──もともと3人組アイドルグループの一員だったそうですが、どうしてアイドル活動を始めたんですか?
眉村 きっかけはBoAさんみたいになりたくてボイトレを始めて、そしたらグループに誘われたんです。ダンス&ボーカリストになりたくてアイドルになったんですけど、歌って踊るということに関してはBoAさんと同じことをやっていたので、近付いてると思いました。当時から絶対に売れる! 世界進出する! って思ってましたね。
──BoAさんのどこに惹かれたんですか?
眉村 いっぱいムキムキマッチョのダンサーを従えてて超かっこいいなと思って、私もそういう人になりたいなと。結果的に全然BoAさんみたいにはならなかったですけど。
──曲作りを始めたきっかけは?
眉村 3人組グループが解散するときに、これから何の曲を歌ったらいいんだろうと。自分で作らなきゃと思って始めました。それでGaregeBand(手軽に楽曲制作ができる初心者向けの音楽ソフトウェア)というアプリを知り合いに教えてもらったんです。iPadに入れて触っているうちに「意外と作れんじゃね?」と思ったら楽しくなって、どんどん曲を書きました。
──もともと音楽は好きだったんですか?
眉村 全然好きじゃないです。
──音楽に興味がなかったのに、作れるのが素晴らしいです。
眉村 普通にピアノをトゥルルルルンって入れて、いい感じのベースをベベベンって入れて、いい感じのドラムをポンポコリーンって入れたらできました。インディーズで出したアルバム『ぎっしり歯ぐき』も全曲GaregeBandで作りました。
──GaregeBandに課金して新しい音源を買うこともあるんですか?
眉村 1回も課金したことないです。この音が欲しいなと思ったら、エフェクトを超上手くかけるとできます。
──パソコンで楽曲制作をしようとは思わなかったんですか?
眉村 パソコンは超疎くて。電源すら点けられなかったですからね。今はiPadがバキバキに割れたので、パソコンを使ってますけど。
──ソロで活動する不安はなかったんですか?
眉村 全くなかったです。むしろ1人になってやりやすくなりました。私は計画性がなさ過ぎるので、1人だったら思い付きの行動も、あたかも計画してたように思わせることができるじゃないですか。自分がアドリブ過ぎるので、人とやってたら「お前とはやってられんわ!」って言われると思います。
──音楽性が多岐に渡っていますけど、音楽に詳しい訳でないのに次々と曲が書けるのが不思議です。
眉村 何でだろう……自分でも分からないです。たとえば最初に何の楽器にしようと考えて琴を選んだら、日本っぽい音色から何が連想されるかなと考えて、次はトイレの水が流れている音だ! ってiPadを持ってトイレに行って。ジャーッて流すのを4小節録ったらループして、それを琴とミックスしたらかっこよくなって。それでドラムを重ねたらいいじゃん! ってなるんです。
──眉村さんの話を聞くと簡単に作れるような気もします(笑)。特に記憶に残っている曲はあるんですか?
眉村 私は好きな曲があると、ずーっと聴き続けるんです。今までで1番病気みたいに聴いていたのが神聖かまってちゃんの『ロックンロールは鳴り止まないっ』で、高校生のときに流行って、朝から晩まで狂ったようにそれしか聴かなかったです。
──神聖かまってちゃんの他の曲も聴こうとは思わないんですね。
眉村 いろんな曲を聴くことができないんですよ。
──BoAさんの曲はどうですか?
眉村 BoAさんの曲も『LISTEN TO MY HEART』『Every Heart -ミンナノキモチ-』『VALENTI』『永遠』の4曲ぐらいしか知らないです。
──実質、『ロックンロールは鳴り止まないっ』しか聴いていないのと一緒ですね(笑)。自分の曲は聴くんですか?
眉村 聴かないです。
──ギターはどうやってマスターしたんですか?
眉村 「ギター 弾き方」で検索して、弾いている人のYouTubeを見て覚えました。この人、ここを押さえてるんだなって、それをマネしました。だから今もコードはAとCとFとGの4種類しか分からないんです。あとコード名は知らないけど「このヤツ」って覚えてます。
──ではコード進行は?
