結成30周年、生半可な数字ではない。「あたりまえ体操」のヒットでも知られ、売れっ子芸人からも「劇場番長」と呼ばれるコンビ芸人・COWCOW
神髄であるスベり知らずのネタをひっさげ、来る10月8日(日)今池ガスホールでの名古屋公演を皮切りに、全国4都市4公演のメモリアルな全国ライブツアーを開催する彼らに、ライブに向けた思いと芸人としての矜持を聞いた。(前後編の後編)

【写真】結成30周年、五十路目前のCOWCOW

【前編はこちら】COWCOW、芸歴30年の貫禄「人気若手が出てきても、自分らは自分らでしかない」

30年という月日は人を変えるには十分長い。しかし中学時代の同級生として関係が始まったCOWCOWの2人は、五十路を手前にして今もコンビであり続けている。

善し お互い学生から独身時代、結婚して家族持って、というのを通ってきているので、その時々のポイントで関係は少しずつ変わってきてるとは思います。

多田健二(以下、多田) 大きく変わらないのは、やっぱり単独ライブがあるというのが大きいです。常にネタを作り続ける作業が、お互いの新鮮さを保つというか。新ネタを試すときはやっぱりドキドキしますし、それがあるからこそ続けられると言いますか。

善し コンビで新ネタを作るのは当たり前なんですけど、やっぱりカロリーが一番高い動きではあると思うんです。そのネタが運が良ければブームになったりとか、皆さんがよく目にされるネタになるという事なんで。それを止めると、関係を続けるのは大変やと思うんですよ。だから単独が年に1回あるって言うのは、僕たちの中ではちょうどいいペースなんですよね。

多田 もちろん、意見が食い違うこともありますよ。
「俺はこれをやりたいけど却下か…」みたいな。でもそれはお互い様やし、コンビやからどっちかがテンション上がってどっちかが低いと、そのネタもうまくいかないと思うので。

善し ただ、おもしろいと思うものに関しては、昔から2人ともあんまり変わってないというか。僕らが急にシュールなコントを始めたら、「お前らどうしたんや?」ってなるやろうし(笑)。

多田 そうですね(笑)。まあ「いい意味で変わらず、相変わらず面白いネタを作ってるね」って思ってもらえるのが理想じゃないですか。

本人たちは「変わらない」と言うが、実はいろいろと変化をしてきた30年間ではあった。漫才・コントだけではなく、おなじみの「あたりまえ体操」然り、最近はTikTokでオリジナルのショートネタを他の芸人に先駆けて行うなど、時代に即して自分たちの芸を、いろんな角度で魅せることに腐心してきたとも言える。

善し 今は世代でエンタメの楽しみ方がよりばらけてきた時代。年齢が上の方はまだテレビがちゃんとエンタメの中心で、YouTubeが中心の世代もいれば、もっと若い子はTikTokしか見なかったり。だから、若い子たちしか見てないからやりたくない、とか思うことはなかったです。

多田 TikTokは、水が合った、という感じですね。
オリジナルの音源を作ってそれをみんなにまねしてもらう、という方向で最初からやってます。わりと一気にフォロワーが60万人くらいになり、そこで一回頭打ちになって、今度は「海外向けにやろう」と。過去にインドネシアであたりまえ体操がちょっと当たったというのもありましたしね。そしたらそこからまた120万人まで伸びました。

僕らは「M-1」の出場資格が無くなったときに、「東京に来たからには、何でもやらなあかんやろ」という風に意識が変わったんですよ。関西にいたときは「漫才をきちんとやっていれば」ってイメージがありましたけど、東京に来たからにはモノマネもギャグも何でもやる、と。その考えがいまだに癖になってる気がします。中には全然ダメだったものもありましたけど、それでも何かが水に合ってるとわかったら、やり続けたほうがいいんじゃないかと思ってます。

善し 最近やったら「千鳥のクセスゴ!」(フジテレビ系)とかね。ああいう尺の短い無観客ネタというか。かつては「あらびき団」(TBS系)なんかもにも、出させてもらってましたけど、ああいう一般的じゃない見せ方のネタ番組に対する順応性なんかは、知らない間に身についていたかもしれません。

多田 なにか話を頂いた時に、「それはないわ」とか「できないです」って言いたくない、という気持ちはありますね。
できるだけやりたい。コンビで出たらなんとかなるやろな、って。そこでいい結果を出したい欲が未だにあるし、そういう「常にウケたい」という気持ちも、単独ライブを毎年やり続けるから、なくならないのかもとは思いますね。

30周年ライブツアーは、COWCOWにとって終点ではなく通過点、あるいは今後も続くルーティンみたいなものなのかもしれないが、それでは本人たちは今後、どのような未来をイメージしているのか。

多田 僕は、単独ライブの日数を増やしたい、というのがありますね。今回、4公演やらせてもらうんですけど、逆に言うと4日しかない。普段の寄席で笑ってもらう気持ちよさも当然ありますけど、僕たちだけを見に来てくれるお客さんの前でネタをやる、というのが一番楽しいので。よく言うんですけど、寄席のネタっていうのは、芸人にとってシングル曲なんですよ。それが自分たちの単独ではアルバム曲もできる。1時間半から2時間の間、自分たちだけでお客さんを楽しませられる、という快感に勝るものはないと思っています。またそのアルバムからシングル曲が出たり、シングルを聞いてくれたお客さんがアルバムを聞きに来てくれたり。そういう相乗効果を生みたいですしね。
だから、35周年の時はもっと、1カ月公演くらいやりたいです。

善し 30周年を終えた後…そうですね、ここがゴールという感覚は正直ないです。ただこれからも継続に向かって頑張らなあかんな、というか。今回みたいな周年記念は今後も訪れるんですけど、ただやっぱり今後も目的は継続すること。吉本の師匠方、大先輩方が舞台でネタをやってるのを見てても、やっぱり継続だな、と。舞台でウケなくなったらゴールでいいと思うんですよ。そうならないために、この毎年のライブが僕らの糧になってるのかな、と思いますね。
編集部おすすめ