はるか昔から人類を悩ませてきた「男女の友情は成立するのか」という問題。人々の関心は現代でも変わらず、10月12日からスタートした新ドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系)でも、1つの大きなテーマとして扱われている。


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これまで日本のドラマでは「男女の友情」はどのように描かれてきたのだろうか。結論から言うと、そこにあるのは“男女関係の業”が織り成す泥沼の人間関係ばかりだった。

例えば2008年に放送されたドラマ『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)では、シェアハウスを行う男女4人の人間関係が描かれていた。シェアハウスの住人は、DV彼氏を持つ主人公・藍田美知留(長澤まさみ)と、そんな彼女に恋愛感情を抱いている親友の岸本瑠可(上野樹里)、中性的な雰囲気の男性・水島タケル(永山瑛太)、サバサバ系女子の滝川エリ(水川あさみ)というメンバー。

恋愛関係の問題を抱えた男女4人が、ひとつ屋根の下で身を寄せ合い、友情を育んでいく物語……にも見えるものの、実際はそうはいかなかった。

結局このドラマでは、彼氏のDVから守ろうとしてくれる優しいタケルに主人公が惹かれ、瑠可はそんな主人公が好き、という三角関係に発展。
さらにサバサバ系のエリも酔った勢いでタケルにキスをしており、男女の友情は成立していなかった。

また、2004年の名作青春ドラマ『オレンジデイズ』(TBS系)にも印象的な一幕がある。そもそもラブストーリーなので主人公の結城櫂(妻夫木聡)とヒロインの萩尾沙絵(柴咲コウ)が最終的にくっつくのはわかるだろうが、問題は2人の友人である相田翔平(成宮寛貴)と小沢茜(白石美帆)だ。

しっかり者の茜は、女遊びの激しい翔平によく厳しい言葉を投げかけていたものの、なんだかんだで気の置けない友人といった雰囲気だった。しかしお互いを知るうちにいつしか恋仲へと発展。かねてより茜に好意を寄せていた矢嶋啓太(永山瑛太)と三角関係を繰り広げており、やはり男女の友情は成立していない。


また2023年1月期に放送されたドラマ『恋と友情のあいだで』(フジテレビ系)も、堀田茜泉澤祐希の演じる男女が、文字通り恋愛と友情の間で揺れ動きながらも最終的に結ばれている。

あくまでもドラマなので、物語をおもしろくするためにあえて恋愛に発展させている部分もあるのだろうが、ことごとく恋愛に発展していく「異性の友人」を見ていると、やはり男女の友情を成立させるのは難しいのかもしれないと思えてしまう。

そんな男女の友情の難しさを如実に描いているのが、現在放送中のドラマ『いちばんすきな花』だ。同作は多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠が演じる4人の登場人物たちが「友情や恋愛」に関する人間関係の壁に直面しながらも、それぞれの問題と向き合っていく物語。

たとえば今田美桜演じる深雪夜々は、純粋に友達になろうとしているだけなのに、男性から「異性」として見られ、女性からは妬まれてしまうという切実な悩みを抱えている。第1話ではただの友達として、同僚の相良大貴(泉澤祐希)と2人で飲みに行くのだが、彼のほうは「2人きりで会ってくれる=向こうも“その気”がある」と勘違いしていたようだ。


帰り際に相良は「軽い気持ちで男と2人で会うのよくないよ」「友達って言うの、自分が男と遊ぶ言い訳にするのよくないよ」と夜々を責めていた。

このようにたとえ自分に恋愛感情がなくても、相手も同じ気持ちとは限らない。どこまでいっても男と女であり、常にどちらかが“異性”として見てしまう可能性が付きまとうものだ。男女の友情は成立しないと言われる一番の理由は恐らくそこだろう。

また、奇跡的に恋愛感情が芽生えないまま友情が成立しても、周りがそれを許さないケースもある。多部未華子演じる潮ゆくえが、まさにいい例だ。


彼女には学生時代から1人だけ気さくになんでも話せる男友達がおり、たびたび2人で会っていたのだが、それを彼の婚約者は“良し”としなかった。ある日突然、彼から「もう会えない」と告げられ、2人の友情関係は終わりを迎えてしまう。

一見かなり理不尽に見える展開ではあるものの、異性の友達に結婚相手や恋人ができた途端、疎遠になってしまうのは、ある種「男女の友情あるある」であり、現実でも十分起こりうるシチュエーションだ。

逆に交際相手が異性の友人と2人で飲みに行ったり、2人で旅行に行ったりすることを許せないという人も多いはず。むしろ多数派の意見といってもいいかもしれない。

そしてそうした世間の目線があるかぎり、男女の友情はどちらかにパートナーができると多少なりとも関係が変わってしまうのが実情だろう。


フィクションでもリアルでも色々と難しい“男女の友情”。果たして『いちばんすきな花』では、この問題とどのように向き合っていくのだろうか。欲を言えばせっかくなので、これまでのドラマではほとんど見られなかった「男女の友情は成立する」という結末にたどり着いてほしいところだが……。

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