眉村 分からないです。『本気のラブソング』って曲で、「何とか進行を使ってる」って言われて、「はい?」ってなりました。
──自分の中で気持ち良いコードを使っていると、自然と曲ができあがるんですね。
眉村 最初はGaregeBandで作った4曲ぐらいをライブで歌ってたんですけど、ダンス&ボーカリストになりたかったから踊ってたんです。でも2回ぐらいで踊るのが面倒くさくなって踊らなくなったんです(笑)。踊りを考えるのも嫌だなと思って、踊らないまま歌ってたらボーッとなっちゃって。手持ち無沙汰だから楽器を持とうと思ってギターを持ちました。今はギターだけの曲もあるので弾き語りを始めて良かったです。
──ソロを始めた当初、お客さんの反応はいかがでしたか?
眉村 ノーリアクションでした。「何この曲?」って思われてましたね。私がセッティングしている最中にタバコを吸いに行ったりしてました。それが悔しかったから過激なことをしようと思って、客に靴下を投げたり、とがった発言をしたりしてました。そしたら興味を持ってもらえて、徐々に曲を聴いてもらえるようになりました。
──そこから動員は右肩上がりだったんですか?
眉村 盛り上がる曲を書いてなかったので、そこまで客も増えなかったんですよ。そんなときに、どついたるねんさん(※2007年より活動の4人組バンド)のライブを観て、バカなことをやってるから笑っちゃって、私の悩みなんて超ちっぽけじゃんと思ったんです。
──バズった以外で会社を立ち上げたメリットはありましたか?
眉村 株式会社なので株券を発行して、ファンの人に譲渡するファンクラブのような新しい形ができました。株主先行チケットを出したり、「株主総会」って新しいライブができたり、いっぱいメリットがありました。
──株はいくらで譲渡したんですか?
眉村 1万円です。5000株発行しててその内1500株をファンの方に譲渡しているんですが、もうすぐなくなるので増資して10000株発行にしてファンの方には3000株まで譲渡できるようにしたいと思っています。
──プライベートでファンの方と遊ぶこともありますが、それは単純に楽しいからですか?
眉村 はい。単なる趣味って感じです。私は外で遊ぶのが好きで鬼ごっこをしたかったんですけど、今22歳なので一緒に遊んでくれる友達がいないんです。
──鬼ごっこ以外ではどんな遊びをしているんですか?
眉村 どんじゃんけんぽんとバトミントンとフリスビーとバレーボールとサッカーとドッジボール。あと最近はバク転の練習をしていて、ファンに支える係をやってもらってます。いつかライブでバク転を披露したいんですよね。
──その夢が叶うといいですね(笑)。メジャーの話がきたときはどう思いましたか?
眉村 嘘かと思いました(笑)。でも目標がビルボード全米1位なので、いつかはメジャーデビューしたかったです。
──メジャーデビューして変化はありましたか?
眉村 まず物販道具が郵送になりました。楽屋や控室に水などが置かれるようになりましたし、CDの資料も作ってもらえます。
──音楽的な変化はないんですか?
眉村 ありますよ。前は「爪痕残すぞ」って気持ちでライブをやってたけど、今は「命がけで全員を守る!」って気持ちに変わりました。「全員ボコボコにしてやろう」って気持ちもあるんですけど、それよりも全員を命がけで幸せにしたいです。
──今もアイドルという意識はありますか?
眉村 自分から「アイドルです」っていう人が多いですけど、それは見てくれる人が決めればいいのかなと思います。作り手だと思って私を見ている人もいるし、歌い手だと思っている人もいるから何でもいいやって。なので今は「眉村ちあきです」って言ってます!
▽眉村ちあき(まゆむら・ちあき)
1996年9月12日生まれ。東京都出身。弾き語りトラックメーカーアイドル 兼(株)会社じゃないもん代表取締役社長兼カリスマ。2016年よりソロ活動開始。2018年に出演した『ゴッドタン』(テレビ東京系)が話題に。2019年5月7日、アルバム『めじゃめじゃもんじゃ』でメジャーデビュー。