【写真】『ザ・ノンフィクション』で話題を呼んだゲーム芸人・フジタ
「父親が自宅に帰ってこなくなったのは、母が亡くなってすぐの小学校一年生の頃。週に三万円を置いていっていたので、それで暮らしてました。最初はきつかったけれど、そのうちだんだん1人でもよくなりましたね」
フジタの家族構成は、もともと少し複雑だ。フジタの父と母は再婚同士で、フジタには父親の違う、12歳年上の兄がおり、その兄は働いていたので家にはほとんどいなかった。フジタが小学校にあがる直前のある時に、母がくも膜下出血で急逝。父との2人で暮らすこととなった。しかし、ほどなくして父はフジタの同級生の母親でもあるシングルマザーのAさんと恋仲になり、家に帰ってこなくなったという。
「ご飯はほとんど給食でしか食べてませんでした。だって子どもってお金渡されると、ゲームとか違うものに使うわけです。家にゲームがどんどん増えていっても父親は見てないから気付かない。
内縁の妻Aさんはフジタの同級生の母でもある。フジタの自宅、もしくはAさんの家で、皆で暮らすという選択肢があって然るべきだ。そうしなかったのはなぜなのか。
「12歳年上の兄が家に入れさせなかったんだと思います。内縁の妻は、その時点で結婚が四回目とかで、僕は働いているのを約35年間で一度も見たことがないし、上手く男性を丸め込んで転々とするような人で。僕の亡くなった母親は、お金を持ってる人だったんです。
兄の意向により、自宅での同居および父の再婚は阻止されたものの、フジタだけ自宅に置き去りにされることになったのは、Aさんの自宅の環境と、苛烈な性格が原因だった。
「それこそ内縁の妻は、ネズミが出るようなすごい部屋に住んでいて。『ザ・ノンフィクション』でも放送されていましたが、待ち合わせにちょっと遅刻したくらいで、あんだけ怒鳴り散らすような方なわけですよ。ちょっと意に反するって思っちゃうと、僕が『電話で話したい』っていっても『話なんてありません』って切ったりとか。この女性のどこに魅力があるのか、まったくわからなかったです。でももう父親と30年近くも続いているわけだから、いいところもあったのかもしれないですけどね」
聞けば聞くほどに、凄まじい幼少期を過ごしてきたフジタだが、父親とAさんに振り回された子どもは、もうひとり存在する。Aさんの実子でもある、フジタの同級生だ。父親とAさんとが男女関係を持つようになり、当然のことフジタと同級生、ふたりの関係にも変化が生じることとなった。
「もともと遊ぶくらいの仲ではあったんですよ。フラットな関係だったけれど、父親とAさんがそういうことになってからは、キツくなりましたね。
父親もAさんの子どもの性格をわかっていて、明らかにフジタとは扱い方が違ったという。
「うちの父親は母が生きている頃から暴力的で。それこそ人の家の子どもを殴ったりもしていて。もちろん悪いことをした時ですけども。でもそれは別に僕は、かっこいいと思ってたんです。人の子どもをちゃんと叱れるのってすごいじゃないですか。でも、内縁の妻と付き合い出してからは、悪い事をしてなくても僕は殴られるし、同級生(Aさんの子供)は悪いことをしても殴られない。もうめちゃくちゃになりました。でも、あっちはあっちで、襖で繋がっている六畳四畳半みたいな狭い家だったので、キツかったんじゃないかと思います。
父親のせいで不幸な少年時代を背負うことになったフジタ。それなのに、痴呆が始まった父親を見捨てることなく、いまも必死に関わり続けているのはなぜなのか――後半に続く。
(取材・文/大泉りか)
▽『漫画版 ファミコンに育てられた男』
刊行:双葉社
発売日:2022.12.22
予価:1,595円 (本体1,450円)
書籍『ファミコンに育てられた男』のコミカライズ。主人公のフジタ氏はグレープカンパニー所属のゲーム芸人。小学校入学前に母親が急死、父親の育児放棄により壮絶な半生を歩んだ。彼の孤独を癒し、人生を教えてくれたのはファミコンのソフトだった。彼はファミコンに育てられたのだ――。
【後編はこちら】ゲーム芸人・フジタが語る『ザ・ノンフィクション』その後、父親の認知症と介護…そして婚活