いまアイドル界で異彩を放っているグループがいる。メンバーが全員ゲイのグループ「二丁目魁カミングアウト」だ。
2年前には「男性の出場は難しい」と言われたTOKYO IDOL FESTIVALへの出場を実力でつかみ取り、10周年を迎える今年のTIFにも出場。いま「ライブが最もエモい」とも言われるその魅力はどこからくるのか。リーダーミキティー本物に話を聞いた。
──2年前、TIF決定が発表されたときはどんな気持ちでしたか?

ミキティー本物(以下ミキティー) めっちゃくちゃうれしかったですね! 結成した8年前からTIF出演は目標だったんですけど、他に比べてもハードルが高いんですよ。他のイベントは振付師をやってるコネクションとかで結構むりやり出させてもらってたんですけど(笑)。

──他のコネは認めるんですね(笑)。

ミキティー でもTIFくらい大手になると、コンタクトの取りようもない。「男性は難しい」という話も聞きましたし。けどアイドルをやるからには必ず出たい登竜門じゃないですか。正直諦めかけたときにやっと声をかけてもらえて。振付してるアイドルやそれまで応援してくれてた関係者も皆祝福してくれたのもうれしかったですね。

──TIFでの初めてのライブの光景は覚えてますか。


ミキティー いきなりSMILE GARDENで、ステージに出たらおなカマ(ファンの総称)が4列目くらいまでいてくれたんですよ。それがめちゃくちゃうれしくて! 奥の無料エリア最前にもおなカマがいて、それが鮮明に見えたときに、女性アイドルのイベントで時間もいただけてライブできることに感動して、泣いちゃいましたね。

──もともと二丁魁はどういう経緯でスタートしたんですか?

ミキティー 一番最初はアップアップガールズ(仮)さんのイベントで、「二丁目でハロプロ踊ってる人」としてユニットで出たんですよ。それまでずっとアイドルをやりたくて、一夜限りの予定だったんですけど、実際ステージに立ったときに「これで終わっちゃダメだ!」と思ったんです。それから本格的にグループとして活動を始めました。

──昔と今の二丁魁は違いますか。

ミキティー 昔は「ゲイって面白さを出さなきゃ」って思ってたんですよ。それで無理してコミカルにやってたところもあったんですけど、おなカマが増えてきて「そのままのあなたたちでいいんだよ」って声をもらうようになって、本当にやりたい音楽をメインに活動出来るようになりました。

──昔は対バンイベントとかに出られても「ゲイアイドルはちょっと……」とお客さんが減っていく姿をよく見ましたが、最近は二丁魁が登場するとお客さんがフロアに向かっていきます。ライブのエモさが本当に凄いですよね。

ミキティー 私たちもエモくしようとしてるわけじゃないけど、魂のまんまやったらアドレナリンが出て自然と涙あふれてきて熱いステージになっちゃうんです。人の生誕ライブに出て、誕生日関係なく私たちもお客さんも全員泣いたりしてますからね。
端から見たら結構ヤバい集団に見えてるかもしれないですね(笑)。

──ライブの魅力に加えて、無理な課金はさせないと宣言したり「安心して推せる」ところにファンがついてきたところもあると思います。

ミキティー ランキングとか目標を設定すると、一番頑張んなきゃいけなくなるのはファンの人たちなんですよね。だからフェスでもお客さん参加のレースで優勝したら出演、みたいなのはやりたくなかったんです。私が目指してたアイドルは、CDを1人何枚も積ませるんじゃなくて、1人1枚で100万人の人にCDを手に取ってもらえるような人たちなんですよね。そうありたいからこそ、今のアイドルとは分けて「ゲイアイドル」って呼んでるんです。今後ゲイアイドルが増えていったときに、私たちが基準になるように。

──そういう誠実さが伝わって、女性アイドルシーンで真っ当に評価されてきた感じがします。

ミキティー 自分でも誠実だと思いますよ(笑)。無理なやり方をすればもっと大きいステージに立てたり、テレビに出たりできたのかもしれないけど、私たちにとって一番大切なのはCDの売り上げとか集客とかではなくて、ファンと私たちの人間づきあいだと思ってるんで。

──TIFの前にはZepp Tokyoワンマンも控えてます。まだちょっと早いですが、今年のTIFで出たいステージはありますか。


ミキティー どのステージも違って素敵なんですけど、やっぱりSMILE GARDENに出たいですね。他のアイドルがお目当ての人も観てくれるのが本当にうれしいんです。1年目は「受け入れてくれるかな」とか不安もあったんですけど、今は「TIFで一番熱いステージにするから、絶対に私たち観た方がいいよ!」っていう自信がありますね。
▽ミキティー本物(みきてぃーほんもの)
「ゲイだから」を理由に諦めたくない気持ちから、「ゲイでもアイドルになれる」をコンセプトに活動しているゲイアイドル “二丁目の魁カミングアウト”のリーダー兼プロデューサー。私立恵比寿中学、Maison book girl、フィロソフィーのダンス、BiS、LADYBABY、ゆるめるモ!など、アイドルのコレオグラファーとしても活動中。
Information
7月14日(日) Zepp Tokyoにてワンマンライブ。2020年1月8日(水)中野サンプラザにてワンマンライブ決定。
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