2024年の幕開けとなる1月4日の後楽園ホール、東京女子プロレスで活躍するSKE48荒井優希が、〝規格外の怪物〟マックス・ジ・インペイラーが持つインターナショナル・プリンセス王座へと挑戦する。2023年はプロレスラーとして悔しい1年だったという荒井。
2024年1月25日には東京女子プロレスの選手4人の成長物語を掘り下げた書籍『プロレスとアイドル』(太田出版・刊)も発売される。アイドルとプロレスの二刀流を突き進む荒井は、レスラーとして次のステップに一歩踏み出すため秘策を練っているという。(前後編の前編)

【写真】アイドルとプロレスの二刀流で活躍する荒井優希【9点】

「こんな年末になって、なにを言っているんだって怒られちゃいそうですけど、いま気づいたんですよ。2023年の私ってプロレスラーとして、なんの結果も出せていないですよね?」

今年最後になるであろう取材で荒井優希はいきなりそう切り出した。

たしかに「結果」という意味では、その認識で間違っていないのかもしれない。

新年早々、タッグ王座から陥落すると、続くタッグトーナメントでも敗退。
パートナーの赤井沙希が11月で引退したこともあって、それっきりタッグのタイトル戦線に浮上することはなかった。

その分、シングルマッチでたくさんチャンスが巡ってきた。

3月の有明コロシアムではアジャコングと一騎打ち。夏のシングル・トーナメントでは準決勝まで生き残り、10月の後楽園ホールでは引退を控えた赤井沙希と最初で最後のシングル対決。1年を通じて、大きな闘いが続いた。

荒井優希が振り返ったように結果は残せなかった。
すべての試合で負けているからだ。しかし、その負け方が重要で「惨敗」でも「完敗」でもなく、どの試合も「惜敗」だった。

しかも、エプロンからの強烈なキックでアジャが場外でダウン。カウント19まで生還できず、あわやリングアウト勝ちか?と場内を沸かせた。山下実優とのトーナメント準決勝では一歩も引かぬ大善戦。結局、勝ち残った山下が優勝しているので、2024年は決勝進出もけっして夢ではない、という実力を見せつけた。
赤井沙希とのラストマッチでもお互いにガンガン顔面を蹴り合い、ほとばしる感情を爆発させた。

ビッグマッチでは勝てなかったし、年末の段階でチャンピオンベルトもトロフィーも手にしていない。ただ、どの試合も「これ、荒井優希が勝っちゃうんじゃないか?」と会場をざわつかせる好勝負になった、という「実績」はしっかりと残った。

いわゆるプロレスラーらしいビッグマウスを荒井優希は叩かない。 

リング上でのマイクアピールも、バックステージでのコメントも極めて上品。もっとアピールすればいいのに、と歯がゆく思ったりすることも多々あるのだが、このあたりはアイドル育ちの奥ゆかしさなのかもしれない。


その歯がゆさをなんとかしたい。それをしようとしたら、何万字も必要だ……と考えた末、ぼくは東京女子プロレスに関する本を書いた。2024年1月25日に発売予定の『プロレスとアイドル』(太田出版・刊)。そのタイトル通り、現役アイドルにしてプロレスラーの荒井優希、アイドルとプロレスの二刀流を実践中の渡辺未詩、そして元アイドルで現プロレスラーの伊藤麻希、瑞希。

この4人にスポットを当てて「どうやってアイドルになったのか?」を起点に「なぜプロレスラーになろうと思ったのか?」を経て、これから進む道までを綴ったインタビュー&ドキュメント。まったくバラバラの道を歩んできた4人のアイドルが、なぜかリングで交錯し、気がついたら4人揃って東京ドームに立っていた、というウソみたいなホントの物語。


その本の中に荒井優希が結果を残せなかったと嘆く2023年の「本当の実績」の舞台裏をがっつり掘り下げて書いているので、ぜひご一読いただきたい。彼女がプロレスラーとして、いかに進化し、成長してきたかがおわかりいただけるかと思う。

2024年の幕開けとなる1月4日の後楽園ホールでは、荒井優希に大きなチャンスが巡ってくる。

マックス・ジ・インペイラーが保持するインターナショナル・プリンセス王座への挑戦が決定したのだ。同王座への挑戦は2022年3月19日に両国国技館での伊藤麻希戦以来、1年10カ月ぶり。もし勝利できれば、プロレスラーになってから初のシングル王座戴冠ということになる。
だが、王座挑戦を知った荒井優希は……。

「えーっ、怖い!って思っちゃいました(苦笑)。タッグでも負けているのに、私ひとりでどうしようって」

マックス・ジ・インペイラーは178㎝、109㎏の超巨漢レスラー。しかも全身にタトゥーが施されているモンスター系だ。純然たるアイドルだったら、もう共演NGにしてもいいぐらいの危険人物なのである。たしかに関わりたくないかもしれないし「だって普通に道ですれ違ったら、絶対に怖いもん」と荒井優希は震えるが、プロレスラーとしては避けては通れない存在だ。

なぜならば、2023年1月4日の後楽園ホールでマックス・ジ・インペイラーとタッグで激突し、圧殺されている。結果、赤井沙希と保持していたタッグ王座からも陥落。ちょっとしたトラウマを抱えている相手でもあるのだが、この雪辱を果たさないことにはプロレスラーとして次のステップに踏み出すことができない。

だから、怖いけれども立ち向かう。

「年末になって、結果が残せていない事実に気づいてから、もう悔しくて悔しくて……1年目、2年目と比べると微妙な年になっちゃったかなって。だから2024年はしっかり結果を出していきたい。マックスのタイトルマッチを観て、いろいろ研究したんです。いちばん大事なのは、逃げ出さないこと! 怖いけど立ち向かっていかなくちゃいけない。そして、こうすれば勝てる!という方法もじつはもう見つけてあるんです」

ちょうど1年ぶりの雪辱戦となるが、この1年のうちに荒井優希はすでに超巨漢を撃退する必勝法を編み出していた? 現役アイドルが新春マットで披露する、マル秘戦略とは?

【後編はこちら】SKE48荒井優希が“怪物”マックス・ジ・インペイラーと対戦「ベルトを取って赤井沙希さんに報告したい」