この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。
おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、10月27日(金)より公開されている『愛にイナズマ』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】松岡茉優の演技にも注目、『愛にイナズマ』場面写真【5点】

〇ストーリー
どうしようもない家族は、最高の家族でした。長年の夢だった映画監督デビュー目前で、すべてを奪われた花子(松岡茉優)。イナズマが轟く中、反撃を誓った花子は、運命的に出会った恋人の正夫(窪田正孝)とともに、10年以上音信不通だった家族のもとを訪ねる。
妻に愛想を尽かされた父・治(佐藤浩市)、口だけがうまい長男・誠一(池松壮亮)、真面目ゆえにストレスを溜め込む次男・雄二(若葉竜也)。そんなダメダメな家族が抱える“ある秘密”が明らかになった時、花子の反撃の物語は思いもよらない方向に進んでいく…。

〇おすすめポイント
10月13日にも障害者施設襲撃を描いた『月』が公開されたばかりの石井裕也。様々な視点で現代社会の闇を切り取り、そのなかの光も描く、日本で今勢いのある映画監督のひとりだ。

コロナ過に制作された『茜色に焼かれる』(2021)では、シングルマザーの視点でコロナによる新たな社会格差を容赦なく描いていたが、今回はコロナ過から現在における人間関係の変化や出会い方の変化などがありながらも変わらない、だからなのかもしれない恋の訪れの変化や家族の絆をハイテンポでコミカルに描いた作品。

人間は型にはまったシナリオのなかで生きているわけではない。
何がきっかけになるかわからないし、全く関係ない位置で起きている出来事が今や未来を変えてしまうかもしれない。奇跡なのか、運命なのか、必然なのか、偶然なのか……。理由などなくても人は繋がっていく。

そんな新たな出会いや人間関係が生まれるなど誰にも想像できないわけだが、そんな言語化できない、イナズマのように突然訪れる”恋や出会いの現象”を見事に切り取っている。

また一方で、松岡茉優のオフビートでありながらも、心の奥底に強い野心をもつ主人公・花子を体現し、社会に蔓延る”当たり前”や”そういうもの”、”仕方ない”といった概念に立ち向かっていくのと同時に、窪田正孝演じる正夫も、そんな花子に感化され、内なるものを燃やしていく。

コロナによって社会概念など脆くも崩壊したのだから、そもそもあって無いようなもの。
そんなものは自分の生き方次第でいくらでも突き崩せるはず。

社会に流されて見失ってしまった内なる闘士を蘇らせるような作品ともいえるだろう。

(C)2023「愛にイナズマ」製作委員会

〇作品情報
監督・脚本:石井裕也
出演:松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、仲野太賀、趣里、高良健吾
MEGUMI三浦貴大、芹澤興人、笠原秀幸鶴見辰吾北村有起哉中野英雄、益岡 徹、佐藤浩市ほか
主題歌:「ココロのままに」エレファントカシマシ (ポニーキャニオン) 
製作委員会:日本テレビ放送網、HJホールディングス、東京テアトル、RIKIプロジェクト
配給:東京テアトル
2023年/日本/2時間20分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
公式サイト:ainiinazuma.jp
10月27日(金)全国ロードショー!

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