同作は、俳優にして作家、演出家、映画監督、作曲家と多彩に活躍したイギリスの才人ノエル・カワードによる戯曲で、1941年の初演時には1997回というロングランを記録、その後2度映画化もされている傑作喜劇。今回は熊林弘高が演出を手掛ける。共演に若村麻由美、門脇麦、高畑淳子ら。
田中は、見目良い色男でありながら、わざとかわざとでないのか、女性のプライドを逆なでするような失礼な物言いで小さな地雷を次々と踏むチャールズを、絶妙な無神経さを醸し出しながら演じていく。一方で嫌味の応酬のような会話を妻と交わし客席をヒリつかせたかと思いきや、実はそんな会話を楽しんでいるだけ、といった上流階級の人間らしい余裕もしっかり表現していった。
初日公演は万雷の拍手の中で終幕したが、公演を終えた田中は「いくら稽古を重ねても不安が払拭できずに迎えた初日です。初日らしく色々なことがありましたが、とりあえず無事に幕が下り、安堵しました。思った以上に皆さんがたくさん笑ってくださり、そして4回もカーテンコールをしてくださって嬉しかった」と心境を語った。
続けて「この『陽気な幽霊』は、80年以上前、戦時下という命の危険と隣り合わせの中でノエル・カワードが生み出した戯曲で、それをたくさんの人が観て楽しんだ。そこには共感性や、救いのようなものもあったのでしょう。そして“笑う”という行為がどれだけ素晴らしいことなのか、ということも伝えてくれています。悪意はまったく出てきません。それはなんて素敵なことなんだろうと思います。しかも、楽しいだけじゃない、というところも魅力です。3時間、劇場にいる間は思い切りこの世界に浸って、幸せな気持ちで帰っていただけたら。とにかく僕らは一生懸命この世界を生きるので、自由に、お好きにこの世界を楽しんでください」とコメントした。
同作は、29日まで同劇場にて上演。その後、大阪、福岡でも上演される。