Past, Present & Future~』5月15日発売
▽「ハロプロ プレミアム アンジュルム コンサートツアー 2019春 ファイナル 和田彩花卒業スペシャル 輪廻転生 ~あるとき生まれた愛の提唱~」6月18日に日本武道館にて開催