お笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃん(山崎静代)が8月2日に初の自伝的イラストエッセイ本『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』を発売した。今年5月には初の個展を開催するなど、近年はアート活動も話題となり、今回のエッセイ本でもしずちゃん本人が挿絵を担当している。
また本書では、相方である山里亮太との関係性から、本格的に挑んだボクシング、そして結婚生活についてまで赤裸々に綴られている。(前後編の前編)

【写真】近年はアート活動も話題に、『しずちゃんの、創造と破壊 展』の展示作品

アイドルになりたかった幼少期から、片思いのバンドマンの追っかけをしていた学生時代、そして相方・山里亮太との出会い……。芸人として、そして “山崎静代”という1人の人間として、これまでを包み隠さずに書いたしずちゃん。当初は「ちょっと振り返ってみようかな」という軽い気持ちで取り掛かったという。

「自分の今までの人生が波乱万丈というわけでもないから、本を出すことに大丈夫かな?という不安がありました。小さいころから平和にぬくぬくと育ってきて、そのなかで自分のやりたいことに向かっていった結果、気づいたら今があったという感じだったから、そんな私の話を書いても、面白くなるのかなって。


でも、芸人を目指して山ちゃんと出会ったことと、ボクシングの梅津正彦トレーナーとの出会いが私の人生のなかでは大きな波だったので、そこはちゃんと書いておきたい、という気持ちはありました」

『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』というタイトルにもこだわった。

「やっぱり“5000グラム”というのはインパクトがあるかなと。自分が大きいっていうことが、今までの人生すべてにつながっていたので、まずはその言葉を入れたいと思いました。あとは、“気まま”ですね。私はあんまり目標を立てて何かをする、ということができなくて、流れに身を任せていたらたどりついた、みたいなことが多いんです。

ボクシングもダイエットの一環で始めたことからドラマのお話をいただいて。
それがだんだん楽しくなったころにオリンピックで女子ボクシングが正式種目になると言われて。最初からボクシングをやるぞ!という感じでもなかったし。結果すごくいい出会いやったし、その流れに身を任せてよかったなって。そういう気ままなところに運命を感じるのが自分なのかな、と思ったのでタイトルに入れました」

今年は相方である山里亮太と、オードリー若林正恭の自伝的ドラマ『だが、情熱はある』も話題になった。ドラマでも描かれた南海キャンディーズの結成エピソードも、本書ではしずちゃんからの視点で語られている。

「山ちゃんに比べて、私はこれまであんまり自分の気持ちを表に出してこなかった部分もあるので、読んでいただくと『こんなこと思ってたんや』と感じるところが多いかもしれないですね。
サイン会をやったときにファンの方から『しずちゃんはいつも笑顔やから、仏のような全部受け止めてくれる器の大きい人だと思ってたけど、ちゃんと嫉妬とかする普通の人なんだと思えて、うれしくなりました』と言ってもらえたんです。それを聞いて、ここまで全部自分の気持ちをさらけ出してよかったなと思いました」

その言葉通り、これまではあまり感じさせなかった負の気持ちも赤裸々に綴った。「山ちゃんみたいにあんなに表には出さないですけど(笑)。やっぱり悪い気持ちも芽生えますよ」と笑う。

「学生時代はひねくれててちょっと見下すようなことも思ってたし、同世代で自分たちよりもどんどん売れていく子らに嫉妬することもあったし。でも、しずちゃんは世間の声に流されないキャラ、みたいなイメージがあったから、それを守らなきゃいけないんじゃないか、という気持ちもあって。
どこまでさらけ出すべきなのか、というのはいまだに葛藤があります。でも、今回のエッセイ本は自分の本なので、思っていることは全部言おうって決めました」

山ちゃんからの率直な感想も楽しみだという。

「あのとき、実は山ちゃんのことをこう思っていた、という気持ちも全部書いているので、山ちゃんが読んだらどう思うのか気になりますね(笑)。南海キャンディーズは今年結成20周年なんですよ。エッセイ本のためにいろいろと振り返りましたけど、山ちゃん含めて出会った人たちには感謝しかないですね。その縁はこれからもずっと続いていくでしょうし、これからも一緒に生きていきたいなと改めて思いました」

お笑い、ボクシング、俳優、アートと幅広く活躍しているからこそ、本書の内容もバラエティーに富んだものに。
「何がきっかけでもいいので手にとってもらえたらうれしい」とアピールする。

「この部分は自分に刺さるけど、これは分からんな、というのはやっぱり人によって違うだろうし、どっか1つでも共感できるところを見つけてもらえたらいいなと思います。本を読むときって共感する部分を探したり、自分と比べながら読んだりすると思うんですよ。私もそうやから、自分に置き換えて読んでもらえたらいいな……って、すごくいろんな本を読むみたいな言い方しちゃいましたけど、そんなに読まないから説得力ないかもしれへんな(笑)。でも、これを読んで『しずちゃんのこういうところ、分かるわ』みたいに思ってもらえたらうれしいです」

取材・文/吉田光枝

【後編はこちら】しずちゃんが語る結婚後「今、山ちゃんとすごく仲がいい。昔やったら考えられない」