モーニング娘。
’23の小田さくらが、猫とともに過ごしてきた24年間について語ったフォトエッセイ『さくらと猫』が7月18日に発売。これまでブログなどで時折愛猫について話していた彼女だが、愛猫との暮らしやミルクボランティアについて詳しく語るのは初めてのこと。猫との暮らしから受けた影響や文章にする上で意識したことなどについて話してもらった。

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──小田さんはもともと猫との暮らしについて、外に向けて発信してみたいと考えていたのでしょうか?

小田 いや、あまりに日常だったので、世に出して面白い話だとか特殊な経験だという自覚がなかったんですよ。自分のお母さんが特殊だとしても、あんまり気づかないじゃないですか(笑)? そういう感じだったので、貴重な経験なんだというのは連載を通して気が付きましたね。あとは自分の中で、「アイドルはプライベートをそんなに出すものじゃない」と思っていたので、あんまり公に話してこなかったのもあります。だから猫のお仕事をいただくまでに10年かかってしまって、これからはもっと出していかなきゃなと。

──あまり発信するつもりはなかったんですね。

小田 あまりお家の中を見せたくないタイプの人なんですけど、猫を写すことは家を写すということじゃないですか。なので、猫と関わっている割には、世に出ている写真の量は少ないかもしれない。今回はうちの子たちの一番可愛く写っている写真も載っているので、すごく珍しいことをしたなと思っています(笑)。

──小田さんのファンだけでなく、猫好きの方や猫を飼おうと思っている方が辿り着いて読むこともあると思うのですが、お話する上で意識されたことはありますか?

小田 「可愛いと思っただけで飼おうと思うなよ」ということを一番伝えたくて。
もちろん猫の可愛さや魅力を伝えたいという気持ちもありましたけど、それは猫が勝手にやるし、私が力を貸さなくてもなんとかなること。だから私は、その先をちゃんと考えてほしくて。

コロナ禍でペットの問題がいろいろ起きていましたけど、私はまず意味がわからなかったんですよ。「ひどい」「かわいそう」じゃなくて「どうしてそういう考えに至るんだろう」と思って。でも、ということは世の中には私が理解できないような考え方の人がいっぱいいるということ。そういう方がこの本を手に取るかはわからないですけど、本にしたことでずっと残っていくから、少しでも理解してもらえるような話し方にできたらなと思っていました。

──『さくらと猫』は猫を飼っていたら分かる大変さなどもしっかりと書かれていますよね。例えば「飼うときには2匹がおすすめ」など、経験があるからこそ話せることもありました。

小田 猫を飼ったことのない方に「2匹から飼ったほうがいいよ」と言うと驚かれるんですよね。それも自分が楽か、負担がかかるかで考えているから1匹で飼おうとするんだと思う。でも猫ファーストで考えたら、もう1匹いたほうがいい。自分ファーストの考えをするんだったら飼わないほうがいいよ、と思います。


──今回はエッセイや漫画、猫ちゃんとの撮影など盛りだくさんの内容ですが、印象的なページはありますか?

小田 一番嬉しかったのは漫画になったことです。猫漫画を散々読んできたので、「うちの子が二次元になった!」と思いました(笑)。

──誌面になったものをご覧になって、改めて気づかされたことはありますか?

小田 私は猫に対して、全肯定的ではないんだなと。好きだけど、害獣だとも思っているし、弱い動物を捕食しているのを見ると猫が悪いと思うので、猫バカになりきってない猫バカなんです。地球に猫は多すぎるし、でもそういう状況になってしまったのは人が悪いから、人がなんとかしようねと思っていますね。

一方で私は本当に猫ファーストで、幸せにできないなら猫に関わらないでくれと思っているんだなというのをすごく感じました。でも誰も猫と話せるわけではないから、例えば私だったら猫をケージに入れないで飼ってほしいけど、本当にケージの中がイヤかはわからない。だからあくまで私の考えとして、精一杯自由にしてあげてほしいということを伝えたいんだなと思いましたね。あとは猫のことを喋ると「アイドル小田さくら」ではない部分が露出するなと感じました。

──それはどういうところで感じましたか?

小田 ちっちゃいときの話とかですね。私は普段の自分とアイドルである自分を切り離したいタイプで、プライベートの自分があんまり理想的じゃなくって隠し気味だったんです。だけど猫のことを話すとどうしてもそっちに派生していって、これまで話さなかったモーニング娘。
以前の私のことをいっぱい話せたかなと思います。

──プライベートとステージでの自分を切り離したいという考え方は、デビュー当時からですか?

小田 勝手にそうなっていったと思います。特に加入当初は思春期だったので、母に対して反抗心があったんです。だからこそ、ステージ上では理想的な自分でいようとしていた。ライブ中に母が見えたときなんて、もうとんでもない感情になっていたんですよ(笑)。「今の自分は誰なんだ」「こんなことしてる姿、絶対に母に見られたくない」と思ったり、でも見に来てくれているのはありがたいし、だけどお母さんという存在を思い出しただけでもうすべての集中力がなくなったり……。でもイヤなことや落ち込んでいることをステージに持ち込むのはめちゃめちゃ嫌いで。それなら「じゃあ出るなよ、帰ればいいじゃん」と自分に思っていましたね。

──デビュー当初から落ち着いた印象があったので、小田さんにそういった葛藤があったのは意外です。

小田 それをいかに外に見せないかだと思っていたんで、よくできていたんだと思います(笑)。でも気に入らないものは、自分に対してでもはっきり気に入らなかったんです。

──それは自分以外の方に対してもそうなんですか?

小田 他人に対してはあんまりないけど、ステージではありますね。
イヤなことがあって、泣いた顔のままステージに立っていた先輩メンバーに「ステージには泣き止んでから出てほしい。泣くなら出てほしくない」と伝えたことがありました。そのときは視野が狭かったから、ファンの人はお金と時間をかけて見に来ているのに、泣き顔を見せて心配させるなんてと思っていたんですよね。

今はそういう人間らしさやメンバーの葛藤を見られて嬉しいファンの方もいるとわかった上で、落ち込んでいるメンバーにはステージに立つ前に改めて「ステージだよ」「笑って」と声をかけたりはしています。でもそれは受け入れてくれなくてもいいんです。ステージに対するこだわりは全員にあって、ぶつかり合うことは悪いことじゃないから、私は思ったことを言うし、向こうも何を言ってくれてもいいしと思っています。

(取材・文/東海林その子)
▽小田さくら(おだ・さくら)
1999年3月12日生まれ、神奈川県出身。A型。モーニング娘。11期メンバーとして加入、グループきっての歌姫として活躍している。

▼『さくらと猫』(KADOKAWA)
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