元キャビンアテンダント芸人として、「日系CAと外資系CAの明らかな違い」「死ぬ程海外かぶれしまくってるオツボネCA」などのネタを披露するCRAZY COCO。外資系航空に4年半勤務しドバイの在住経験もあるなど、芸人として“異色”の経歴を持つ彼女のもとには、主に同世代女性のフォロワーから熱い支持が寄せられている。
デビュー2年目にして早くも大きな注目を集めるその理由とは? 本人へのインタビューを通じて、その魅力に迫った。(前後編の前編)

【写真】テレビで躍進する元キャビンアテンダント芸人CRAZY COCO

大阪府に育ち、大学卒業後に商社勤務を経て、外資系航空会社のキャビンアテンダントとして4年半従事、各国を飛び回る日々を送ったCRAZY COCO。しかし2021年に自身が新型コロナウイルスに感染したなど、“死”を身近に感じたことで「悔いが残らない生き方をしよう」と決意。もともと人を楽しませることが大好きだった彼女は、エンタメの世界を志した。

その後、英語力を活かせる外国人就労サポートの正社員を行いつつ、2021年の『女芸人No.1決定戦 THE W』にアマチュアとして参加。初出場にして準決勝に進出し、その場で吉本興業からのスカウトを受け、翌年3月からプロデビュー。
下積み生活わずか半年たらずで“有言実行”を果たしたのには、これまでのキャリアで培った知見が役立ったのだという。

「私は『目標を固有名詞まで落とし込むこと』を信条にしているんです。CAを辞めてから、英語学習のコンサルをやっていたことがあったんですけど、クライアントの英語力を向上させるには『TOEIC〇〇〇点以上を達成するために、こういうトレーニングをする』という具体的なプランを設計するんです。その経験から、コミットメントに対していくつマイルストーンを置くかを考えていくことの大切さを学んだので、それが芸能の世界に入る時も活きたんだと思います。

芸人になってからも、なんとなく『売れたい』と考えるより、例えば『YouTubeのチャンネル登録者数10万人』と目標設定しておけば、遊びに誘われても『金曜の夜は動画再生回数が一番伸びるタイミングだから、断って編集作業をやろう』と思えるんですよ」

彼女の活動は、多くの吉本芸人が本拠地として選ぶ劇場ではなく、YouTubeやInstagramが中心となっている。

「デビュー当初は劇場に立っていた時期もあったのですが、すぐに『自分の居場所はここじゃないかも』と感じるようになりました。
というのも、吉本芸人の多くはNSCに通って、お笑いのノウハウを学んで事務所に所属するので、そのメソッドが武器になっているわけじゃないですか。でもそういうルートを通らずにデビューしている私は、皆が持っているお笑いのノウハウがない。だからこそ、私にしかない強みがあるし、それが一番発揮されるのがネットコンテンツなんですよね。

そもそも順位をつけられるのは苦手なタイプなので『お笑いライブで勝ち抜きたい』という情熱も他の芸人さんと比べたら全然無いし、何より私のネタは1分以内のショート動画に適したものだから、舞台向きではないんですよ。もちろん劇場に立っている人や、大会で結果を残している人を本当に尊敬しているのは大前提ですが、輝ける場所がそれぞれあってもいいと思うんです」

一方で、デビューへの道がスタンダードなルートではなかったぶん悩んだ時期もあった。

「CA時代は他のクルーとお互いに連携し合いながら、機内のハプニングに対応するなど、横のつながりが業務上欠かせないものだったんです。
でも芸人へ転身してからは、養成所に通っていないぶん“同期”と呼べるような横のつながりもなければ、劇場に立つ機会もないので、先輩との縦のつながりもない。最初の頃は『どうしよう』と思っていました。

でも、そのことをチュートリアルの福田(充徳)さんにお話したら『大丈夫やろ。仕事してるうちに出会う人もおるし、その人らにかわいがってもらえばええやん。今さらデビュー時期が近い若い奴と一緒におっても、話は合わんやろうし、お前が気遣うだけや』と言っていただいたんです。それを聞いて『確かに。
もっと仕事を頑張って、多くの人と出会おう』と思うようになりました」

最近では数々の人気テレビ番組に出演し、お茶の間にもその名が知られるように。そんななか、一般企業勤務を経験した彼女だからこそ、芸能界の“当たり前”にカルチャーショックを受けることも多いのだそう。

「例えば、番組でネタを披露するために必要な小道具をテレビ局のスタッフさんにお伝えして、収録当日に現場へ行ったらお伝えしたものと全く別のものが用意されていたことがありました。

もしこれが一般企業だったら、万一オーダーしたものをどうしても用意できない場合は、事前に連絡するのが普通じゃないですか。でもこの世界に入って実感したのは、プロジェクトに関わる人員が多すぎて、伝言ゲームをしているうちに最初のオーダーがどんどん変わっていってしまうことがごく普通ということだったんです。これはテレビ局だけじゃなく、色々なところで同じようなことがよく起こるんですけど『本当に不思議な世界なんだな……』って驚きますね」

芸能人でありながら一般的な社会人としての経験が豊富なだけでなく、常に身の回りの“スタンダード”を見直す実直な視点を持っている彼女が、人々の支持を集めているのも不思議ではない。
自身のSNSにはたくさんのフォロワーからお悩みが寄せられているが、それらへ積極的に回答しているのも、持ち前のサービス精神からだという。

「YouTubeで皆さんの人生相談にのる機会も多いんですけど、それぞれのお悩みに対して私が思ったことを言うことで、少しでも役に立てたらいいなと思ってやっているんです。これからもどんな形であれ、みなさまを楽しくさせるようなことに関わっていけたらと考えています」

【後編はこちら】芸歴2年目でテレビ進出、元CA・CRAZY COCOの徹底した自己プロデュース「リスクヘッジは重要」