木曜ドラマ『いちばんすきな花』が、今回の10月クールに放送されているドラマの中で大きな話題を呼んでいる。

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放送前からカルテット主演として注目されていた作品は、放送開始直後からSNSを中心に大きな盛り上がりを見せ、メディアの間でも記事やコラムとしてこぞって取り上げている。


だが、この作品の面白さを説明しようとすると意外に難しい。

公式サイトやCMでは「男女の友情は成立しますか?」というキャッチコピーを採用していたが、ここまでを見る限りそれが主題に置かれたドラマではない。男女4人が主役であるため、当然恋愛の話も絡んでくるが、それも本題ではないだろう。

では、このドラマはどう見ればよいのだろうか。──ずばり「コメディ」だろう。

昨年、社会現象となった『silent』のスタッフ陣が制作し、1~2話ではその流れを踏襲するように切なく、儚いBGMが随所に使われていた。
そのため、本来笑いを誘うようなシーンでさえ、我々視聴者を一瞬身構えさせるような効果を生んでいた。

そうした考えさせることでさえ、脚本を務める生方美久の狙いなのではと思わせるが、3話では一気にコメディ方面に寄り、このドラマをどう見るべきかというガイドラインを示してくれた印象を受けた。

第3話の中心に置かれたのが春木椿(松下洸平)と元婚約者の小岩井純恋(臼田あさ美)。一度は別れたはずの2人が再会し、春木家で話し合うというのは一見シリアスにも感じるが、実際は異なる。

春木家には、すでに友人と呼べるようになった佐藤紅葉(神尾楓珠)、深雪夜々(今田美桜)、潮ゆくえ(多部未華子)が揃い、再会する前から純恋への私見を思い思いに語る。それに対して、春木がツッコミ役を務めるシーンはわかりやすくテンポのいいコントとなっている。
その後、3人が初めて会った純恋に対して合掌するなど、これまで苦しいくらいにリアルだったこのドラマにおいて、あり得ない行動をすることでコメディ感は増した印象だ。

そうした4人のシーンはもちろん、春木がこれまでしてきた行動も奇妙で、傍から見れば笑えるものだ。第1話の美容室で夜々と初めて会った際には、「(カットクロスが)苦しくないですか?」に対し、「苦しくないです。…苦しかったんですよね」はややこしい人間として見て笑っていい場面のようにも感じる。また、第3話でタバコを吸わない春木が喫煙所で初対面のおじさんと喋るというのも客観的に見れば奇怪な行動である。

いずれも初対面が楽で話しやすいという春木のコンプレックスゆえの言動。
背景を考えると決してふざけて行っていることではないのだが、第3話全体の印象と相まって制作側から「笑ってください」というお墨付きをもらったと考えてもいいのではないだろうか。

もっとも、そうしたコメディテイストの中で、4人がコンプレックスと向き合っていくことを丁寧に描いていることも忘れてはいけない。第3話で春木がその壁をひとつ乗り越え、本来のおしゃべりな姿を見せている一方で、ラストシーンでは夜々とその母親(斉藤由貴)が登場した。

夜々にとっては大きな壁であり、コンプレックスを植え付けてきた存在とみられる母親。第3話のようにコメディタッチで描かれるかはまだ定かではないが、深刻に捉えすぎず、程よくツッコミながら見るくらいが、このドラマを視聴する上でのコツとなるかもしれない。

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