今日まで様々な学校を舞台にした教師が主人公のドラマが放送されてきた。7月15日から放送開始した『最高の教師 1年後、私は生徒に□された』(日本テレビ系)はこれまで学園ものとは一線を画すドラマになるかもしれない。


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 本作は1話の冒頭から鳳来高校3年D組の担任教師・九条里奈(松岡茉優)が卒業式当日を過ごしている様子から始まる、といういきなりクライマックスのような幕開け。浮かれている生徒達を吹き抜け廊下から眺めている里奈の背後に人影が現れ、里奈を突き落とす。里奈は地面に落下している最中、自分を突き落とした犯人を見ようとするも顔はわからない。ただ、腕には「D組卒業おめでとう」と記されたリボンが見えるのみ。

 自分の教え子に殺されたことを悟りながら落下して意識が途切れた里奈が、意識を取り戻すとそこは1年前の始業式の教室だった。里奈はタイムスリップしたらしく、1年後に自分を殺す容疑者、もとい生徒と本気で向き合うことを決意。1週目は“なんとなく”でしか生徒と接していなかった里奈が、「なんでもする」という覚悟を持って生徒と毎話向き合う物語となっている。

 学園ドラマであれば教師と生徒がぶつかり合うことは当たり前。それでも『最高の教師』が秀逸な点はまずは生徒一人一人が感情を吐露する時間が長いことだ。

1話目ではクラスメイト全員からいじめを受け、“一週目”では不登校になった後に自殺してしまった鵜久森叶(芦田愛菜)が、「ずっと独りで泣いていました。何の涙かわかりません。悔しいのか、悲しいのか、辛いのか、怖いのかわかりません。
みんなは私のこの姿が見たくて、毎日私に嫌な言葉をぶつけていたんでしょうか」といじめに遭っていた時の苦しい思いを吐き出すシーンが5分以上も映し出される。

 セリフの秀逸さと芦田の演技力で引き込まれ、いかに鵜久森が苦しんでいたのか、いじめという行為の残酷さをこれでもかと突きつける。タイムスリップというSF要素はあったが、小細工なく真っ直ぐにメッセージを伝える心を打つ内容だった。

 1話の芦田の演技は圧巻だったが瓜生陽介(山時聡真)がメインの2話も印象に残った。瓜生は母子家庭でまだまだ小さい弟達のため、アルバイトをいくつも掛け持ちして家計を支える苦労人。ただ、瓜生の母親(中島亜梨沙)は瓜生が稼いできたお金を化粧品や服、さらには知らない男に使う、といういわゆる“毒親”。その母親が原因となり、1週目では親の借金を理由に転校してしまう。しかし、瓜生は内心今のクラスメイト達と一緒に卒業したいため、転校はしたくないと考えている。

 そのため、瓜生が転校してなくても良いように、里奈は母親と向き合えるシチュエーションをセッティング。そこで瓜生は母親にクラスメイト達と一緒に卒業したい旨を伝える。また、その場に瓜生の友達・向坂俊二(浅野竣哉)も登場。

「こいつと遊んでいる時間が一番大切な時間なんです。
だから、一緒に卒業させてください」と言って母親に頭を下げ、熱い友情を目の当たりにした母親は「ごめんね、母さん、なんも知らなくて」「ちゃんと1年学校通って卒業してきなさい」という。

 無事に瓜生の思いが届いてめでたしめでたしと思いきやここでは終わらない。瓜生は「なんで母ちゃんが許す側なんだよ」と口にして、「親父と離婚する時もそうだよ。なんでいつも俺らは、大人が決めたことに『はい、そうですか』って従わなきゃいけないんだよ」と爆発。そこから、「許すわけねぇだろ。俺のほうがあんたのしたこと全部を」「許せるわけねぇだろ。てめぇが頭下げるんなら、俺に、俺たちに本当にすまねぇって思うなら、そんな言葉で終わらせようとしてるんじゃねぇ」と絶叫。

1話の芦田同様、山時の演技の迫力が凄まじく、瓜生陽介という人間のこれまでの苦労や葛藤が伺え、「よくぞ言ってくれた」というカタルシスも視聴者に与えてくれた。

 個人的には浅野の演技もさることながら、“親を許さない”というセリフ、展開にしたことが斬新だった。「親を悪く言うものじゃない」「どれだけ酷いことをされても血のつながった家族じゃないか」など、家族の粗相を“水に流そう”と押し付ける冷酷な雰囲気はこの世界に蔓延している。

“家族愛”を描くほうが手軽に感動でき、作品としての収まりが良い。そういった作品たちが「親を悪く言うものじゃない」という風潮を根付かせてきた要因と言って良い。
しかし、家族だからこそ許せないことは多い。2話ではそういった“常識”に待ったをかけるメッセージ性を感じ取れた。3話以降でも私たちの感情を抑えるつける常識を壊してくれるストーリーを期待したくなる。

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