▽相談
部下がバカすぎて困っています。
【写真】有村昆がお悩みを映画で解決
この相談者の男性は真面目な方なのだとお察ししました。この悩みを紐解いてみると、部下と仕事が上手くいかない、人材を活用できない、ということですよね。それでまず浮かんだ映画が『マネーボール』です。主演はブラッド・ビット、監督ベネット・ミラー。ちなみにこのベネット監督の弟のセオドール・ミラーは、アンミカさんの旦那さんですね。
『マネーボール』は、メジャーリーグに所属するオークランド・アスレチックスという弱小球団が、それまでの常識を覆すセイバーメトリクスという理論を用いて強敵に向かっていくという、実話を元にした作品です。
それまでの野球界というのは、ざっくり言うと大谷翔平選手のようなスターをかき集めれば勝てるという考え方だったんですよ。日本でも資金のある球団が、スター選手をお金で引っ張ってきて豪華な打順を組む、みたいなスタイルが見受けられますよね。ところが、このオークランド・アスレティックスというのは弱小チームで資金力もない。そこにビリー・ビーンという元選手のジェネラルマネージャーが起用されて、新たな理論でチームを再建していく姿が描かれていきます。
アスレチックスはお金がないから、安い選手しかスカウトできない。なので、総合力は低いけど、脚が速いヤツとか、選球眼が優れているとか、一芸に秀でた選手を見つけて連れてくる。それを、データや統計に基づいて適材適所で起用していくんですよ。この作戦が見事に当たって、強豪の4番打者しかいないようなチームに勝っていくという、本当に映画的なストーリーですが、これが実話ベースなんですね。
これを今回のお悩みに当て込むと、この方は無能な部下と仰ってますが、無能なりにも、どこか1個くらい優れている所があるんじゃないかと思うんですよ。仕事は遅いけど会話の能力があるとか、意外とムードメーカーでみんなを盛り上げてくれるとか。ほんとにひとつ、例えば「エクセルがすごく使いこなせる」だけでもいいんです。
やっぱり組織の中で、その素質を見抜いて仕事を与えるのは簡単ではないですが大事ですよね。
あと、この相談者さんは優秀ゆえにひとりで背負いすぎてないでしょうか。トップが優秀すぎる組織は、部下が育たない可能性がありますよね。なぜならトップが出来てしまうから。で、そのトップが倒れちゃうと、もう会社として回らなくなる。だから、僕がやんなきゃいけないというマインドは、緩めるところも必要だと思うんですよね。ダメな部下だったとしても、思い切って任せられるくらいの余裕を持てば、精神がすり減らないと思います。
そこでもう一本、不朽の名作『ビッグ』をお勧めします。
有名な作品なので、ストーリーはご存知かと思いますが、13歳のジョシュという少年が「大きくなりたい」と願ったら、中身はそのままで見た目が大人になってしまった。なんとか元にもどろうと思ってニューヨークを彷徨うんですが、ひょんなことからオモチャ会社に就職。そこの社長に「大人が失ってしまった子供の感性」を見出され、ジョシュは商品開発のアドバイザーに起用されて次々とヒット作を生み出していきます。
この『ビッグ』が素晴らしいのは、会社の組織や立場を忘れて、子供の純粋無垢な気持ちで『こんな商品あったら面白いよね』とピュアに考えることで成功していく所なんですよ。
大人だったら、働いて会社が儲かってボーナスが出たとか、昇給などで喜ぶじゃないですか。でも、そもそもの原点に立ち返るならば、会社に入って、商品開発部に配属されて、考えたことを形にできるという、仕事そのものが楽しいことが理想です。
いつのまにか縛られていた、大人のお約束事を一旦リセットしてみてはいかがでしょう。「なぜ仕事をしているのか」とか「なんでお金を稼いでるのか」とか、そもそもの部分に1回立ち返って考えてみるという視点が、この『ビッグ』には詰まっているなと思います。
相談者さんも、部下のことや、残業のことなど、本来のご自身の仕事以外の部分にがんじがらめになってると思うんですよ。そこで『ビッグ』を観ていただければ、そもそもこの会社にいるご自分の意味とか、本当にやりたいことはなんだろうとか、ピュアな子供心に立ち返って考えてみることができるかもしれません。
あと、このお悩みには、今どきの若い世代との付き合い方が難しいという要素もありますよね。すぐ辞めちゃうとか。相手のためを想って言っていても、ハラスメントになってしまうとか。
僭越ながら僕が思うには、若者に寄り添うというのは、年を取ってる側の義務だと思うんです。やっぱり時代は変わっていくし、年寄り側の考えていることのほうが、全部正しいわけではない(笑)。例えば、僕らは上の世代からウサギ飛び100回とか、部活中は水飲むな、みたいなことを押し付けられたけど、結果間違いだったこともありますよね。
時代と共に僕らもアップデートしていかなきゃいけない。部下に対して命令したりも過剰に期待したりもせず、フィフティ・フィフティな関係を基本にして、ちょっと降りていくという感覚で付き合ってみる。そうすれば、見えなかった良さが見えてくると思います。
この『ビッグ』の例で言うと、子供心を持ったジョシュの純粋さが際立ちますけど、「それいいね!」とすぐにポジションを与えた社長や上司も仕事ができるってことなんですよね。
僕も含めてですが、とかく、常識や習慣に囚われがちですが、まずは肩の力を抜いてオープンにフラットに接してみてはいかがでしょうか。
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