女子プロレスラーとして高い評価を受けている、アップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩。武藤敬司引退試合に参戦した際は、「この選手、現役のアイドルなの?」とSNSが湧いた。
もともと彼女はプロレスについては無知、アイドルになりたくてアップアップガールズ(プロレス)オーディションを受けたという。この先、どうやってプロレスとアイドルの二刀流を大成させていくのか…元『週刊プロレス』の記者、小島和宏が直撃した。

【写真】プロレスラーとして恵まれた体躯とパワーを誇る渡辺未詩【5点】

11月8日、アップアップガールズ(プロレス)が所属するYU-Mエンターテインメントの山田昌治社長が「メンバーとファンの皆さんへお詫びとお知らせ」というゾワゾワするタイトルの動画を緊急配信した。

その内容とはアップアップガールズ(プロレス)の単独ライブを12月23日に横浜アリーナで開催すべく準備してきたが、じつは予約できていたのは横浜アリーナではなく、横浜アリーナに隣接する(というか、ほとんど横浜アリーナの中にある)新横浜NEWSIDEBEACH!!というライブハウスだった、というお詫び。

このあたりの虚実入り混じった感じがアップアップガールズ(プロレス)らしさ全開なのだが、ライブハウスにリングを設置することはムリなので、単独ライブは純然たる音楽イベントとして開催されることも自動的に決定した。

「やっと社長や会社も、私たちがアイドルだっていうことを思い出してくれたみたいですね」と渡辺未詩は笑った。


渡辺未詩はグループの中心的存在。すでにプロレスラーとしては高い評価を受けており、2月に東京ドームで開催された武藤敬司引退試合に参戦すると「この選手、現役のアイドルなの?」「アイドルがこんなすごいジャイアントスイングをしているのか!」とわずか1試合で大きな話題を呼び、Xのトレンドには「東京ドーム」「アイドル」「ジャイアントスイング」という不思議な文字列が並んだ。世間に見つかった瞬間だった。

プロレスラーとして恵まれた体躯とパワーを誇る渡辺未詩だが、自分がそんなポテンシャルを秘めているとはまったく気づいていなかった。なぜならばプロレスを見たこともなく、高校生のころからアイドルになることしか考えていなかったから。この隠れた才能を発掘できただけでも、アップアップガールズ(プロレス)をスタートさせた意義はあったと思うのだが、やっぱりメンバーとしてはプロレスラーとしてだけでなく、アイドルとしても成功したい。


「今年の6月に単独ライブを開催できたんですけど、それは初の単独ライブから4年半ぶりになってしまったので、手放しでは喜べませんでしたね。正直、これが最後になってしまう可能性もあるのかな、と思ってしまったので……」

4年半も期間が空いてしまったのは、もう言うまでもなくコロナ禍の影響である。アイドルとしてはライブハウスでの対バンやイベントが主戦場となっていたので、彼女たちはパフォーマンスをする場を失ってしまった。その一方でプロレスは無観客ながら、いち早く興行を再開。結果、メンバーはプロレスラーとして急成長し、アイドル部門はちょっと出遅れた形になってしまっていた。

とはいえ、ふたつのジャンルで同時にブレイクするのは難しい。
むしろ、プロレスラーして東京ドームまで到達し、知名度がアップした今こそ、アイドルとしても注目してもらえる大チャンスだと思うのだが……そこにはひとつひっかかる問題がある。

「年齢ですよね。17歳でアイドルになったときにも『ギリギリかな』と思ったのに、24歳になって、やっと本腰を入れるってどうなんだろうって(苦笑)。もちろん、私はプロレスもアイドルも30歳ぐらいまでは、いや30歳を超えてもやりたいと思っていますけど、お客さんがどう思うかはまた別問題じゃないですか?

ただ、コロナを言い訳にしちゃダメだなって思ってはいます。いまがアップアップガールズ(プロレス)にとって、アイドルとしての勝負どころだと思います」

最後になるかもしれない、という想いで臨んだ6月の単独ライブは大好評を得て、渡辺未詩自身も「多幸感しかなかった」と振り返る。それだけに今回の単独ライブはハードルも上がっているのだが、プロレス要素がまったくない「音楽イベント」という、もうひとつのハードルまで加わってしまった。
大チャンスにして、大ピンチなのである。

「アイドルとして本来、踏まなくちゃいけないステップを全部、すっ飛ばして、プロレスラーとして東京ドームにリングに立ってしまったんですけど、2023年の今、アイドルが東京ドームに立つ難しさもよくわかっているので、あの貴重な経験はアイドルとしても活かしていきたいですね。クリスマスは他のアイドルさんもたくさんコンサートをやっているので、みなさん、いろいろ大変だとは思うんですけど、私たちが新しい形のライブにチャレンジするところをぜひ見ていただきたいですね」

現在、わかっているのは「新衣装を披露」と「新曲を2曲発表予定」ということだけ。6月の単独ライブでも新曲を披露しているので、この1年でイッキに持ち歌が増えた。それだけセットリストにも幅ができるし、それぞれの楽曲の見せ方も変わってくる。 

そして、今年になって4人目のメンバーとして鈴木志乃がデビュー。
さらに5人目のメンバー・ウタも加入。ウタはまだプロレスラーとしてはデビューできていないが、アイドルとしては始動。5人体制での「新しいアップアップガールズ(プロレス)」をアピールする場が、この単独ライブということになる。

当初は3人での活動が長くなっていたため、新メンバーが加わることに複雑な心境だった、という渡辺未詩だが、いまではそんな感情はまるっきり消えた。自分たちは1期生として、この先、どうなるのかまったくわからない状況で試行錯誤を繰り返してきたけれど、新しく入ってくるメンバーはアップアップガールズ(プロレス)とはなんなのか、ということを理解した上で志望してくれている。

そのありがたみを胸に渡辺未詩は12・23新横浜のステージに臨む……と綺麗に締めたいところだったが、アメリカでの試合のために渡辺未詩と乃蒼ヒカリが渡米するなど、12月はハードなスケジュールに。
つまり、単独ライブのスケジュールの時間がそんなにとれないまま当日を迎えることになりそうなのだ。メンバーが増えたことで既存曲のフォーメーションが変わり、ゼロからレッスンしなければならない新曲もある。いったいどうなってしまうのか? 単独ライブの行方は幕が開くまで、わからない!

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