「このマンガがすごい!2023」にもランクインしSNSでも大きな話題を集める、ざくざくろによる人気漫画『初恋、ざらり』。その実写ドラマ小野花梨風間俊介W主演で、7月7日より毎週(金)深夜24時12分スタートの「ドラマ24」にて放送されている。
原作ファンからも支持の高いキャスティングの背景など、テレビ東京制作局 ドラマ室・祖父江里奈チーフプロデューサーに語ってもらった(前後編の後編)。

【写真】小野花梨&風間俊介W主演『初恋、ざらり』3話場面カット【7点】

――『初恋、ざらり』は軽度知的障害と自閉症がある女性・上戸有紗が、新しいアルバイト先の先輩・岡村龍二と出会い、恋をするラブストーリー。小野花梨さんと風間俊介さんのW主演で、どちらの役もすごく難しい役だと思います。キャスティングについて、まずは地上波の連続ドラマ初主演の小野さんから、起用の背景を教えてください。

祖父江 小野さんはテレビ東京のドラマだと『鈴木先生』のほか、『共演NG』では大根仁監督が「小野花梨ちゃんでぜひ!」と推して出演してもらったなど、お芝居が上手くて監督やクリエイターからの支持も高い、実力派の女優さんです。最近ではカンテレ制作・フジテレビ系のドラマ『罠の戦争』で注目され、局内でも「主演をお願いするなら、今なんじゃないか?」と思う人が多い状況でした。
そんなタイミングに、『初恋、ざらり』の企画が出て…。

ドラマの企画で、主演俳優が決まるタイミングはさまざまです。ただ今回、障害を持つからこそ“普通”に憧れ、“普通”になれない苦しさを感じている、非常に難しい有紗役を演じることを小野さんが快諾してくれたから、企画が正式に決まった部分があるくらい、“有紗は小野さんでなければ成立しない!”といった感じでしたね。

――風間さんが演じる、もう一人の主人公・岡村は、存在自体が「優しい世界」みたいなイメージ。だからこそ実写で、リアルな存在感を出すのが難しいキャラクターかと思います。

祖父江 風間さんご本人がすごく優しい人ですし、長年、障害を持つ方との番組に関わられていて、そうした方と向き合う姿勢のベースがしっかりしています。
だから役作りにおいても、台本の読み込みが本当に深いんですよ。岡村役についても、“風間さんじゃないと…”といった面があり、この2人が希望通りにキャスティングできたことは大きかったと思います。

――祖父江さんはTwitterで、「実力派な2人の作る空気がまさに有紗と岡村さんで…」とツイートされていました。現場での2人は、どんな様子ですか?

祖父江 風間さんの台本の読み込みの話をしましたが小野さんも同様で、2人共それぞれのキャラクターを作り上げることにすごく積極的です。台本についての意見や演じる上でのアイデアが、もう通常じゃ考えられないぐらい、どんどん出てきます。

ドラマの現場では与えられた役を演じるだけじゃなく、「これはちょっと違うんじゃないだろうか?」や「こうした方がいいと思う」というアイデアをどんな俳優さんも、少なからず出してくれるんです。
でも今回の作品ほど、演者側から提案をもらったことはないんじゃないか…と。

――小野さんと風間さんの熱量の高さを感じます。

祖父江 それはもう本当に、2人が真剣に役に取り組んでいる表れですし、実力ある2人だから、そうしたアプローチができるのだと思います。この作品は「自己肯定感の低い女の子」のラブストーリーとして多くの方に共感してもらえるだけでなく、 “障害があるが故の特殊性”に葛藤しながら向き合う姿というのも重要な要素です。センシティブで難しいテーマのあるドラマで、2人共それぞれの役を演じることに“強い責任感を覚えている”というのをひしひしと感じていますね。

――主演の2人だけでなく、今作では多くの実力派キャストが出演されています。


祖父江 岡村の父・龍彦役に尾美としのりさん、母・靖子役に熊谷真実さん、兄・龍之介役を浜中文一さんが演じますし、2人の恋を見守る同僚・天野久美役には西山繭子さん。他にも同僚役では尾上紫さんやうらじぬのさん、福澤重文さんなどが職場のシーンを盛り上げています。

原作には書籍版と電子版それぞれにおまけ漫画があり、登場人物たちのキャラクターを丁寧に掘り下げているんです。連続ドラマ化にあたり、そうした部分も盛り込んでいて、例えば、高山璃子さんが演じる有紗の友人・植村友子は有紗よりも障害が重いのですが、友子やその家族の日常のストーリーも描かれるなど、周囲の人たちの姿にも注目してもらえたらと思っています。

――有紗の母・冬美役の若村麻由美さんも、重要な役どころです。

祖父江 冬美という役は、最初は自分勝手で冷たい母親のように見えますが、実は娘の有紗を誰よりも大切にしている人。
複雑な思いを抱えながら、娘のためになるよう考えて行動している女性です。

若村さんは体調が心配になるくらいスケジュールが大変になった中、水商売で生きるはすっ葉な冬美をとても素敵に美しく演じてくださって…。たぶんみなさんがこれまで見たことのない若村さんの演技が、ご覧いただけると思っています。

――台本を拝見して、中盤から登場する冬美の恋人。存在感は控えめかもしれませんが、すごく魅力的なキャラクターだと思いました。

祖父江 冬美は表にあまり出さないけれど、すごく苦労しているはずで「彼女に何か幸せなご褒美があればいいのに…」と、きっと多くの人が思うキャラクター。
たぶん、その願いが込められたのが若い彼氏の存在です。原作では名前がないのですが、ドラマでは長谷川学という役名をつけ、私も大好きな俳優さんに演じてもらっています。

長谷川もそうですが、主人公の有紗と岡村だけでなく、家族や友人、職場の同僚など周りを取り巻く人たち一人ひとりが、どう感じ、どう動くのかというのも、この作品の見どころのひとつだと考えているんです。

――『初恋、ざらり』は主人公2人に加え、多くの人がそれぞれ登場人物に自分を重ね、共感できる要素がある作品だと感じています。幅広い人に観てもらいたいドラマだと思いますが、ラブストーリーとしての見どころも教えてください。

祖父江 「ドラマ24」は深夜ドラマとして、描写が過激な作品もあります。でも今作では、最初から監督や脚本家の方に「女性がラブストーリーとして観た時に安心して、“この2人の恋愛をずっと見ていないな”と思うような絵作りをしてほしい」とお願いして制作しています。

いろんな見方ができる作品ですし、たくさんの人にそれぞれ自由に楽しんでもらいたいですが、特にラブストーリーが好きな人に観てもらいたいドラマになっていると思います。小野花梨さんが演じる有紗、風間俊介さん演じる岡村、不器用だけど愛おしい2人の恋物語を見届けてもらえると嬉しいです。

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