1曲目は、5thシングル「恋の呪縛」。友人と同じ人を好きになり、諦めようとしていたがその彼に告白され、友情と恋の狭間で揺れる少女の心を描く。1コーラス目、「告白なんて しないでよ」のフレーズで一気に引き込まれる楽曲だ。デビューした2004年にリリースし、小学生だった彼女たちにとっては少し背伸びした印象のある歌詞が、10年以上歌い続けていくと歌の中の少女から余裕すら感じるようになる。特にサビで「恋の呪縛」と歌う菅谷梨沙子が、年々貫禄と美しさを増してくのは見どころのひとつだ。
初期の代表曲のひとつ「ギャグ100回分愛してください」は、コミカルな曲が多いBerryz工房の中でも「ソドソド」「マロングラッセ ラッセ」など、言葉の面白さが目立つ。特に徳永千奈美がキュートに歌う「のにゅ。のにゅ。」は、意味は分からないがつい言ってしまいたくなるフレーズとして長年愛されてきた。この意味は歌っている本人もずっと分からないでいたが、リリースから13年後、つんく♂が“のにゅ”の使い方をtwitterで明らかにしている。そしてコミカルさゆえに歌うのが難しいこの曲で、メインパートを歌っているのは嗣永桃子。リリース当時の安定した歌唱力は13歳とは思えず、今聴いても驚かされる。
続いて紹介したいのは2007年リリースの「付き合ってるのに片思い」。
23rdシングル「本気ボンバー!!」はまさにライブ曲。拳を突き上げた7人が、歌で会場をひとつにまとめあげる姿は圧巻の一言。“ライブを作るのはファンだ”と言われることもあるが、Berryz工房のライブで主導権を握っているのは確実に彼女たちだ。強い個性がトゲトゲしくなりすぎず、ただ着いて行きたい!と思わせてくれたのは、なにもかもを包みこむ力でバランスをうまく取ってくれた須藤茉麻の存在が大きいだろう。力強い曲でも柔らかい歌声と笑顔で彼女がステージにいてくれたことが、Berryz工房のステージの魅力のひとつだと思う。 <本気ボンバーMV> 2011年にリリースされた「ヒロインになろうか!」は、クールな魅力が凝縮された楽曲。「さあ ヒロインになろうか」と歌って、「うん、なれそう」とつい納得させられてしまう、彼女たちにしか歌えない曲のひとつだと思う。Berryz工房では菅谷、夏焼、嗣永がメインパートを歌う曲が多いが、この曲でセンターを勤めたのは熊井友理奈。
最後に紹介したいのは、29thシングル「cha cha SING」のカップリングに収録された「Loving you Too much」。「cha cha SING」と同じく、タイの人気歌手の曲をカバーしたものだ。コミカルさもかわいらしさもカッコよさもすべてが詰まった、これぞBerryz工房!ともいえる曲で、10周年を記念して行われたファン投票でも1位を獲得している。この曲では彼女たちの楽曲ではあまりないラップパートがあり、それを担当しているのは夏焼と清水佐紀。落ち着いたトーンとダンスで培われたリズム感で繰り出す清水のラップは、彼女の、そしてグループの新しい魅力のひとつになった。
10年以上も活動を続けているからこそ、ここでは紹介しきれない名曲もまだまだある。また、長く活動を続けていたからこそ、デビュー当時から歌い続けている曲を見比べる楽しさもある。歌やダンスの成長はもちろん、披露する場によって衣装や演出の変化も彼女たちのライブならではの面白さだ。特に活動後期では彼女たちの意見も反映され、よりBerryz工房らしい個性が発揮されているので、そんな10年の歩みもぜひ楽しんでほしい。そしてこのユニークで愛すべき楽曲たちが、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」でどのように新たな味付けがされるのか、今から楽しみだ。