コント王者を決める「キングオブコント」、審査員やSNSからも毎年聞かれる言葉は決まってこうだ。「レベルが高すぎる」。
大会の決まり文句のようになっているが、「キングオブコント2023」はたしかにレベルの高さを強く感じさせた。同時に、大会がこれまでにない方向に向かったことも見て取れた。

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方向性を決定づけたのは、トップバッターのカゲヤマだった。ネタは準決勝でも大きな話題を呼んでいた、後輩をかばった上司が謝罪の際に裸になっているというもの。文字で説明するにはあまりに馬鹿馬鹿しいが、だからこそ大きなインパクトを残し、いきなり469点という高得点を叩き出した。

カゲヤマが作った流れに上手く乗っかったのは2番手のニッポンの社長。
友人同士の喧嘩でケツは拳で分からそうとする中、辻が容赦なくナイフや銃で応戦するというネタは、ニッポンの社長らしい“一本槍”でありながら、そのインパクトの強さで大きな笑いをさらった。

この1組目、2組目が結果的に今回の賞レースの流れをある程度作ったことは間違いない。3番手の昨年ファイナリスト、や団は小道具である灰皿を使った巧みなネタを見せたものの、最終的にファイナルステージに残ることはできず、審査員の山内健司も「出番順で損をしている」と認めた。

大会全体に波及した雰囲気はその後の組にも影響を与えた。蛙亭やジグザグジギーにしても会場での笑いは十分に感じ取れたが、1、2番手のインパクトが強かったこともあり、点数は伸び悩んだ。逆に最終出番のラブレターズにしても、審査員の松本人志は「順番もかわいそうやった。
もっと最初の方やったら高かった」と話している。

1、2番手がファイナルステージに進むという大会初の展開となった中、「コントの怪物」となったのは9番手のサルゴリラだった。彼らは大会の流れに乗っかることも、逆に溺れることもなかった。

1本目のネタは、ボケの児玉智洋がややこしいマジックを見せるというもので、小さなボケを重ねていった(もちろん、「靴下人参」や「ペンチピーチ」のインパクトは十分だったが)。そして、2本目は同じくボケの児玉が野球部の監督として励ます際に「魚」というワードを頻繁に用いるというものだった。

なぜマジックがややこしいだけで面白いのか、「魚」という既存のワードを繰り返すだけで笑えるのか。
独自のお笑いセンスを磨き、大会全体の空気とは一線を画しながら、大きな笑いを生み出したのが最年長の彼らなのだから、やはりコントというのは奥深い。

ファーストステージ、ファイナルステージの合計964点は大会史上最高、史上最年長優勝と2つの記録を打ち立てた新チャンピオン。今回の彼らが見せたような2本のネタが。今後コント界の新たな潮流を生み出すのだろうか。

いや、きっとそうはならない。いつだって彼らコント師は私たち視聴者を上回る発想を示してくれる。
だからこそ、「キングオブコント」は常に最高で、レベルが高すぎるのだろう。

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