伊集院光爆笑問題バナナマンなどが曜日ごとに冠を担うTBSラジオの人気深夜番組「JUNK」の統括プロデューサー、宮嵜守史の初のエッセイ本『ラジオじゃないと届かない』(ポプラ社)が発売された。今回、伊集院光、爆笑問題、山里亮太おぎやはぎ、バナナマンが勢揃いした伝説の番組『JUNK20周年特番』の舞台裏や、ヒコロヒーと始めているYouTubeについてなど、音声コンテンツの可能性について話を聞いた。
(前後編の後編)。

【写真】TBSラジオ「JUNK」の統括プロデューサー宮嵜守史

【前編はこちら】爆笑問題、バナナマン、おぎやはぎ…JUNK統括P宮嵜守史が語る「ラジオは人間を味わうメディア」

──『ラジオじゃないと届かない』に収録されている、アルコ&ピースとの対談では、常連のリスナーにむけて「扉を閉める」タイミングの話もでてきます。どれだけ内輪に向けて放送をするのか…。

宮嵜 扉を閉めたほうがリスナーの熱やエンゲージメントは上がるけど、一見さんお断りの空気を出したままでは母数が増えにくいと思うんです。門戸を開いて、いつから聴いてもわかりやすく作られている番組のほうが是だと信じてます。自分がリスナーで新しい番組を聴いてみようと思ったら、知らない固有名詞でずっと笑っていたら次の週から聴かなくなるはず。
もともと興味を持っていたパーソナリティーの場合は、何週か我慢して聴くかもしれません。過不足ない説明があったり、わざとらしさがないほうが、多くの人に聴いてもらえる可能性が高くなると思うんです。

──そういった話を宮嵜さんからパーソナリティーに伝えることはあるんですか?

宮嵜 ハライチには伝えました。ただ、「こうしたらリスナーが増えると思います」とも「これが正解です」とも言いません。ラジオを作るほうも聴くほうも正解、不正解はありませんから。

──プロデューサーになると、山里亮太さんに対してメンター的役割に気づかれたとも書かれていましたね。


宮嵜 山ちゃんのメンターになろうと思ったわけではなくて、ラジオで結婚をどう扱うか考えた際に、プロデューサーはメンター的な役割を持っているんだなと気づいたという話で、相手が誰であろうと「この人にはこの役割で臨もう」と決めることはないんです。人によって態度を変える人は最悪だと思っているので(笑)。

──2月12日に放送されたJUNK20周年特番(伊集院光、爆笑問題、山里亮太、おぎやはぎ、バナナマンが勢揃いで出演)は、ただただ面白かったです。宮嵜さんは大変だったと思いますが。

宮嵜 自分で言い出したことなので口にはしませんでしたが、もちろん大変でした。事務所もバラバラですからね。
久々にディレクター卓に座った時に機器が新しくなっていて、上手く使えるのかなというドキドキもありました(笑)。

──爆笑問題が30分裏被りしている関係もあったのか、伊集院さんとおぎはやぎが最初に出る構成もよかったです。

宮嵜 偶然と必然の両方があったと思います。本当は田中(裕二)さんだけが裏被りなんですけど、太田(光)さんだけを出すと説明を要してしまうし、田中さんだけがいないことに注意が向くのもよくないと思ったので、2組ずつで繋いでいこうと。最初から全員出たら、自分がリスナーだったら飽きてしまうんじゃないかと思ったんです。だったら、あまり聴いたことがない組み合わせが実現できたらいいなと、リスナーの声もあって、伊集院さんとおぎはやぎのトークから始めました。


──特番の前には各パーソナリティーによるイベントも行われましたが、「事業施策」が上手いニッポン放送のことは意識したのでしょうか。

宮嵜 常に「羨ましいな」と思っていましたが、同じことはやりたくないという意識もあって。でも一番は、20周年なので普段聴いてくれているリスナーに還元したいという気持ちでした。

──ラジオ以外の音声コンテンツが増えているなかで、宮嵜さんは2年前からヒコロヒーさんとYouTube(岩場の女)を始めています。

宮嵜 僕はラジオの優位性を訴えているわけではないんです。どのメディアが優れている、劣っているという話ではなくて、それぞれの特質はあるはずで、YouTubeだって面白いと思うから、ヒコロヒーと組んで始めました。


──現在はプロデューサーだけど、ディレクターとして関わりたいという気持ちもあるのかなと思いました。

宮嵜 それが一番の理由だと思います。現在、会社での仕事は完全にマネジメントに徹していて、JUNKの放送内容には一切口を出していません。ディレクターたちが考えるべきことで、僕は何かが起きた時に責任を取る立場なんです。ただ、プレイヤーとしての欲求はまだ残っていて。とはいえ、会社から課された役割を放棄することはできないので、趣味としてYouTubeで欲求を果たそうという気持ちがあるんです。


──今後、一緒にラジオをやってみたいと注目している人はいますか?

宮嵜 モテすぎて僕となんか仕事してくれないだろうな、と思うのが蓮見翔くん(ダウ90000)です。ずっと言っているのはトリプルファイヤーの吉田(靖直)くん。もちろんヒコロヒーと地上波のラジオをやりたいですよ。それがYouTubeを始めた目的だから。最初にヒコロヒーの名前を出すべきだったな(笑)。

▽『ラジオじゃないと届かない』
発売:ポプラ社
定価:1760円
https://onl.bz/gFGq7FX