アイドルグループKing & Princeの元メンバーで9月にはジャニーズ事務所を退所予定の岸優太の映画初主演作となり、俳優としての新たな一歩を踏みだす記念すべき作品でもある『Gメン』が8月25日より公開されている。

【写真】岸優太の映画初主演作『Gメン』場面カット【13点】

今年になって放送された主演ドラマ「すきすきワンワン!」での演技が評価された岸ではあるが、今作は映画というフィールドの中で、どう活躍を見せてくれるのかと期待と不安が混じり合うなかで、いきなり頭角を見せつけた代表作といえるだろう。


今作『Gメン』は、「フジケン」や間宮祥太朗主演でドラマ化もされた「ナンバMG5」など、平成の少年チャンピオンにおけるヤンキー漫画を支えてきた漫画家のひとり、小沢としおによる同名漫画を映画化したもの。

「ハイスクール!奇面組」や「今日から俺は!!」といった、昭和後期~平成中期頃までのヤンキー漫画、学園ギャグ漫画のお決まり王道テイストもありつつ、LGBTQ、女性蔑視などのジェンダー問題についても言及した現代的な視点も入った新時代ヤンキー漫画となっている。

それらに加え、社会現象を巻き起こした「おっさんずラブ」の劇場版『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』(2019)や、橋本環奈主演で映画化された『バイオレンスアクション』(2022)を手掛けた瑠東東一郎が今作の監督を務めていることも大きく影響しているのかもしれない。

「おっさんずラブ」の場合は、男性同士の恋愛を自然な恋愛感情として描いていた作品であったが、映画としては前作にあたる『バイオレンスアクション』においてもミソジニーを扱うなど、独自の視点を持っているからこそ、ヤンキー漫画=男臭いというイメージを払拭するような作品に仕上げてきている。

おそらく狙いなのだと思うし、そうであってほしいのだが、コテコテなギャグシーンはやや寒気を誘う。矢本悠馬の変なノリも全開で恥ずかしくなるものの、実はそれがひとつのアクセントとなっていて、コミカルとシリアスなシーンの対比として活かされている。
そこに役者陣のアドリブが飛び交うことで、独特の雰囲気や間を生み出すことに成功しているといえるだろう。

ただ今作は、岸優太ありきの作品であることは間違いない。むしろ当て書きのようにも思えてしまうほど。

岸といえば、今までにも映画に出演したことはあったものの、『劇場版 仮面ティーチャー』(2014)や『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016)のようにドラマの映画化作品が多いし、実際にドラマ出演の方が多い。

今作のPR周りで、連日のように地上波に出演している岸。バラエティ番組などでの表情を観ていて感じるのは、いつも自然体だということ。


そんな、演技というよりも普段の自然体な雰囲気が存分に活かれたキャラクター構造となっていることからも、間違いなく岸優太が持つ、もともとのキャラクター性ありきで制作されているとしか思えない。

そして今作の魅力のひとつが、主人公が一番ミステリアスだということだ。

主人公・勝太のバックボーンが、ストーリーが進むにつれて断片的に明らかになっていくのだが、一気に見せるのではなく、小出し、小出しに見せていくことで、主人公に対しての興味を引き立たせている。

原作が4年間連載されていた長期作品ということもあって、本作は全体像を大まかに描くというよりも、細かいエピソードを繋ぐかたちで、ダイジェストや短編集的な構成になっている。

そういった構成になっている背景としては、YouTubeのショート動画やTikTokなどの短い動画に慣れてしまって、現代人の集中力が維持できなくなっているという社会問題が影響している部分もあるのかもしれない。良い流れとは言い辛いことではあるのだが、今作の場合は、主人公の抱えているものをはっきりと描かないことで想像させるのと同時に、続編への期待すら感じさせるものとなっているので、ダイジェスト的な構成が逆に良かったのかもしれないと思う。


まだまだ謎が残る作品であるが、もし続編が制作されるとしても、岸優太の存在がなければ間違いなく成立しない。映画初主演でそこまで感じさせているのだから、今後の役者業にも期待ができるはずだ。

【ストーリー】
名門・私立武華男子高校。4つの女子高に囲まれ、入学すれば“彼女できる率120%”はカタいというこの高校に、「彼女を作る!」という理由で転校してきた高校1年生の勝太。しかし、勝太のクラスは、校舎も隔離され教師たちも怯える、問題児集団=【1年G組】だった。荒れ果てた校舎とクセが強すぎなクラスメイト達に唖然とする勝太 。
自らを“校内の肥えだめ”と自虐するクラスメイトたちに、「もっとプライド持てよ!這い上がってやろうじゃねえか!」と吠える勝太は、彼女が欲しいという一心だけで、転校早々G組をひとつにしていくのだが……。

監督:瑠東東一郎
脚本:加藤正人、丸尾丸一郎
出演:岸 優太 竜星 涼 恒松祐里 矢本悠馬 森本慎太郎 りんたろー。/ 吉岡里帆 高良健吾尾上松也 田中 圭
原作:小沢としお『Gメン』(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)
主題歌:「ランラン」ザ・クロマニヨンズ(HAPPYSONG RECORDS / Sony Music Labels Inc.)
配給:東映
公式サイト:https://g-men-movie.com/
(C)2023「Gメン」製作委員会 (C)小沢としお(秋田書店)2015
8月 25 日(金)全国ロードショー

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