9月9日に放送された『最高の教師 1年後、私は生徒に□された』(日本テレビ系)の8話では、クラスの中心的な人物で、鵜久森叶(芦田愛菜)の死との関連性が疑われている相楽琉偉(加藤清史郎)が初めて自分自身の言葉を口にする内容だった。

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鵜久森が死んだ日、相楽と交流のある浜岡(青木柚)が制服を着て鳳来高校に侵入していることが発覚。
3年D組のクラスメイトは相楽に疑いの目を向け、東風谷葵(當真あみ)は「鵜久森さんがこんなことになったのは、あなたのせいなの?」と問い詰める。ただ、相楽はすまし顔で「俺のせいで死んだ」と答えるも、詳しい事情は口にしない。居心地の悪さを感じた相楽は教室を後にするが、教室に残されたクラスメイトは相楽に対する疑念を強める。

九条里奈(松岡茉優)はその発言の真意を聞くため、さらには自分自身の弱さと向き合うことの必要性を伝えるために相楽の家を訪問。里奈の言葉が心に響いたのか、相楽は次の日学校に足を運び、クラスメイトの前で「あいつはずっと何かを変えようとしてた。その変えたいと思う空気を作ったのは俺だ」「あいつはその空気を変えるために、あの日も何かと戦おうとあんなとこに行ったはずだ。
だから俺のせいと思った」と「俺のせいで死んだ」と語った真相を説明する。

続けて、「周囲の人間を傷つけてきた最低な人間」ということから目を背けるために、クラスメイト達を傷つけてきたことを告白。「自己満足に聞こえるかもしれねぇが今言わせてくれ。みんなすまなかった」「俺が思ってること隠さずにすべて話して謝ることしかできねぇと思った」と涙を浮かべながらこれまでのことを謝罪する。

それから、相楽と仲の良い迫田竜輝(橘優輝)、瓜生陽介(山時聡真)、向坂俊二(浅野竣哉)も一緒になって酷いことをしていた過去を土下座しながら謝る。謝罪するの問題児達ばかりではない。
相楽が鵜久森の死に関係していると疑っていた東風谷や阿久津由利(藤﨑ゆみあ)らも「ごめんなさい」と相楽に頭を下げた。

クラスメイトに謝って終わりではなく、相楽が一番謝りたい人物、鵜久森に謝るために鵜久森家に里奈と一緒に行く。鵜久森の母・美雪(吉田羊)に鵜久森をイジメていたことを告げる。そして、仏壇の前に座った相楽は泣きじゃくりながら「ごめんなさい」と心からの謝罪を続けた。

教室内では「すまなかった」だったが、鵜久森の前では「ごめんなさい」という謝罪の言葉口にしていた相楽。クラスメイトには心から謝罪していないわけではなく、本当に鵜久森に悪いことをしたと思っているからこそ「ごめんなさい」という言葉が出たのだろう。
しかし、「ごめんなさい」と口にした時には、すでに鵜久森がこの世にいないというのは残酷であり、皮肉のようにも感じる。

本作では“謝罪”という行為に言及されるシーンが多く、8話では“謝りたいと思った時にはもうその人はいない”という展開だった。プライドが邪魔をしたり、加害者であることに無自覚だったりなど、様々な理由からすぐに謝罪できないことはよくある。その一方で、「謝るべき」と気づいた時には手遅れになっているケースは珍しくなく、消化不良の罪悪感を抱きながら生き続けなければいけない。

そうならないためにも、相楽が教室内で謝罪した時に里奈が「許す、許さないはそれぞれあっていい。大事なのは考え続けることだと私は思います」と話していた通り、考え続けるしかないのだろう。
誰かを傷つけないように、誰かを傷つけてしまったことに気づけるように、想像力を働かせ続けるしかないのかもしれない。

8話の教室内での謝罪シーンにおいて、相楽だけではなく、迫田や東風谷も「誰に」「何について」ということが明確な謝罪をした点は特に素晴らしい。3話で鵜久森は「よくネットとかでも『お騒がせしてすいません』って傷ついている人が謝るのを見て、いつも納得いかなくて」と“謝罪を一方的に求める風潮”に対する違和感を口にしていた。

SNSが一般化したことにより、事あるごとに謝罪を求める人は一定数おり、仕方なしに「誰に」「何について」が不明確な謝罪をさせられている人は多い。そういった謝罪を見聞きする度、「これは誰のための、何のための謝罪なのだろう?」と疑問符がついてしまう。その点、そういった“お詫び”とは違い、彼ら彼女らの謝罪はとても誠実だったように思う。


簡単に謝罪を求めるように昨今、謝罪に対する認識を正してくれる『最高の教師 1年後、私は生徒に□された』。クライマックスに徐々に向かっている中、どのような“謝罪の在り方”を示してくるのかも最後まで注目したい。

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